合意形成ができる管理組合運営とコミュニティ(1)/マン菅通信2020・6

高経年マンションの将来の選択肢

 高経年マンションの将来の選択肢としては、下記の3つが考えられます。

  1 必要な再生工事を行い長寿命化を目指す

  2 近い将来、建替えを行うことで再生する

  3 修繕は必要最小限にとどめ、ある時期が来たら建物を解体し敷地を売却する

 この中で、2の「建替え」は、現状では、かなりの自己負担が必要となるため合意形成が容易でないことが知られるようになりました。3の「敷地売却」は、自らか考えにくい選択肢だと思います。したがって、多くのマンションは、まずは、1の「長寿命化」を目指すことになります。

 ところが、あるマンションは、長寿命化を目指すとしているものの、再生工事には消極的です。年金生活者の反対が強くて修繕積立金の値上げが難しいからです。理事長は、「自分も、値上げに反対する人たちも、後10年だ。再生のことは、次の世代の人に考えてもらうしかない」と言います。これでは問題の先送りです。

 また別のマンションでは、長寿命化を目指し再生工事に積極的に取り組んでいますが、耐震改修だけは、合意形成が難しいので行わないと決めていると言います。耐震性不足のままで、「長寿命化を目指す」と言えるのか不安です。

 高齢化が進んだマンションでは、自分の寿命を超えた未来のために今お金を支出することに対する合意形成の壁は高いのです。

合意形成はますます難しくなる

 マンションでは高経年になると高齢化が進む一方で、区分所有者が入れ替わり、幅広い世代が暮らすようになります。当然、考え方にも隔たりができます。

 あるマンションは、理事長が建替えに熱心でしたが、他の組合員の理解がなかなか得られず、建替えも再生工事も進まない状態でした。建替えを想定していた人は、専有部分のリフォームも控えています。その一方で、1,000万円近い費用をかけてリノベーションをした住戸に若い世帯が入居してくるようになりました。新しい住民は、建替えの検討など寝耳に水です。住戸内は新築同様で、35年の住宅ローンで買ったのです。当然、共用部分にも、もっとお金を掛けて、安全でオシャレなマンションにしてほしいと考えます。

 したがって、建替えにこだわる人、このままでいい人、積極的に再生して欲しい人が混在することになり、それぞれ譲りませんから合意形成に至りません。このままではどちらにも進めず、マンションの居住環境、市場価値を維持するのが難しくなるのではないかと危惧します。

 こうならないために、早めに、自分たちのマンションの将来の方向性を、自分たちで決めることが重要になります。

(著)公益財団法人マンション管理センター 企画部参与 廣田 信子

2020年8月17日 | カテゴリー コミュニティ