10 専有部分への立入り
(1)改正の概要
今回の改正では、「理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分
等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は
専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる」との規定が追加されました
(23条4項)。
(2)実際の留意点
ただし、この立入権が認められる具体例として「災害時等における共用部分に係る緊急的な工事に伴い
必要な場合」や、「専有部分における大規模な水漏れ等、そのまま放置すれば、他の専有部分や共用部分
に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがある場合に限られる」とし、制限的に解釈すべ
きことを注意喚起しています(コメント23条関係①)。
また、このような規定が設けられたからといって、区分所有者が立入りを断固拒否した場合に理事長等
が部屋の鍵をこわして強制的に立ち入ること等が認められたわけではありません。この規定は、区分所有
者と連絡が取れずに立入りの拒否につき確認が取れない場合等であっても、理事長等の判断で合鍵等を手
配して立ち入ることができ、後日その点につき違法性は問われない、という趣旨であると理解すべきでし
ょう。
(著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美