管理組合の悩み

教訓と対策

 共通することは、区分所有者の無関心と、自分のマンションは大丈夫といった思い込みが根底にあります。

 また、担当者任せはダメ、関心を持つことを訴えても、何をしたらよいか分からない人が多くいます。

 こうしたことから適切な管理運営が行わなければ、会計処理の不正が発生したり、滞納者が増え長期化すれば滞納額が多額になったりして、管理不全マンションにも繋がります。

 これらの問題を解決するには相当な時間がかかることを認識し、下記の点を心掛けながら、自らの責任において行うことを自覚して、マンションの管理運営に当たることが肝心です。

チェックポイント10項目

① 月次収支報告書をよくチェックする

② 理事会では会計報告を必ず行う

③ 決算書は前年比、繰越金、書式を見る

④ 総会の出席率は関心の高さを示す

⓹ 会計監査は抜き打ち的に厳正に行う

⑥ 支払い方法のルールを決めておく

⑦ 預金通帳と印鑑は別人が管理する

⑧ 通帳の動きを見る

⑨ 管理会社の支払い承認には複数が立会う

⓾ 利益相反行為に注意

(著)マンション管理士 小泉 健司

| 2021年9月10日 | カテゴリー 管理組合の悩み 

設置義務づけ 見直す動きも

 分譲マンションの「お荷物」となっている空き駐車場。空車スペースを外部に貸し出して収益につなげる動きが出ているものの、一部にとどまる。

 維持管理費が賄えないからといって、設備の点検や更新を怠ると大事故につながりかねない。

 国土交通省によると、機械式では、車を乗せるパレット(駐車台)が落下する事故が17~19年度に11件届けられた。一部は設備の定期的な交換時期を過ぎてもそのまま使われていたという。

 「駐車場余り」が先行する自治体では、条例を見直す機運が高まる。

 東京都は一部地域の駐車場の設置義務づけを緩和する方向で検討している。また、仙台市も昨年4月に市中心部の規制を緩めた。

 人口も車の所有者も右肩上がりだった時代が終わったいま、対策は待ったなしだ。

(岡管連から)

 機械式に関わらず車も、少子高齢化の波を受けていて、車を手放す人が増えてきています。

 その結果、駐車場収入が減り、管理組合運営が厳しくなってきています。

| 2021年6月13日 | カテゴリー 管理組合の悩み 

機械式 維持費が重苦に

 分譲マンションの空き駐車場が住民を悩ませている。とりわけ機械式立体駐車場は高額な維持管理費がかかり、利用者不足が負担増に直結する。

 特に都市部は深刻で、東京では古めの設備だと4割近くが空いているとの調査もある。そうした状況を脱しようと、各地で試行錯誤が始まっている。

 空車率は機械式が19.5%。平面の6.9%と比べて高い。機械式の場合、古くなるほど空車率が高まる傾向にある。

 築21~30年だと26.8%で、東京都に限ると38.0%にのぼる。ワンボックスカーなど近年人気の車が入らないこともあるからだ。

(岡管連から)

 機械式駐車場の場合、3~5年おきにメンテナンスが必要であり、25年~30年での更新の時期を迎えます。

 特に注意を払わなければならないのは、駐車場収入が管理費会計に組み込まれ、機械式駐車場のメンテナンス等の費用が修繕積立金会計から支払われる場合、本来の大規模修繕工事には対応できないおそれがあります。

| 2021年6月11日 | カテゴリー 管理組合の悩み 

相続人不存在への対処

 区分所有者が死亡し、その後誰も相続したという連絡がなく、管理費等が滞納されてしまうことがあります。死亡後、滞納が始まり2ヵ月ほどが経過したら、相続人捜索を、司法書士や弁護士に依頼しましょう。本当に独りぼっちだったり、相続人が相続放棄してしまい相続人がいなくなったりした場合は、管理組合は、家庭裁判所に相続財産管理人選任の申し立て(*1)をします。相続財産管理人は、相続人を探し出す一方、このマンションを売却して、各種債務を清算して、裁判所の審判によって報酬を差し引き、なお、余剰があれば国庫に納めて、管理人の仕事を終わらせます(*2)。管理組合が予納金(*1)を裁判所に納めても、この売却代金が多ければ、かなりの金額が管理組合に戻ってくる可能性があります。

