管理基礎講座

【積立金1,200万円を横領の容疑】

 新潟東署は平成25年11月7日、管理組合の積立金を横領したとして業務上横領の疑いで高崎市の契約社員(56)を逮捕した。

 逮捕容疑は、理事長を務めていたマンション管理組合の口座から約1,200万円を横領した疑い。同署によると、契約社員は平成17年9月に理事長に就任し、直後に積立金約2,000万円を横領。さらに、平成21年8月には管理組合名義の債権3,200万円分を換金し、既に横領した積立金約2,000万円の穴埋めに使い、約1,200万円を自分の口座に振り込んだ。

 平成23年11月に理事長退任後、後任の理事長が不自然な経理処理に気付いて平成25年7月、同署に告訴した。

 平成17年に横領した約2,000万円は公訴時効が成立している。印鑑と通帳は、容疑者が一人で保管していた。

 

(岡管連から)

 元理事長が管理組合の積立金を横領したことについて、次のことが言えるのではないでしょうか。

1 2,000万円は公訴時効のため、管理組合は回収できない。

2 その結果、その穴埋めは区分所有者全員が負担し、計画修繕に

  大きな影響が出てくる。

3 容疑者が理事長就任から退任までの期間が約6年3か月という

  長期間、理事長をしていた。

4 その間、総会、理事会等が開催されている。その責任は、

  役員、区分所有者にもその一端がある。

5 その責任の一端として

  ・理事長が印鑑と通帳を一人で同時に管理していたが、

   管理規約等では?

  ・会計担当理事、監事等、複数でのチェックは?

  ・総会への実出席は? 委任状が多いか?

  ・居住者のマンションへの関心は?

  ・計画修繕の大幅な見直しや、修繕積立金の増額が迫られる。

 

 元理事長が修繕積立金等を横領した事案は、岡山のマンションでも表には出ていませんが、過去にもこのような事案があったことをお伝えしておきます。

 修繕積立金等の横領は元理事長の問題だけではなく、管理会社の担当者による横領事件も起こっています。

 マンション(建物・設備等)や生活居住環境などの維持管理に必要な修繕積立金等は、区分所有者の負担の上に成り立っています。一人でも多くの区分所有者や居住者が『マンションへの関心の度合いを高める』ことが、このよう横領事件を防げる手立てではないでしょうか

| 2014年12月23日 | カテゴリー 管理基礎講座 

【基地局設置の『収益事業』に追徴課税された例】

 屋上に携帯電話の基地局を設置しているマンション管理組合が地元税務署の指摘を受け、初めて法人税の確定申告を行った。

 基地局を設置したのが過去5年以前からだったが、時効にかからない5年分を申告するよう指示された結果、追徴課税を受けることとなった。

 「基地局の維持管理に必要な経費」と「共通経費」に関わるすべての資料を持ち込み税務署職員の協議指導を受けた。

 基地局の必要経費の総額(経費計上が認められた支出=管理委託費+通信費+共用部分電気料+共用部分損害保険+防犯費用)が約1,700万円。収益割合=基地局収入÷(管理費の総収入+基地局収入)は7,8%だった基地局の維持管理に必要経費は約133万円(約1,700万円×7.8%)と出た。この経費を携帯会社から受けた300万円から引いたのが所得になる。最終的には、この所得に法人税率(18%)を乗じた約29万円が昨年度の法人税になった。

 この法人税にさらに、事業税都道府県税市区町村税が加わる。

 追徴金は、同様に引き出され過去5年の法人税額に「過少申告課税」15%を加えて、結局5年分の納税額は、約180万円に上り、さらに事業税など諸税分約60万円が加算された(計:約240万円)。

| 2014年12月15日 | カテゴリー 管理基礎講座 

【屋上の携帯基地局5千万円の申告漏れ】

―大阪府の管理組合へ国税局追徴課税!-

 朝日新聞(平成26年9月5日)によると、平成23年に埼玉県さいたま市の大宮税務署では、同市内のあるマンションの基地局収入について5年間で約2千万円の申告漏れを指摘。また、数基のアンテナを置いた大阪府の管理組合では、平成24年までの5年間で、約5千万円の追徴課税を受けたとのことです。大阪府の管理組合は、基地局課税の『制度が周知されていない』と不服審判所に処分の取り消しを求めましたが、請求は棄却されました。

