災害等への備え

(下)ハードもソフトも 対策気に進んだ交流

 積極的に防災対策を進めるマンションが岡山市内にあると記者が知ったのは、同市の大元公民館が主催した防災ワークショップがきっかけだった。

 改めて管理組合の前理事長を訪ね、話を聞いた。マンションの場合、ハード面の整備で課題となる住民の合意形成をどう進めたのか。管理組合の理事会で話し合い、次の大規模修繕に備えた積立金の余力を確認しながら計画し、年1回の総会で合意を得てきたという。

 ハード面に加え、ソフト面の対策も欠かせない。災害発生時にマンション内に対策本部を立ち上げて必要な意思決定を行ったり、負傷者を助けに各部屋に立ち入ったりするには、マンションの管理規約の改定が要る。

 昨春、理事会の下部組織として災害対策委員会を発足。委員のなり手を募ったところ、東日本大震災を東京で経験した人など防災に関心の高い住民が集まり、防災マニュアルの作成や管理規約の改定作業を進めることができたという。

 マンション内の住民の近所付き合いは希薄になりがちといわれる。しかし、前理事長は「防災は顔の見える関係づくりのきっかけになる」という。

 前理事長は「防災マンションはハードとソフト、顔の見えるコミュニティ形成の三者が合わさってできる。多くのマンションが取り組めば、地域全体の減災につながる」と話す。

| 2022年12月20日 | カテゴリー 災害等への備え 

(中)エレベーターが止まったら

荷揚げ用ウインチ活用

 「午前9時、南海トラフ巨大地震が発生し、在宅避難するとの想定で訓練を始めます」

 訓練には、住民が輪番で務める理事ら約20人が参加した。手始めはマンション内の住民の安否確認だ。各世帯には「無事」か「救助求む」か知らせるカードを事前に配布。訓練に合わせて玄関にかけてもらい、理事らが手分けして救助が必要な人がいないかを見て回った。

 訓練では実際に一部の世帯で水を流して異常がないかを確認し、結果を管理室に伝えてもらった。異常があれば専門業者が対処するまでトイレは使用中止になる。そのため、各世帯には7日分の飲料水と食料とともに、災害用簡易トイレの備蓄も要請している。

| 2022年12月19日 | カテゴリー 災害等への備え 

(上) 避難所に入れない

 災害発生時に身を寄せる場所となるのは避難所だ。しかし、南海トラフ巨大地震など広域災害では地域の全住民を収容するのは難しく、耐震性が高いマンションだと在宅避難が基本になる。ところが県南地域ではマンションが急増するものの防災対策はほとんど進んでいない。

 避難所となる最寄りの中学校に出向くと市の職員に告げられた。「マンション住民だけで避難所がいっぱいになる。帰ってもらわないといけないかも・・・」

 そもそも岡山市は南海トラフ巨大地震で最大約11万6千人の避難者が発生すると想定し、物資の備蓄などを進めているが、この想定には耐震基準を満たしたマンションの住民を含めていない。

 避難所に入れないのなら、マンションで1週間程度、在宅避難ができる備えをしておかなければ・・・

ズーム

マンションの防災

近年の地震や台風などでマンションの電気や水道などのライフラインが途絶し、住民が長期にわたって不便な生活を強いられるなど高層建築特有の課題が顕在化している。全国的にマンションは増加傾向にあり、岡山市の調査では同市内のマンションは約2万6千戸(2021年度末時点)。市内の住宅戸数の約8%を占める。

| 2022年12月18日 | カテゴリー 災害等への備え 

概 要

◊令和元年東日本台風(第19号)による大雨に伴う内水氾濫により、首都圏の高層マンションの地下部分に

 設置されていた高圧受変電設備が冠水し、停電したしたことによりエレベーター、給水設備等のライフラ

 インが一定期間使用不能となる被害が発生。

◊こうした建築物の浸水被害の発生を踏まえ、国土交通省と経済産業省の連携のもと、学識経験者、関連業界

 団体等からなる「建築物における電気設備の浸水対策のあり方に関する検討会」を設置し、浸水対策のあ

 り方を検討。

◊パブリックコメントの結果を踏まえ、「建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン」を本年6月にと

 りまとめ、両省より関連業界団体等に対して積極的に周知を実施。

ガイドラインの概要

1 適用範囲

  ・高圧受変電設備等の設置が必要な建築物

  ・新築時、既存建築物の改修時等

2 目標水準の設定

  ・建築主や所有者・管理者は、専門技術者のサポートを受け、目標水準を設定。

  ・以下の事項を調査し、機能継続の必要性を勘案し、想定される浸水深や浸水継続時間等を踏まえ、

   設定浸水規模を設定。(例:○○cmの浸水深)