 したがって、管理費等の滞納額を積み上げて放置しておかず、さっさと、相続財産管理人を選任して当該マンションを売却してもらい、新しい区分所有者から管理費等を支払ってもらう方が良いでしょう。問題は、この部屋の住人が、自殺した場合には、なかなか買い手が付かないことがあります。しかし、最近このような「訳アリ物件」を購入し(*3)、転売や賃貸する業者も出てきて市場が動いているようですので、諦めないで取り組んでみてください。

(著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子

岡管連から

*1:家庭裁判所に相続財産管理人選任の申し立てをする場合、管理組合は予納金として、30万円から

   80万円程度、家庭裁判所に納める必要があります。

*2:相続財産管理人の審判が下りて、相続財産管理事務が終了するまで、概ね1年半から2年程度

   要します。

*3:「訳アリ物件」に関しては、民泊に活用される可能性があります。

| 2018年2月03日 | カテゴリー 管理組合の悩み 

孤独死への対処

 孤独死(病死又は自殺)は、付き合いがない、家族がいないとかいても疎遠な場合に起き、隣人が、悪臭がしたり蠅が飛び回ったりして気付きます。まず、本人を呼び出してみて、返事がないことを確認してから、警察を呼びましょう。警察を呼ぶ前に、緊急時の合鍵等を使って管理員と理事が立ち入ることは、非常に危険です。なぜなら、ガス漏れの場合は引火爆発の可能もあり、服毒自殺の場合、毒物が室内の空気を汚染していることも考えられるからです。

 警察に処置を任せるわけですが、事件性がなければ遺体の搬出は、警察が専門業者を呼び処理します。その時、管理組合は業者の名刺をもらっておいてください。たまに、廊下やエレベーターに遺体の体液をこぼしてしまうとんでもない業者がいます。この匂いは強烈で、3日間~1週間その階の方や、エレベーター使用者は気分が悪くなり、ホテル住まいをした例があります。

 区分所有者本人が亡くなった場合には、ご遺族に損害を請求(*)しますが、身寄りがないとか、相続放棄されて誰も支払わない場合には、管理組合は、部屋を強制競売にかけてその損害を回収します。もしも、他に区分所有者が存在していて、賃借人とか占有者が孤独死された場合には、その区分所有者が、損害賠償する義務があります。

 夏場、長期間発見されなくて、遺体の体液が下の畳や板張り床を突き抜け、床下のコンクリートまでしみこんでしまっている場合、そのコンクリートをはつらないと匂いが抜けない場合があり、大工事になります。管理組合としては、いつも出かける方が急に見かけなくなるとか、ポストが一杯になる等の異変に気付いたら、空騒ぎになっても良いですから、早めに動きましょう。

(著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子

岡管連から

(*)管理組合が遺族に損害賠償を請求する場合、また管理費等を請求する場合、推定相続人の連絡先等を

   把握していないと時間と費用の負担がかかります。

   管理組合としては、日ごろから組合員の緊急連絡先等を把握しておくことが望まれます。

 孤独死の事案が起きると、警察が介入します。マンションの場合、孤独死の部屋の問題だけにとどまらず、そのことはマンション全体に影響がおよび、他の部屋に風評被害をもたらします。

