管理基礎講座

 令和2年6月24日に公布された改正マンション適正化法で規定された「管理計画認定制度」が、

令和4年4月にスタートする予定です。

 全国のマンションストック数は665.5万戸(令和元年末時点)で、国民の約1割が居住していると推測されます。うち、築40年超のマンションは91万8千戸(約14%)あり、今後、老朽化や管理組合の担い手不足が顕著な高経年マンションが急増する見込みです。

 「管理計画認定制度」はマンションの老朽化に伴う問題を予防・解決することを目的として策定されたもので、3つのポイントがあります。

  ① 国によるガイドラインの策定

   適切な修繕計画が立てられているか、計画に基づいて修繕積立金が積み立てられているか、管理組合

   の活動がしっかりと行われているかといった点について、国土交通省がこれを定め、市や都道府県は

   この基本方針に基づき、マンション管理の適正化を推進する計画を策定します。

 ② 自治体による管理計画認定制度

   市や都道府県などが管理計画認定制度の実施により認定基準を策定し、適正な管理計画を有している

   マンションを認定します。

 ③ 自治体による指導・助言・勧告等

   管理適正化のために、必要に応じて、市や都道府県などが、管理組合に対して指導・助言し、

   知事等が必要に応じて勧告を行います。

 

| 2021年2月01日 | カテゴリー 管理基礎講座 

区分所有建物

 一棟の建物の中に複数の所有権が存在するような建物を区分所有建物という。壁・床、天井等によって他の部分と遮断されている「構造上の独立性」及び、隣室を通行しなくても出入りできるといった「利用上の独立性」のある建物の部分を所有する権利を区分所有権といい、区分所有建物は、専有部分と共用部分で構成されている。

①専有部分

  専有部分とは、区分所有権の目的となる建物の部分をいう。分譲マンションでいえば、購入した

 住戸に相当する(バルコニーは含まない)。

②共用部分

  共用部分とは、専有部分以外の建物の部分を指し、さらに法定共用部分と規約共用部分に分けられる。

  法定共用部分とは、廊下や階段、電気・ガス・水道等で構造上当然に共用部分となるべき部分をいう。

  規約共用部分とは、本来専有部分となりうる集会室や管理人室など、区分所有者の定めた規約によって

 共用部分とされた部分という。

  共用部分の持分は、原則として、専有部分の床面積の割合による。

  共用部分の共用持分は、原則として、専有部分と切り離して処分することができない。共用部分の負担

 等については、各共有者は規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分に関する費用を負担

 する必要がある。例えば、ゴミの収集処理費や、エレベーターの点検、管理人の窓口業務などの管理費や

 外壁の補修等の修繕費が該当する。

③敷地利用権

  敷地利用権とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利のことをいい、原則として、専有

 部分と分離して処分することはできない。

集会の決議

 集会は、区分所有者全員により組織される管理組合の最高意思決定機関である。建物等の管理については、原則として、この集会の決議により決定される。管理者は、少なくとも毎年1回、集会を招集しなければならない。

 集会の議事は、原則として「区分所有者及び議決権」の各過半数で決定するが、建て替えや規約の設定・変更など、重大なものについては、特別な規定がある。なお、区分所有者とは、区分所有者の頭数のことをいい、議決権とは決議に参加する権利で、原則として、専有部分の床面積の割合による。

 規約や集会の決議は、区分所有者だけでなく、区分所有者の包括承継人(相続人等)、特定承継人(区分所有権の購入者等)、建物等の使用方法については、占有者にもその効力が及ぶ。

| 2019年2月21日 | カテゴリー 管理基礎講座 

「区分所有法」を改めて振り返る

民法と区分所有法

 区分所有法は、分譲タイプのビルやマンション専用の特別法として1962年4月1日に制定された(1963年4月1日施行)。

 特別法である区分所有法は、一般法である民法より優先される。

 また、区分所有法の規定にない事項については民法が適用される。

 民法には、1つのものには1つの権利が認められるという一物一権主義の原則がある。

 具体的には、壁はAさん、屋根はBさんのもの、とすることはできないとされている。

 しかし区分所有法の下では、1つの建物であっても、例えば、建物の一部である203号室はAさんのもので、502号室はBさんのものと決めることができる。

区分所有法の改正の変遷

 区分所有法の施行により、これまで民法で十分に定められていなかった、一棟の建物が構造上区分されている場合の各区分の所有権についての規定が明確になった。

 その後、大きな改正が行われたのは、1983年と2002年の2回である。

 1983年は、主にマンションの管理・運営に関する制度の強化が行われ、また、区分所有者はその有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離処分することができなくなったなどの改正が行われた。

 2002年の改正では、修繕・建替え・除去など行政の統制と関与に係る規定が増加した。

分譲マンションの増加

 区分所有法の制定により、マンションの法的位置付け等が明確になり、住宅ローンを利用した購入も可能となり、マンションブームが起こる。

 その後、マンションのストック総数は増加していき、国土交通省「2017年度 住宅経済関連データ」のうち、「マンションの供給戸数(施工ベース)」をみると、2017年末時点のマンションのストック総数は約644.1万戸、マンションの居住人口は約1,533万人と推計され、国民の約1割に相当するまでになっている。

