コミュニティ

合意形成できる管理組合運営

1 理事会の運営を公正に行う

  理事長が反対意見を聞かない、ひとりで勝手に進める、反対意見が多数なのに強引に決める・・・そう

 いうトラブルが最近増えています。理事会で、意見が分かれたときに、どう理事会として取りまとめるか

 というルールの確認も必要です。理事長が強引に通そうとしたら、それを止める役も重要です。理事長が

 反対意見を無視して強引に決まったことにしようとしたら、「理事長、きちんと各理事の賛否を確認して

 ください。過半数の賛否がなければ決まったことにはなりませんよ。」というのは監事の仕事です。ある

 マンションでは、適時適切な監事の発言が、理事長の暴走を止める役割を果たしました。

2 理事会の情報を常にオープンにする

  理事会や修繕委員会への不信感は、情報を出さないことから生じていることが多いのです。今何を検討し

 ているかという情報は、常に分かりやすくスピード感を持って広報することが重要です。概要をA4の紙1

 枚程度にまとめためたもので構いません。これを実行している管理組合は、理事会に対する信頼が厚く、

 総会出席率も高いので、重要案件の合意形成が円滑にできています。

3 組合員が質問や意見を言いやすくする

  組合員には、総会以外でも質問や意見を言う機会が必要です。意見箱等に記名のある文章で意見をもら

 い。それに対して理事会が回答するという形が多いかと思います。しかし、文章となると書く方も構える

 ので、きつい書き方になりがちです。答える側も、どう回答するかを理事会の中で議論し、専門家に相談

 ・・・と言っていると、すぐ2~3ヶ月たってしまいます。その間、待っている方は不信感を募らせてし

 まいます。ですから、回答した途端、すぐ更なる質問状が出て、応酬がエスカレートするようなことに

 なってしまいます。

  合意形成がうまくできている管理組合の理事長に、住民は意見をどうやって理事会に伝えるのですか

 ・・・と聞くと、イベントの機会に言ってもらえばいいし、連絡をもらえばこちらから聞きに行きますよ

 ・・・と。できるだけ早く直接話を聞くことも心掛けているのが分かります。

(著)公益財団法人マンション管理センター 企画部参与 廣田 信子

| 2020年8月23日 | カテゴリー コミュニティ 

再生できるマンションに見られる特徴

 では、再生の合意形成ができ、長寿化の路線に乗っているマンションには、どんな特徴があるのでしょう。再生を実現しているマンションを対象とした調査から、下記のような傾向が見られました。

1 理事の意識が高い

  理事が固定的な管理組合だけでなく、1年任期の輪番制の管理組合でも、理事会にはほぼ全員の理事が

 出席していると回答しています。理事になったら責任を果たすのが、当たり前の風土があるのだと思いま

 す。

2 組合員の参加意識が高い

  ほぼ全部の管理組合が、総会の出席率(委任状等を含む。)が常に3/4以上と答えています。自分の

 意思表示が管理組合運営にとって大事だという意識が浸透しているのでしょう。

3 住民のコミュニティへの帰属意識が強い

  ほとんどの管理組合が、定期的に更新していてほぼ100%提出の居住者名簿があると答えています。

 これにはちょっとびっくりしました。管理組合が名簿を重要だと考えていても、住民の理解と協力がなけ

 れば情報が集まらず名簿は作成できません。住民に、自分がこのコミュニティの一員だという意識があっ

 てこそできることだと思います。

4 お互いを知る人間関係ができている

  全てのマンションが、コミュニティ形成の取組をしていました。担い手は管理組合と自治会とが半々

 です。イベントに力を入れている、サークル活動が活発、飲み会やお茶会が盛ん、共同作業で人が顔を

 合わせる機会を作っている等、その方法は様々でした。どんな形でも、顔を合わせてお互いを知る機会

 を作る努力をしていることが分かります。

5 長寿命化のビジョンを共有している

  マンションの将来について話し合い、長寿命化を目指すという将来ビジョンを持っているところが

 ほとんどでした。将来ビジョンを共有しているので、その実現に必要な再生工事は実施する。そのために、

 必要なら修繕積立金の値上げをするという合意形成ができるのでしょう。

6 理事会に対する信頼がある

  理事会は、常に、丁寧な合意形成を行っているのが分かります。工事の実施には全世帯の協力が必要な

 ことも多いのですが、1戸、1戸回って協力を依頼するなどの労力をいとわない様子が見てとれます。

 そういう理事会に対する信頼があるので、かなり難易度が高い合意形成もできるのだと思います。

7 マンションへの愛着が強い

  自分の暮らすマンションに対する愛着が強い人が多いことが分かります。そこから、このマンションを

 再生して長持ちさせようというモチベーションが生まれているのだと思います。

(著)公益財団法人 マンション管理センター 企画部参与 廣田 信子

| 2020年8月21日 | カテゴリー コミュニティ 

再生の合意形成の障害になるもの

 建替えや大規模な再生を検討したものの、あと1歩のところで合意形成の壁にぶつかって、実行ができなかったマンションで、何が障害になったのかを聞くと、次のようなことが見えてきます。

