再生の合意形成の障害になるもの
建替えや大規模な再生を検討したものの、あと1歩のところで合意形成の壁にぶつかって、実行ができなかったマンションで、何が障害になったのかを聞くと、次のようなことが見えてきます。
1 意思表示ができない高齢者の増加
90歳以上になると、半数は認知症の症状があると言われます。総会議案書の内容を呼んで理解し、賛成
/反対の意思表示をするのが難しくなります。長期入院、施設入居で、総会案内が届かない方も出てきま
す。反対者はほとんどいないのに、委任状等を含めた賛成票が確保できなくて、決議できないという事態が
生じます。
2 日常生活が変わることへの不安
高齢になると、家の中が片付けられず家に人を入れたくないと思ったり、生活環境が変わることに大きな
不安を感じるようになります。それが、室内に人が入るような改修に対する抵抗感を持つことや、建替えに
対して強固に反対することにつながるのです。
3 お金の不安
家計の状況は外からは見えませんが、年金生活になると修繕積立金の値上げによる月々の支出増はこたえ
ます。介護や入院が必要になったらと考えると、預金があっても、それを使うのは不安だという思いも湧い
てきます。建替えの合意形成が進まないマンションの理事長が、「今、1,000万円を負担して建替えを
すれば、新築のマンションが手に入り、市場価格が2,000万円は上がるので、何で反対するのか」と
憤っていました。でも、高齢者にとっては、今、現金が手元からなくなる不安の方が大きいのです。
4 将来への興味や意欲がなくなる
一番難しいと思うのは、80代、90代になると、体が思い通りにならないこともあり、自分の日々の生
活で精いっぱいで、マンションの将来に興味や意欲が無くなることです。これは、どのマンションでもある
ことなので、子供世代を巻き込むなどの対策を考えながら合意形成を進めることが必要になってきます。
(著)公益財団法人 マンション管理センター 企画部参与 廣田 信子