 また、1997年に建築基準法が改正され、廊下やエレベーターホールなどの共用部分が容積率の計算から除外されることとなった。

 これを「共用廊下等の部分に係る容積率の不算入措置」という。

 分譲マンションが増加した1つの要因といえる。

| 2019年2月19日 | カテゴリー 管理基礎講座 

改訂の内容

1 改正個人情報保護法に対応した見直し

  改正個人情報保護法により、平成29年5月から個人情報を取り扱う全ての事業者が個人情報保護法の

 適用対象となることに対応した変更を行いました。

2 反社会的勢力の排除条項に追加

  標準管理規約の改正(平成28年3月)で暴力団等の排除規定が新たに設けられたこと等を踏まえ、

 管理業者自身が反社会的勢力に該当しないことを確約し、その確約に反して、管理業者が反社会的勢力

 であること等が判明した場合には、管理組合は管理委託契約を解除することができる旨の規定を追加し

 ました。

3 理事会及び総会支援業務の記載の明確化

  理事会及び総会支援業務のうちの一部について、その支援業務の内容に関してトラブルを防止するため、

 記載を明確化するとともに具体の協力方法について管理組合及び管理業者が協議して決定するように修正

 しました。

4 その他、管理業務の実態等を踏まえた主な改訂項目

  ・管理対象部分の追加

  ・コミュニティ活動業務の支援内容の修正

  ・専有部分の設備の修繕等に対応する場合の考え方

  ・高齢者等への対応業務の考え方

| 2018年6月05日 | カテゴリー 管理基礎講座 

これまでの改訂の経緯

 「マンション標準管理委託契約書」は、平成13年にマンション管理適正化法が施行され、消費者保護等の観点から管理委託契約に関する様々な規定が設けられたこと等を踏まえ、平成15年4月9日に従前の「中高層共同住宅標準管理委託契約書」を改訂する形で、マンションの管理委託契約に係る標準的な管理委託契約の指針として作成されました。

 その後、マンション管理適正化法施行規則の一部を改正する省令が平成21年5月1日に公布され、出納業務に係る財産の分別管理の方法が変更されたこと、及び管理委託契約に関するトラブル実態等を踏まえた全般的な改訂を平成21年10月2日に実施しました。

 また、「マンション標準管理規約」が改正され、マンションの管理状況等に関する情報の開示に係る規定が整備されたことと整合をとるための改訂を平成28年7月29日に行いましたが、当該改訂はマンション標準管理委託契約書第14条に限定した改訂であったことから、今般、平成21年以来の全般的な見直しを行ったものです。

| 2018年6月03日 | カテゴリー 管理基礎講座 

13 標準管理規約の改定に伴った管理規約の改定における留意点

(1)改正標準管理規約の内容を導入するには

   今回の標準管理規約の改正では、最近の管理組合が抱える課題に対処するための様々な措置が講じられ

  ました。しかし、標準管理規約は法令ではなく、各管理組合が管理規約を制定、改正する際の参考として

  示されているものです。したがって、今回の改正内容を実際に管理組合で導入するためには、各自の管理

  規約を改正しなければなりません。

(2)改正手続き

   管理規約の改正は、総会の特別多数決議(区分所有者および議決権数のそれぞれ4分の3以上の賛成)