 その結果、マンション全体の資産価値の低下を招き、中古マンションの価値が下がり、売却が難しくなります。

| 2018年2月01日 | カテゴリー 管理組合の悩み 

高齢者の滞納への対処

 高齢の組合員が、本当にお金がなくなってしまい、年金だけでは管理費等を支払えない場合があります。

このときは、何度も足を運び、胸襟を開いてくれる理事などが実状を聞き出して、次のような打開策を一緒に考えることが良いでしょう。

①生活保護を受ける

②任意売却する。滞納したからと判決を取り、それに基づいて強制競売するよりも、任意売却の方が市場価格

 で売れるし、遥かに得であることを理解してもらうことが何よりも大切です。

③もっと安い賃貸アパートや親族の扶養者となり、今のマンションの部屋を貸し出す。

④リバースモーゲージ制度(注)の利用が可能であれば申し込んでみる。

⑤親族に一時立て替え払いをしてもらう。ただし、この場合またすぐに滞納が始まることも考えられます。

 こうした対処を取りながらも、是非、地域生活支援センターに相談するとか、自治体によっても名称が異な

りますが、高齢者の住宅相談(高齢者向け住居のセーフティネットの利用)に回って、よい解決法を見つける

べきです。

 また、お金は持っているが、本人が認知症・その他の障害によって滞納しているのであれば、地域包括支援センターに相談し、社会福祉協議会が行っている日常生活自立支援事業を利用するのが良いでしょう。