    ☑国、地方公共団体が指定・公表する浸水想定区域

    ☑市町村のハザードマップ(平均して千年に一度の割合で発生する洪水を想定)

    ☑地形図等の地形情報(敷地の詳細な浸水リスク等の把握)

    ☑過去最大降雨、浸水実績等(比較的高い頻度で発生する洪水等)

  ・設定した浸水規模に対し、機能継続に必要な浸水対策の目標水準を設定

   (建築物内における浸水を防止する部分(例:居住エリア)の設定等)。

3 浸水対策の具体的取組み

  設定した目標水準と個々の対象建築物の状況を踏まえ、以下の対策を総合的に実施

  ①浸水リスクの低い場所への電気設備の設置

    ・電気設備を上階に設置

  ②対象建築物内への浸水を防止する対策

    建築物の外周等に「水防ライン」を設定し、ライン上の全ての浸水経路に一体的に以下の対策を実施

    (出入口等における浸水対策)

      ・マウンドアップ

      ・止水板、防水扉、土嚢の設置

    (開口部における浸水対策)

      ・からぼりの周囲への止水板等の設置

      ・換気口等の開口部の高い位置への設置等

    (逆流・溢水対策)

      ・下水道からの逆流防止措置(例:バルブ設置)

      ・貯留槽からの浸水防止措置(例:マンホールの密閉措置)

  ③電気設備設置室等への浸水を防止する対策

    水防ライン内で浸水が発生した場合を想定し、以下の対策を実施

   (区画レベルでの対策)

     ・防水扉の設置等による防止区画の形成

     ・配管の貫通部等への止水処理材の充填

   (電気設備に関する対策)

     ・電気設備の設置場所の嵩上げ

   (浸水性の低減に係る対策)

     ・水防ライン内の雨水等を流入させる貯水槽の設置

4 電気設備の早期復旧のための対策

   想定以上の洪水等の発生による電気設備の浸水に関して以下の対策を実施。

  (平時の取組)

    ・所有者・管理者、電気設備関係者の連絡体制整備

    ・設備関係図面の整備 等

  (発災時・発災後の取組)

    ・排水作業、清掃・点検・復旧方法の検討。

    ・復旧作業の実施 等

| 2020年9月17日 | カテゴリー 災害等への備え 

写真を提供していただいた方の住んでいるマンションは世田谷区玉川にある。

裏側のエントランスが多摩川に面しており、昨年の台風19号では、エントランスに止水板を設置した。

その後、堤防から水が溢れ出し、辺り一面が冠水した。

こちらのマンションでは、数年前に建て替えた時に川に面した裏手のエントランスに止水板設置を決めたという。

止水板の高さは約1メートル弱。

普段は倉庫などにしまい、いざというときに設置する。

これまでも多摩川が増水しそうな時に設置したことがあるといい、今回はまさにその効果が実感できたことになる。

写真から止水板が見事に川から漏れ出た水の侵入を防いだのが分かる。

ちなみに近隣のマンションの道路より低い部分は冠水してしまっていた。

無論、水位が1メートルを超えてしまったら、水が建屋に侵入してしまうわけだが、少なくとも今回浸水は防ぐことが出来たわけだ。

「Japan In-depth」より抜粋・修正

| 2020年1月07日 | カテゴリー 災害等への備え 

止水板とは

「止水板」と聞いて皆さんはどのようなものを想像するだろうか?

一番身近なものは、地下鉄の入り口に設置するものではなかろうか。

地下に水が浸入することを防ぐために出入り口に人の手で設置するものだ。

では市街地のオフィスや店舗などはどう浸水対策をしているのかというと、一番ポピュラーなのは「土嚢」だろう。

応急的に出入り口に設置するのに便利である。

しかし、住宅地のマンションなどの集合住宅では、土嚢を積み上げるにも人手を集めねばならないし、そもそもどこから土嚢袋を入手したらいいかすら分からない。中に詰める土砂も市街地の場合、そう簡単に手には入らない。

