建て替えの「天国」と「地獄」
スラム化するマンション
都心の人気エリアや現在も新築物件の分譲が行われている地域のマンションで「住民の合意形成ができない」というだけなら、まだ建て替えの可能性はある。しかし、多くの物件は余剰床もなく、立地も抜群にいいわけではない。経済的な負担が重くなりすぎては、建て替えにはわずかな可能性もない。富士通総研の主席研究員・米山秀隆氏が語る。
「第一世代のマンションは50~60年代に都心で建っています。その頃はまだ立地がよく、容積率にも余裕がある。いま建て替えが進んでいる物件は、そうした好条件だからこそうまくいっている。
しかし、今後建て替えの必要が出てくる郊外の大量の物件は、都心へのアクセスがいいわけではないし、都心であっても、狭小物件が多い。さらに、当時の法令上は合法だったけれど、法律が変わって、いまよりも容積率を小さくしなくてはならない物件も少なくない(既存不適格)。つまり、建て替えをすると部屋が狭くなるのです。さらに建て替えが進みにくくなることは必至です」
さくら事務所所属のマンション管理コンサルタントの土屋輝之氏も言う。
「いま、建て替えの要件を緩和しようという風潮もありますが、それで簡単に建て替えが進むとも思えません。今後は、建て替えもできない、建物や設備の大改修もできない、建物を壊すこともできない、この3つの『できない』によってマンションはスラム化していく。3~5年後、これが社会問題になり始めるのは間違いありません」
いい場所に建つマンションは建て替えがうまくいき、郊外のマンションや狭小のマンションは、そもそも建て替えをするのが不可能・・・。
天国と地獄、この国のマンションには、激しい格差が存在している。
岡管連から
【六つのできないマンションはスラム化】
一 合意形成できない
二 建て替えできない
三 大改修できない
四 賃貸できない
五 解体できない
六 売却できない
【忍び寄る2025年度問題」
・団塊世代の全員が後期高齢者になるのが、2025年
・それに伴う社会保険の負担の増加
・経年化に伴う管理費等の負担の増加
・年金の減少
・税金の増加
・相続の増加