滞納管理費等問題

 管理費等の滞納については、管理会社任せではなく、理事会がスグに対応すべきであります。

 時間が経てば経つほど、滞納金がたまり、またこの状態が続けば、滞納者も何も言ってこないので、ルール無視の傾向につながります。

 理事会として直ぐに動き、滞納者への力強い意思を伝えるべきです。その例として、以下のものなどが考えられ、ルール違反へのメッセージとなります。

(エレベーター内に)

 ・口座引き落とし日 ・銀行口座残高確認 ・先月の未納人数 ・滞納金額推移グラフ など

(広報誌に)

 ・滞納者の人数 ・滞納金額 ・滞納金額推移グラフ  など

(戸別訪問へ)

 ・滞納者への督促ルールの説明と書面の配付

 ・文書による滞納金額の通知

 ・管理規約に従い、〇ヵ月以上の滞納者に駐車場契約解除の通知

 ・駐車場契約解除に伴い、最寄りの警察署への通知  など

| 2018年2月21日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

 これまでは、こうした状況に至れば、マンションは比較的「売りやすい」から売ればよいというように考えられてきた。ところが高齢者になれば病などをかかえてなかなか引っ越しもままならない。さらに郊外の老朽化したマンションを中心に売却しようにも買い手がいない物件が続出しているのだ。首都圏郊外でも最近は中古の売り出し価格が戸あたりで「くるま1台」分ほどの価格になっている物件も珍しくなくなっている。

 管理費や修繕積立金の未納が多くなると当然、必要な管理や大規模修繕が行われなくなる。管理の内容や建物の老朽化を嫌気した住民が逃げ出す。マンション価格が落ち込むことで住民層も変わり、不逞の輩が棲みつくようになる。空き住戸が増えることでマンション内の治安が悪くなる。必要な修繕が行われない結果、防災上も問題が生じ始める。マンション全体のスラム化である。スラム化したマンションの存在は当然にして地域の環境や治安、防災に大きな影響を及ぼすことになる。

 マンションの空き住戸問題は一見すると戸建て住宅のように「目に見える」ことは少ないのだが、マンションという建物内で深く静かに進行し、やがて建物全体で大きな問題が露見してくる。そして本来であれば健全に生活を営んでいた同じマンションの住民を追い出し、その所有者にも経済的実損を負わせることにつながる実に厄介な問題を内包しているのだ。

(岡管連から)

 マンションの管理に無関心であればあるほど、『スラム化への道』がますます早まることにつながる。

                             (著)オラガ総研株式会社 代表 牧野知弘

| 2017年6月23日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

 分譲マンションは、建物の完成時にすべての住戸が分譲される。したがって購入する人の年齢層や家族構成、経済状況などが似通る傾向にある。こうした傾向は入居者にとってはある意味心地よいものだ。同じような価値観を持った人たちが希望をもって新しいマンションに移り住む。家族もほぼ同じような構成で世帯収入もあまり変わらない。築年数が浅いうちは、所有者の間で大きな格差がつくことも少ないので管理組合の運営も比較的容易な場合が多いものだ。

 ところが築年数が経過していくと、初めは「同じ」であった所有者間に格差が付き始める。うまくいく人もいれば、経済的に落ち込んでしまう、健康などを害してしまう人も出てくるのが人生だ。同じはずであった価値観にも微妙な「ずれ」が生じ始めるのが、建物の老朽化にともなって大規模修繕が必要になってくる築30年超あたりからなのである。

 この時期に、年金暮らしがままならずに管理費や修繕積立金を滞納する高齢者がいる。相続したにもかかわらず、空き家住戸のまま放置し、管理費や修繕積立金の支払いを行わない相続人がいる。多くのマンションでこうした問題が顕在化し始めているのである。

                             (著)オラガ総研株式会社 代表 牧野知弘

(岡管連から)

 マンションの場合、建物の住戸の一つに住民が一人でも住んでいれば、空き家対策法の適用外であることを、付け加えておきます。

| 2017年6月21日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

 マンションの空き住戸問題は、これまでの空き家住戸問題とは全く様相が異なる新たな問題を投げかけているのである。

 マンションは一般的には区分所有者が管理組合などを結成して、基本は合議制によってマンションという資産の価値を維持している。その管理組合運営を財政的に支えているのが管理費であり、建物の修繕等に備えて積み立てるのが修繕積立金である。