1 意思表示ができない高齢者の増加

  90歳以上になると、半数は認知症の症状があると言われます。総会議案書の内容を呼んで理解し、賛成

 /反対の意思表示をするのが難しくなります。長期入院、施設入居で、総会案内が届かない方も出てきま

 す。反対者はほとんどいないのに、委任状等を含めた賛成票が確保できなくて、決議できないという事態が

 生じます。

2 日常生活が変わることへの不安

  高齢になると、家の中が片付けられず家に人を入れたくないと思ったり、生活環境が変わることに大きな

 不安を感じるようになります。それが、室内に人が入るような改修に対する抵抗感を持つことや、建替えに

 対して強固に反対することにつながるのです。

3 お金の不安

  家計の状況は外からは見えませんが、年金生活になると修繕積立金の値上げによる月々の支出増はこたえ

 ます。介護や入院が必要になったらと考えると、預金があっても、それを使うのは不安だという思いも湧い

 てきます。建替えの合意形成が進まないマンションの理事長が、「今、1,000万円を負担して建替えを

 すれば、新築のマンションが手に入り、市場価格が2,000万円は上がるので、何で反対するのか」と

 憤っていました。でも、高齢者にとっては、今、現金が手元からなくなる不安の方が大きいのです。

4 将来への興味や意欲がなくなる

  一番難しいと思うのは、80代、90代になると、体が思い通りにならないこともあり、自分の日々の生

 活で精いっぱいで、マンションの将来に興味や意欲が無くなることです。これは、どのマンションでもある

 ことなので、子供世代を巻き込むなどの対策を考えながら合意形成を進めることが必要になってきます。

(著)公益財団法人 マンション管理センター 企画部参与 廣田 信子

| 2020年8月19日 | カテゴリー コミュニティ 

高経年マンションの将来の選択肢

 高経年マンションの将来の選択肢としては、下記の3つが考えられます。

  1 必要な再生工事を行い長寿命化を目指す

  2 近い将来、建替えを行うことで再生する

  3 修繕は必要最小限にとどめ、ある時期が来たら建物を解体し敷地を売却する

 この中で、2の「建替え」は、現状では、かなりの自己負担が必要となるため合意形成が容易でないことが知られるようになりました。3の「敷地売却」は、自らか考えにくい選択肢だと思います。したがって、多くのマンションは、まずは、1の「長寿命化」を目指すことになります。

 ところが、あるマンションは、長寿命化を目指すとしているものの、再生工事には消極的です。年金生活者の反対が強くて修繕積立金の値上げが難しいからです。理事長は、「自分も、値上げに反対する人たちも、後10年だ。再生のことは、次の世代の人に考えてもらうしかない」と言います。これでは問題の先送りです。

 また別のマンションでは、長寿命化を目指し再生工事に積極的に取り組んでいますが、耐震改修だけは、合意形成が難しいので行わないと決めていると言います。耐震性不足のままで、「長寿命化を目指す」と言えるのか不安です。

 高齢化が進んだマンションでは、自分の寿命を超えた未来のために今お金を支出することに対する合意形成の壁は高いのです。

合意形成はますます難しくなる

 マンションでは高経年になると高齢化が進む一方で、区分所有者が入れ替わり、幅広い世代が暮らすようになります。当然、考え方にも隔たりができます。

 あるマンションは、理事長が建替えに熱心でしたが、他の組合員の理解がなかなか得られず、建替えも再生工事も進まない状態でした。建替えを想定していた人は、専有部分のリフォームも控えています。その一方で、1,000万円近い費用をかけてリノベーションをした住戸に若い世帯が入居してくるようになりました。新しい住民は、建替えの検討など寝耳に水です。住戸内は新築同様で、35年の住宅ローンで買ったのです。当然、共用部分にも、もっとお金を掛けて、安全でオシャレなマンションにしてほしいと考えます。

 したがって、建替えにこだわる人、このままでいい人、積極的に再生して欲しい人が混在することになり、それぞれ譲りませんから合意形成に至りません。このままではどちらにも進めず、マンションの居住環境、市場価値を維持するのが難しくなるのではないかと危惧します。