しかし、エントランスに「止水板」があったら、それを設置するだけで1階ロビーへの水の侵入は防げる。

実際にあるマンションでは、エントランスに「止水板」を設置したことで事なきを得た。

「Japan In―depth」より抜粋、修正

 

| 2020年1月05日 | カテゴリー 災害等への備え 

要介護、ペット連れ避難、対応どうすれば/朝日新聞

海面より低い「ゼロメートル地帯」が7割を占める東京都江戸川区は、荒川が氾濫する恐れがあるとして、12日午前に約43万人を対象に避難勧告を出した。

区内105か所の避難所や自主避難受け入れ施設に、ピークの午後9時時点で計約3万5千人が避難した。

今回、氾濫には至らなかったが課題も見えた。

区立松江小には、デイサービス事業者が、利用していた高齢者を連れてきた。

介護や支援が必要な人への備えや対応のルールはなかったが、対応を迫られた。

雨天時のペット連れの避難者への対応を決めておらず、約80人がペットとともに1階玄関近くで過ごした。

前田真一副校長(47)は、「初めてわかることが多かった」と話した。

| 2019年12月13日 | カテゴリー 災害等への備え 

タワマン武蔵小杉を襲った泥水/朝日新聞10・19

川崎市中原区。

地下3階の電気系統の設備が浸水した武蔵小杉駅近くのタワーマンション(47階建て、643戸)は中層以下の停電や、全戸断水が続いた。エレベーターは止まったままだという。

住民の女性も近くの親戚宅に一時的に避難している。

「一番大変だったのはトイレ」と振り返った。

隣の川崎市高津区では、多摩川に流れ込めなくなった支流の水があふれるなどして浸水した。

市上下水道局によると、中原区では多摩川の水が下水管を通じて逆流し、地上に噴き出した可能性が高いという。

水路や下水の水が行き場を失って起こる内水氾濫だ。

東京大の古米弘明教授(都市工学)は、「市街地が河川の水位より低い場合、有効な対策をしておかないと逆流や内水氾濫が起こりうる」と指摘したうえで、「流域全体に及ぶような豪雨のリスクが今後高まる。

浸水被害が想定される市街地では、住宅の基礎部分のかさ上げやマンションの地下空間の耐水化など、街づくりのなかで被害を軽減する取り組みを進めるべきだ」と話す。

| 2019年12月11日 | カテゴリー 災害等への備え 

トイレ使えないタワマン 真っ暗な階段/朝日新聞10・15

駅近くの高さ約161メートル、47階建てタワーマンション(643戸)では、停電や断水が続く。

地下3階の電気系統の設備に浸水したために停電。

ポンプで水を上層階までくみ上げて各世帯に供給する仕組みのため、停電でポンプが動かず、全戸が断水し、トイレも使えない。

管理会社が水や携帯するタイプのトイレを、住民に提供している。

住民らによると、エレベーターが止まっているため、真っ暗な非常階段を懐中電灯を使って移動しているという。

15日は朝から、電力会社や設備会社が訪れ、復旧を急いだが、高層部分に住む女性は、「管理組合から『長引きそうだ』との説明があった。

しばらく別の場所に行く」と話し、スーツケースをもって出かけた。

| 2019年12月09日 | カテゴリー 災害等への備え 

低層階が浸水・・・あの日の「分泊」とは/朝日新聞10・26

台風19号が首都圏に近づいた夜。東京23区のあるマンションで、小さな試みがあった。

浸水した低層階の住民を、上の階が受け入れて自宅に泊めてあげる

名付けて「分泊」。成否のカギを握ったのは、日頃の住民の付き合いの深さだ。

周囲が暗く、暴風雨がうなる。「孤立してしまったようです」。

理事が119番に助けを求めると、「いま避難所に行くのは危ない。

3階以上で水か引くまで待機して」と指示が返ってきた。

2階まで含めれば、避難すべき住民は20世帯近くにのぼる。

「3階以上へ」と言われても。どこへ行けばいいのか。

「だったら、うちに泊まりませんか」。一緒に対応にあたっていた住民から自然と声があがった。

住民の多くが10年以上前からの入居者で、顔見知りがほとんど。

管理組合の活動や、子どもが小さい時の地域活動などを通じて交流もあり、受け入れ先は次々と決まった。

「知り合いがいない」という人は、空き部屋がある理事の家で受け入れることにした。

都市の災害対策に詳しい中林一樹・明治大学特任教授は、「上層階に避難することは最後の手段ではあるが、身も守るのに有効だ。

円滑な避難には、災害が起きる前からの住民同士の交流が重要。

管理組合などは、低層階の受け入れ先や避難させてもらった後の謝礼などの具体策を率先して考えておくことが必要だ」と話した。

| 2019年12月07日 | カテゴリー 災害等への備え