 ところが最近、築年数が経過し老朽化したマンションを中心に管理費や修繕積立金の滞納が目立ち始めている。原因は区分所有者の高齢化と死亡後の相続人による放置である。国土交通省の調査によれば東京都内のマンション(分譲タイプ)では調査対象の4分の1近くが築35年以上のマンションである。また、築25年以上となるとなんと調査対象マンションのおよそ半数近くが該当している。

 通常築35年を超えると多くのマンションでは上下水道などの配管やエレベーターなど基幹設備の更新が必要になる。また築50年近くになれば、マンションの建替えもテーマになってくる。

 ところが、築年数が増えるにしたがって管理費や修繕積立金を滞納する人の割合が増えていくことが国土交通省の調査からも明らかになっている。

 この調査によれば、築30年以上のマンションの管理組合で、管理費、修繕積立金の滞納があると答えた組合の割合は、3か月以上の滞納が約半数、6か月以上で約30%、1年以上の滞納に至ってもなんと20%を超えていることがわかる

                             (著)オラガ総研株式会社 代表 牧野知弘

(岡管連から)

 管理費等の滞納が5年以上にわたる場合、最高裁の確定判決により、当該5年を超えた滞納分は、時効の消滅の対象になりうることを、管理組合として注意しなかればなりません。

 また、管理費等の滞納については、管理会社は管理委託契約上、一定の期間しかその対応は行いません。

 したがって、最終的には、管理組合がその対応を行う必要があります。

| 2017年6月19日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

正式な法的措置

 正式な法的措置には、管理組合自らが訴訟を起こすものと、他人の法的措置に便乗して行うものがあります。

(1)自ら行うもの

D 保全処分

 滞納者の財産処分を事前に防止して保全しておく手続です。裁判で勝訴判決を得ても、滞納者の財産がすでに処分されては元も子もないため、その前に財産の散逸を防止しようとする制度です。保全処分により、滞納者に心理的圧力を与え、弁済を促す効果があります。

 保全処分には、金銭債権(銀行貯金や所有不動産など)に対する仮差押えと金銭債権以外の債権(物の引渡請求権など)に対する仮処分の2つがあります。

E 債務名義にもとづく強制執行(差押え)

 強制執行には、滞納者の財産を差し押さえる「差押え」と担保を取っている場合に、担保権を実行する「競売」の2つの方法があります。

F 先取特権による競売申立て

 管理組合には債務名義がなくとも、先取特権により、滞納者の専有部分等に対して、競売を申し立てることができます。

(2)他人の法的措置に便乗して行うもの

G 配当請求

 他の債権者により既に開始されている競売に、配当を要求する手続きです。管理組合の場合、先取特権にもとづき要求することができます。

                               (著)公認会計士・税理士 吉岡 順子

| 2017年4月13日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

簡易な法的措置

 法的措置には、正式な裁判(民事裁判)だけではなく、手続きが比較的簡素で、費用も高額とはならない方法が、少額訴訟、支払督促、即決和解、調停の4種類ありますが、滞納管理費等の回収に利用可能なのは、少額訴訟、支払督促、調停の3つです。

A 少額訴訟

  滞納管理費等の請求金額が60万円以下の場合に利用できる制度で、利用回数の制限(1人が同じ裁判所

 に年間10回まで)があります。原則として、1日で審理を終え、即日判決が言い渡されます。

  少額訴訟は、請求する金額が少額で、内容も複雑困難でないものについて、少ない経済的負担で、迅速か

 つ効率的に紛争を解決することを目的にしています。相手方が異議を申立てると、通常訴訟手続きに移行し

 ます。

B 支払督促

  滞納者が自分に支払義務があることを否定しておらず、支払義務の内容が管理費等の金銭である場合に利

 用できる手続です。支払督促手続きは、通常の裁判手続きとは異なり、書類審査のみで行う迅速な手続き

 で、審理のために裁判所へ出廷する必要もなく、費用も訴訟の半分程度です。

C 調停

  簡易裁判所に申立をし、調停委員の仲介のもとで、当事者間の解決のための合意を成立させる裁判手続き

 の1つです。合意が成立するためには、当事者双方が出頭することが必要で、合意が成立した場合には、調

 停調書が作成され、確定判決と同様に債務名義としての効力を有します。

                               (著)公認会計士・税理士 吉岡 順子

| 2017年4月11日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

任意の回収手続き

 任意の回収手続きには、書面による請求、自宅訪問、配達証明付内容証明郵便による催告書の送達等が挙げられます。

 任意の回収手続きは、内容を公正証書として作成する以外は、法的強制力はなく、滞納者との話し合いにより支払いを促すことになるため、滞納者の財政状態によっては、全額回収するに至らない場合も多く見受けれれます。