 こうならないために、早めに、自分たちのマンションの将来の方向性を、自分たちで決めることが重要になります。

(著)公益財団法人マンション管理センター 企画部参与 廣田 信子

| 2020年8月17日 | カテゴリー コミュニティ 

主催側から中止のお知らせが届きました。

令和元年度 岡山市地域活動リーダー養成講座

「マンションを取り巻くコミュニティ」について

以下の日程等で、講演及びワークショップが開催されます。

・日時:3月3日(火)18:30~20:30

・場所:西川アイプラザ4階会議室

・定員:50名

・費用:無料

詳しいことは、次のサイトをご覧ください。

http://www.okayama-tbox.jp/kyoudou/pages/18992

| 2020年2月01日 | カテゴリー コミュニティ 

新年あけまして、おめでとうございます

皆様方にとって、良い年でありますとともに、

本年も岡管連をよろしくお願い申し上げます。

1昨年、昨年ともに災害の多い年になりました。

昨年の岡管連の秋のセミナーにおいて、自助、共助、公助に加えて

互助』の取り組みを提唱しました。

つまり、ご近所同士のつながりがお互いの助けになると。

昨年度に続き、本年度も以下の日程で、

語ろう会』を開催いたします。

マンション住民の方の語らいの場を設けますので、ご近所同士のお仲間をお誘いのうえ

奮ってご参加ください。

・日 時:2月1日(土)15時より 1時間30分程度

・場 所:きらめきプラザ2F 交流スペース

・参加費:無料

・案内チラシ:令和元年度マンション語ろう会のご案内(PDF)

なお、準備の都合上、予めご連絡ください。

| 2020年1月03日 | カテゴリー コミュニティ 

マンションの価値はコミュニティで決まる

 永年にわたるマンションの管理運営で養われた豊かなコミュニティを守り育てつつ、良好な住環境を持続的に維持・創生していくことが成熟社会でのあるべき姿です。そのためには、マンションの管理だけにとどまらず、地域のまちづくりにも積極的な役割を果たしていく取り組みも必要でしょう。

 重要無形民俗文化財である京都の祇園祭は千年あまりの伝統をもつ祭事として知られていますが、山鉾町のあるマンション(平成10年築)では、マンション住民も祇園祭を担うようになったことで新旧住民の交流が活発になり、地域と共にコミュニティを育んでいます。いまや、町内の主要行事の参加者はマンション住民が半数以上を占めるようになり、町内にとって欠かせないマンションとなりました。このような地域とのコミュニティを大切にした取り組みがマンション管理の活性化にも波及し、「暮らしの価値」を育む管理活動が活発に展開されています。

 成熟社会におけるマンションの管理とは、お金では換えられない価値を共有し、人々の絆でもって守り育てていく「暮らしのデザイン」と言えます。その持続的な取り組みが管理組合の活動を活発化させ、重要な案件を決定する際の円滑な合意形成にも大きく寄与することになります。

 マンションの資産価値はコミュニティで決まるといっても過言ではないでしょう。

(著)京都工芸繊維大学大学院建築学専攻 教授 鈴木 克彦

| 2017年9月11日 | カテゴリー コミュニティ 

マンションの価値とは?

 マンション管理の現場では資産価値を守ることが大事なミッションとなります。では、マンションの資産価値とは立地場所や建物の築年数、広さ、維持管理状況といった「もの」としての不動産価値で全てが決まってしまうのでしょうか。大切なマンションがこのような市場原理によって評価されてしまうならば、マンションの価値は経年とともに低下し、必然的に空き家化も進行していくでしょう。

 しかし、市場原理では評価できない大切な価値がマンションにはあります。とりわけ高経年のマンションでは、長年の居住で人々のつながりが醸成され、様々な人材が育っています。潜在するコミュニティ力を発掘し活用すれば、十分に豊かな住生活を過ごせるマンションに再生できる可能性があるのです。

 つまり、マンションの価値を維持していくためには、何よりもコミュニティ力を大切に醸成していき、不動産の価値が「もの」としてではなく、時間の蓄積で得られた「暮らしの価値」として評価されていくことが大切です。そのためには、日常のマンション管理において「場づくり」「人づくり」「仕組みづくり」に心がけて取り組んでいくことが必要となるでしょう。

 「場づくり」とは、コミュニティを醸成するマンションの施設を活用して共有意識や帰属意識を高めていくことです。小規模マンションでは集会室すらないところも多いのですが、最近では受水槽給水方式を直圧給水方式に変更したことで受水槽室が不要となり、これを集会室に転用している事例も見られます。