  によります。また、建物の維持管理や管理組合運営の基本となる規約を改正するわけですから、改正内容

  は全ての区分所有者に分かるように、議案書の作成に配慮したり、必要に応じて説明会を改正することな

  ども検討すべきでしょう。規約の改正が有効かつ手続き的に瑕疵がないように、マンション管理士等の助

  言等を求めながら慎重に手続きを進めることが大切です。

   また、総会決議によって規約の改正がなされれば、その内容を全区分所有者に周知するとともに、改正

  後の管理規約の全文を各区分所有者に配布しておくことも大切です。

                           (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年3月15日 | カテゴリー 管理基礎講座 

11 駐車場の使用方法等

   略

12 書類の保管・情報の提供

(1)理事長が保管すべき書類の追加

   今回の改正では、「長期修繕計画書」、「設計図書」および「修繕等の履歴情報」が追加されたところ

  です(64条2項)。

(2)書面の交付または電磁的方法による情報提供

   今回の改正では、「書面の交付又は電磁的方法による情報提供」が新たに規定されました。これは、組

  合員または利害関係者から、提供を求める情報と情報提供の理由を付した請求書面等を提出等してもら

  い、理事長がその請求内容に基づく情報を記載した書面等を、請求者に交付するというものです。そして

  この場合の費用は、交付の相手方に負担させることができるとしています(64条3項)。この方法によ

  り提供することが想定される情報には、大規模修繕工事の実施状況や今後の予定、ペットの飼育制限等が

  考えられますが、その範囲については、個々のマンションにおいて、交付の相手方に求める費用等とあわ

  せ、細則で定めておくことが望ましいとされているところです(コメント64条関係⑤)。

                           (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年3月13日 | カテゴリー 管理基礎講座 

10 専有部分への立入り

(1)改正の概要

   今回の改正では、「理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分

  等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は

  専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる」との規定が追加されました

  (23条4項)。

(2)実際の留意点

   ただし、この立入権が認められる具体例として「災害時等における共用部分に係る緊急的な工事に伴い

  必要な場合」や、「専有部分における大規模な水漏れ等、そのまま放置すれば、他の専有部分や共用部分

  に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがある場合に限られる」とし、制限的に解釈すべ

  きことを注意喚起しています(コメント23条関係①)。

   また、このような規定が設けられたからといって、区分所有者が立入りを断固拒否した場合に理事長等

  が部屋の鍵をこわして強制的に立ち入ること等が認められたわけではありません。この規定は、区分所有

  者と連絡が取れずに立入りの拒否につき確認が取れない場合等であっても、理事長等の判断で合鍵等を手

  配して立ち入ることができ、後日その点につき違法性は問われない、という趣旨であると理解すべきでし

  ょう。

                           (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年3月11日 | カテゴリー 管理基礎講座 

9 修繕

(1)大規模修繕等にかかる情報の閲覧

   今回の改正では、理事長は、組合員または利害関係人の理由を付した書面または電磁的方法による閲覧

  請求があったときは、これらの書類を帳票類と同様に閲覧させなければならないとしました(64条2

  項)。

   また、書類の閲覧に代えて、「書面の交付または電磁的方法による情報提供」の方法を採ることも可能

  とされています。そして、これらの書面は、優良なマンションの管理が行われていることによる市場での

  評価の高まりや、そのような評価を通じて管理の適正化が促されることが想定されることから、「書面交

  付の対象者に住戸の購入予定者を含めて規定することも考えられる」としているところです(コメント6

  4条関係⑥)。この取扱いを採用すれば、これからマンションの住戸を購入する者も、大規模修繕工事の

  実施状況や予定、修繕積立金の積立て状況などの情報を得ることができることになります。

(2)専有部分の承前の際の手続き

   今回の改正では、専有部分の修繕等を3つに分け、それぞれの手続きを整理し、理事長の承認を要する

  工事の具体例などについても示しているところです。

   なお、理事長の承認が求められるケースでは、理事長の承認または不承認は、理事会の決議により決定

  しなければなりません(17条3項、54条1項5号)が、この場合の理事会決議は理事の過半数の承諾

  があるときは、書面または電磁的方法によることができるとされています(53条2項)。

   また、理事長が承認をしたからといって、その承認により、修繕等の工事の結果共用部分や他の専有部

  分に生じた事後的な影響について、当該工事を発注した区分所有者の責任や負担が免除されるわけではあ

  りません。そこで、修繕工事の後にその工事により共用部分や他の専有部分に影響が生じた場合は、当該

  工事を発注した区分所有者の責任と負担により必要な措置をとらなければならないことが、確認的に規定

  されました(17条6項、コメント同条関係⑪)。

(3)防犯、防音、断熱等のために実施する窓枠等共用部分の修繕工事

   今回の改正では、まずは計画修繕としての実施を検討するという大原則は踏まえつつも、それができな

  い場合は、細則を定めることを前提とすることなく、区分所有者は専有部分の修繕と同様の手続きで実施

  ができるものとし(22条3項)、かつ、その承認申請の対象範囲や承認の可否の際に検討すべき事項等

  の考え方が、「別添2」として示されました。

                           (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年3月09日 | カテゴリー 管理基礎講座 

8 暴力団排除の措置

(4)敷地内での暴力行為や威嚇行為の禁止

   敷地内での暴力行為や威嚇行為については、これまでも共同利益背反行為として対応することが可能で

  あると解されていましたが、今回の改正ではその点を明らかにすべく、コメントで、これらの行為は共同

  生活の秩序を乱す行為(67条1項)や共同利益背反行為(区分所有法6条)等に該当するものとして、

  「法的措置をはじめとする必要な措置を講じることが可能であると考えられる」と明記されました。

(5)役員や総会での代理人資格の制限

   管理組合の円滑な運営を保持するため、今回の改正では、暴力団員または暴力団員でなくなった日から

  5年を経過しない者は役員とはなれない旨が規定されました。また、総会での組合員の「代理人の欠格事

  由として暴力団員等を規約に定めておくことも考えられる」としています。

(6)警察当局等との連携

   なお、以上の必要な措置の実行に当たっては、「暴力団関係者かどうかの判断や、訴訟等の措置を遂行

  する上での理事長等の身の安全の確保等のため、警察当局や暴力追放運動推進センターとの連携が重要で

  あり、必要に応じて協力を要請することが望ましい」とされています。

                           (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年2月13日 | カテゴリー 管理基礎講座