 このため、これらの手続きにより、滞納管理費等の回収に結びつかない場合には、法的措置を検討する必要が生じます。

任意の回収手続きの種類と特徴

1 書面による請求

 ・書面(請求書)を滞納者へ送付して、支払いを促す手続き。

 ・滞納者の現住所が不明な場合は送付できず、住所移転を把握していないと、送付しても返送されるため、

  効果は限定的。

 ・滞納者が受け取った場合でも、無視されるケースも多い。

2 自宅訪問

 ・滞納者が応じた場合に、実施可能な手続き。

 ・現在の資産状況等、実態を把握し、支払い意思の有無を直接本人に確認できず、支払計画書などを取り交

  わし、支払いを促す。

 ・多重債務者等の場合、面会に応じないケースもあり得る。

3 配達証明付内容証明郵便による催告書の送達

 ・心理的効果を期待して、支払われない場合には、法的措置を講ずることを予告する内容を含む催告書を

  作成し、これを管理組合理事長名ないし管理組合の代理人弁護士名で送達する手続き。

 ・管理費等の消滅時効を、一旦(6か月)中断する手続き。

4 任意の交渉

 ・裁判外で、弁護士に代理人を依頼するなどして、滞納者と交渉し、合意に至った場合は、和解契約を

  締結し、和解書等を作製する手続き。

 ・和解書等を公正証書として作成しておくこと、債務名義となり、後に紛争となった場合に、訴訟等を

  起こさずに強制執行可能。

                            (著)公認会計士・税理士 吉岡 順子

| 2017年4月09日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

区分所有者が行方不明の場合の対処は

 同様な問題として、区分所有者が管理費を滞納したまま、行方不明になっている場合があります。

 この場合には、不在者財産管理人の選任を申し立て、選任された不在者財産管理人を相手とするか、裁判について相手方が所在不明として公示送達の方法で訴訟を起こすことが考えられます。

どのように対処すべきか

 上記のように手続をとるには費用と時間がかかることになります。

 しかしながら、放置しておくと滞納が増えるばかりで管理に支障をきたす場合があります。

 また、競売により新しい方に区分所有権が移転した場合には、新所有者に未納分の管理費の支払を請求することもできますので、手続をとることを積極的に考えていくべきと考えます。

                             (著)深津法律事務所 弁護士 深津 茂樹

| 2017年3月05日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

確認後の対処

 戸籍の確認により相続人の存在が確認され、相続人が相続された場合には、滞納されている管理費はその方に支払いの請求をすることになります。

 しかし、確認した結果相続人が存在しない場合や相続人が全員相続放棄をしてしまった場合には請求する相手がいないことになってしまい、困ってしまうことになります。

 このような場合の対処の方法としては、家庭裁判所に対して相続財産管理人の選任を申し立てることになります。

 そして、選任された相続財産管理人を相手として裁判や競売の請求をしていくことになります。

 ただ、このような方法をとる場合には、弁護士等に手続を依頼するための費用に加えて、裁判所に相続財産管理人選任のための予納金が必要となります。

 また、最終的に競売の手続をする場合には競売手続においても裁判所への予納金が必要となります。

 競売の予納金は売却代金から優先的に返還されますが、それでも一時的には金銭を用立てる必要があります。

 さらに期間についても長期間かかってしまうことがあります。

 このようなこともありますので、手続を進めていくかどうかについては、管理組合の中で話し合いをすることが必要だと思います。

                             (著)深津法律事務所 弁護士 深津 茂樹

岡管連から

 相続財産管理人選任の申立時の予納金は、50万円から100万程度といわれています。

| 2017年3月03日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

管理費滞納のまま一人暮らしのマンションの住民がなくなられた時の対処

 一人暮らしの区分所有者の方が管理費滞納のまま亡くなられてしまった場合、誰に請求していいのか困ってしまう場合があります。

 本人が亡くなられた場合、債務も相続されますので、まずは相続人を探して請求することになります。

 誰が相続人かを確認するためには、まずは、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、確認する必要があります。

 出生から死亡までの戸籍謄本を取得する必要があるのは、現在の戸籍には結婚している子供は記載されていない場合があるので子供の有無について確認する必要があることと、子供や親が不在かなくなっている場合には兄弟の有無まで確認する必要があるからです。

 出生から死亡までの戸籍謄本の取得は弁護士等の専門職に依頼することにより可能となります。

                             (著)深津法律事務所 弁護士 深津 茂樹

| 2017年3月01日 | カテゴリー 滞納管理費等問題