(注)リバースモーゲージ制度とは

   持ち家(自宅)を担保として銀行や自治体から融資を受けて、借りたお金は死亡時に自宅を売却する

  ことで一括返済する仕組み。

(著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子

岡管連から

 岡山の分譲マンションの場合、リバースモーゲージ制度の適用はないと思われます。

| 2018年1月29日 | カテゴリー 管理組合の悩み 

(5)成年後見制度の利用へ

   本人が、物忘れをしたり理解力に不安を感じたりする(補助)、判断能力がかなり不十分(保佐)、

   判断能力がなかったり寝たきりの方(後見)には、民法(7条~21条)によって、成年後見等の

   申立てをすることができ、家庭裁判所の審判により、補助人、保佐人、成年後見人が付きます。

   ただこの制度は、本人の行動を強制的に制限する制度であるため、管理組合には、成年後見制度の

   利用を申し立てる権原はありません。原則として本人を含む配偶者、四親等内の親族の家族等だけが

   申し立てることができます。家族が何もしなく、身寄りがないときは成年後見人等を付けられない

   のです。

   そこで、包括支援センターを利用すると、ケアマネジャーがその自治体に働きかけてくれて、そこの

   自治体の制度にマッチすれば、成年後見人等の選任について市町村長が代わって申し立てる市長申立て

   制度の利用ができます。この制度は、自治体によって、時間がかかる場合があるので、管理組合は

   早めに手を打つことが肝要です。ケースによっては、民生委員で福祉に強い方に当たれば、

   早く後見制度を利用できる場合もあります。

(著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子

岡管連から

 家庭裁判所に成年後見人等の選任の申立てを行っても、家庭裁判所の審判が下りるまで、一般的に3カ月から4カ月程度時間を要します。

| 2018年1月27日 | カテゴリー 管理組合の悩み 

(4)地域包括支援センターの活用

   解決策の1つは、家族がいれば、皆に迷惑を掛けぬよう十分監督するようお願いすることです。

   問題は、家族も認知症だったり障害を持っている場合です。そんなときには、地域包括支援センター

  (注)に役員さんが連絡し、相談に出向きましょう。これは、介護保険法115条の39第1項に

   よって、市町村が設置しています。

   早めにこのセンターを利用すれば、ケアマネジャーに係わってもらうことができ、他の機関との連携を

   とってもらうことで、デイサービス、入浴の支援、配食サービス、病院での適切な治療を受けたりする

   ことができます。また、社会福祉協議会が行う日常生活自立支援事業による福祉サービスの情報提供・

   助言、福祉サービスの利用手続きやその利用料の支払い、生活費の出金など金銭の出し入れの手続き、

   管理費や家賃、公共料金、医療費の支払い手続き、大切な書類の預かり、印鑑預かりなども条件が

   合えば利用できます。

   (注)地域包括支援センターとは

      地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、地域住民の

      保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的として、包括的支援事業等を地域

      において一体的に実施する役割を担う中核的機関で、市町村が責任主体です。

(著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子

| 2018年1月25日 | カテゴリー 管理組合の悩み 

認知症の方が引き起こす困りごと

(1)役員の担い手にならないこと

   輪番制で役員の番が回ってきても、正常な反応がないあるいは全て出てこない場合があります。

   そういう事態が予測されるなら、役員交代の2ヵ月ほど前に、次の方に予め通知して面談して

   普通に話ができるか、役員を引き受ける自覚があるかを、確認しておきましょう。

(2)役員忌避を回避できる規定の必要性

   家族に認知症や重病人を抱えていて介護が必要とか、別世帯の家族の介護にほとんど毎日出かける

   場合、役員に当たった人が辞退する場合どうするかという問題があります。プライバシーに係ること

   なので理事が何回か面接して、要介護者がほとんど毎日デイサービスに行くのでしたら昼間だけの会計

   ならできるか、または電話やインターネットにより理事会参加の規定を設けて、電話等での理事会参加

   はできるかを打診するとか、夜の理事会は原則開かないとし仮にやっても議事は1時間以内に終わらせ

   るよう議事進行の効率化を図るなどの工夫が必要です。

(3)認知症から起こる迷惑行為への対処

   徘徊、奇声を発する、ゴミ屋敷、暴力、放尿・脱糞など、迷惑行為はいずれも認知症が進む過程で

   現れる症状です。

   ゴミ屋敷化してベランダに荷物等を積み上げ、ついに、自室の入り口の外にまでゴミを置き、

   ゴミ出しをしなくなります。悪臭だけでなく、虫が発生して近隣の居住者が大変迷惑を被ります。

(著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子

| 2018年1月23日 | カテゴリー 管理組合の悩み 

組合担い手不足 建物の荒廃進む

 管理組合はマンション内のルールを決めたり、管理や修繕の費用を集めたりする。共同生活には欠かせない仕組みだ。管理組合があって今は正常でも、建物と住民の「二つの老い」が進むマンションは多い。役員のなり手不足や空室の増加が深刻になれば、管理組合はいずれ機能しなくなり、荒廃は避けられない。

 改修か建て替えか、それとも解体か。判断を迫られる住民一人一人がもっと管理に関わる必要がある。連載でこう訴えると、多くの声が寄せられた。予想以上だったのは、管理や修繕を任せた業者への不信の高まりだ。「任せきりはやめ、住民主体で管理する大切さは分かった。でも住民をサポートするはずの業者の不正はどう見抜けばいいのか」。業者の管理費着服や工事のトラブルは各地で起きている。訴えは切実だった。

 全国マンション管理組合連合会の川上湛永会長は「悪質な業者にとって住民をだますのは赤子の手をひねるように簡単。高齢化が進み資金力も低下する中、住民は最低限の知識を身に付ける必要がある」と指摘する。

 6年前。家族や地域の絆をテーマに連載をした際、作家の重松清さんに聞いた話を思い出す。「昔のようなご近所との濃厚な人間関係はうっとうしくもあった。オートロックのマンションで絆を断ち切ったのは、僕たちだった」

 近所付き合いがいらず、プライベートが守られることを理由に、マンションを買った人は多いはずだ。しかし、築年数がたつと、皮肉にもマンションこそ、住民同士の協力が必要になってくる。専門家や他のマンションとのつながりを活用し、業者と対等な関係を結ぶ一歩を踏み出してほしい。その助けになるような取材を今後も続けたい。

岡管連から

 管理業者にとって、管理組合は『金の卵を産む鳥のかご』である。なぜなら、

・一度契約を結べば、毎月一定の収益が望める。

・一度契約を結べば、よほどのことがない限り逃げることはない。

・管理組合が管理業者に管理を委託しているのだが、住民が全く無関心であるため、

 その立場が逆転している。

 管理業者にとって、これほどうまみのある商売は、どこを探してもないだろう。

| 2017年8月07日 | カテゴリー 管理組合の悩み