 「人づくり」とは、多様な人材を活用して寛容の精神を大切にしながらコミュニティ力を守り育てていくことです。

 そして「仕組みづくり」では、「場」と「人」とが出会うドラマをつくりだし、生活文化を継承していくことです。

 これらが相互に作用していくことで「暮らしの価値」が時間と共に増大し、お金では換えられない大切な価値を共有することができるのです。

(著)京都工芸繊維大学大学院建築学専攻 教授 鈴木 克彦

| 2017年9月09日 | カテゴリー コミュニティ 

はじめに

 マンションの資産価値の低下の本質的な原因は、区分所有者がマンション管理に無関心であることが大きいのですが、居住者の高齢化が影響して管理組合が機能しなくなっている場合もあります。高齢化社会は、マンションの管理問題にも影を落としています。

 少子高齢化が進行し、居住者の連帯意識の希薄化が指摘される状況の中で、大切な資産であるマンションが管理不全に陥らないようにするには何が大切となるのでしょうか。

コミュニティで左右されるマンション管理

 マンション管理の業務内容には、建物の維持管理だけでなく、管理組合の運営管理や居住者の生活管理など多面的な側面があります。建物の経年劣化や居住者の高齢化に伴い、役員のなり手不足、居室の空室化や賃貸化など管理運営に支障となる課題も山積みです。住宅宿泊事業法が成立したことで、いわゆる「民泊」に対しての対応も新たな課題となってきています。実は、こうしたマンション管理には運営主体となるコミュニティの形成状況が大きく影響してきます。コミュニティ形成が十分でないと管理会社まかせになってしまい、いざ深刻な問題に対面した時に迅速な対応ができない恐れもあります。

 そのため、昨年3月には国土交通省から新たな住生活基本計画(全国計画)が公表され、「住宅地の魅力の維持・向上」の目標を達成するため基本的な政策の1つとして「マンションのコミュニティ活動が居住者、管理組合、周辺住民、民間事業者、地方公共団体等の適切な役割分担の下に積極的に行われるよう推進していく」ことが明記されました。

(著)京都工芸繊維大学大学院建築学専攻 教授 鈴木 克彦

岡管連から

 岡管連では、『マンションの二つの老い』の大きな要因として、時の経過とともに以下の『五大化現象』が現れてくるものと考えています。

 一 建物の劣化

 二 設備の老朽化(陳腐化)

 三 居住者の高齢化

 四 居室の賃貸化(空室化)

 五 人間関係の希薄化

| 2017年9月07日 | カテゴリー コミュニティ 

高度成長期開発のひずみ

2030年 高齢化率35%

 県内でも指折りの高級住宅地として知られる奈良市学園南。戦後間もない1950年代から開発が進み、ベッドタウンとして発展を続けてきた。しかし、同じような時期に同世代の人が数多く移り住んだことで今、ひずみも生まれている。

 「親元から独立した子供が帰ってこないという話はよく耳にする」。地区自治連合会の会長自身も3人の子供は大阪などの他地域で暮らし、現在は妻と二人だ。

 地区では近年は、あるじを失った住宅も目立つ。8軒で構成する一つの区画の半分が空き家という場所もある。周辺を歩くと、閑散とし、既に閉鎖された学生寮が寂しさを感じさせる。小学校の子を持つ主婦は「空き家が増えると治安が心配」と漏らす。

 市総合政策課は「山間地だけでなく、高度成長期に開発された『ニュータウン』で高齢化の波が押し寄せている」と危機感を募らせる。

 住む人が減れば現在、商店や病院、学校などがある地区でも撤退や統廃合が進み、利便性の低下が更なる「人離れ」を招くと容易に予想される。高齢化などの問題に詳しい松谷明彦・政策研究大学院大名誉教授は「人口減で税収も減り、社会を維持する基盤が揺らぐ」と指摘する。

岡管連から

 マンションの場合も他人ごとではなく、新築時に不特定多数の住民が同じ時期にマンションで生活していくことにある。

 区分所有者に万が一のことが起こった場合、その方の所在、あるいはその相続人等が分からず、管理費等の滞納が起こることがこれまでに指摘されている。

 また、空き室問題も起こり、マンションの維持管理面だけではなく、治安面でも管理組合の対応が求められる。

 さらに、住民の高齢化による孤独死・孤立死の防止、認知症対策などの点も配慮していく必要がある。

| 2017年7月13日 | カテゴリー コミュニティ