 アンテナは、高い位置に設置され目立ちますから、税務調査は比較的に実施しやすいものと考えられます。税務当局は、今までの経験で調査のノウハウを積む上げている模様で、神奈川県や大阪府などでは無申告が相次いで見つかっているとのことです。

 逆に、管理組合の役員は持ち回りで就くことが多く、収益事業を行わない限り課税されませんから、税務には縁遠くなります。アンテナ敷地賃料を全額、管理費会計や積立金会計に繰り入れている管理組合もあります。

 管理組合は税法上『人格なき社団』などに分類されて、原則非課税ですが、基地局収入のほか、駐車場の外部貸し、集会室収入、太陽光発電、自販機収入、電柱敷地貸し収入などが、収益事業となる場合もあります。専門的なことは、税理士に任せるとしても、基本は理解しておきたいものです。

(岡管連から)

 管理組合が法人または人格なき社団であっても、組合員やマンション居住者からの収入は原則非課税ですが、外部との契約取引により得た収益は、みなし法人税が課せられます。またそれに伴い、法人事業税、法人住民税が課税されることにもなります。

 岡山でも無関係ではなく、『基地局収入』や、今はやりの太陽光発電を導入する場合の『売電収入』の税務処理を管理組合としても検討する必要があるでしょう。

 管理組合では、管理費会計、修繕積立金会計、駐車場会計(特に機械式の場合)、収益会計と、区分経理する必要が出てくるでしょう。なぜなら、税務署による税務調査も念頭に入れた会計処理をする必要があるということを。

 また、収益事業による税金も別途資金手当てしておく必要があるでしょう。通常は会計年度終了後、2カ月以内に納税する必要があります。

| 2014年12月13日 | カテゴリー 管理基礎講座 

【管理組合の監事の役割】

 管理組合の監事監査は、マンション標準管理規約第41条に基づき行われます。

 また、その監査対象は、理事の業務執行の状況(業務監査)と財産及び収支の状況(会計監査)であり、理事の業務執行の適法性及び妥当性、並びに、財産及び収支の状況を表す会計報告書の適正性に関する意見を監査報告書に記載して、管理組合の代表者である理事長に提出する一方、総会においても報告することが必要です。

・マンション標準管理規約第41条

 第1項 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に

     報告しなければならない。

 第2項 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認める

     ときは、臨時総会を招集することができる。

 第3項 監事は、理事会に出席して意見を述べることができる。

・マンション標準管理規約第59条

 第1項 理事長は、毎会計年度の収支決算案を監事の会計監査を経て、通常総会に

     報告し、その承認を得なければならない。

【 監査手続き 】

1 業務監査

  業務監査の目的は、理事の行う業務について、法令や規約等に著しく違反してい

 いか、職務執行に関して不正が行われていないかどうかを確かめることにあります。

  このため、主な監査手続きとしては、理事会に出席し、理事会の運営が適正に行わ

 れているかどうかを検討し、疑問点があれば理事に質問する、あるいは欠席した場合

 でも、事後、理事会の議事録や配布資料を閲覧し、決議事項や審議事項に疑問点がな

 いかや意思決定プロセスに不適切な点がないか検討することなどが挙げられます。

2 会計監査

  管理組合の監査手続きとして強制力のある定まったものはありません。

  現代の監査はその監査対象の取引のすべてを確かめる(精査)のではなく、時間的・

 物理的制約の中で、一部の取引を何らかの基準に基づき抽出して確かめる(試査)方法

 を採用しており、不正・誤謬の発生する可能性が高いと見込まれる範囲に重点をおいて

 監査手続きを実施する『リスク・アプローチ』という考え方に基づいています。

  加えて、不正・誤謬のすべてを発見することを目的に行うのではなく、財務諸表の利

 用者の意思決定を誤らせるような重要な不正・誤謬が生じていないかを確かめることを

 目的としています。

 管理組合の監事監査についても、この考え方に基づき、効率よく、かつ重大な不正・

 誤謬を見逃さないよう監査手続きを実施することが肝要と思われます。

                  (著)公認会計士・税理士 吉岡 順子先生

| 2014年11月09日 | カテゴリー 管理基礎講座 

 マンションの使用や管理等を行うに際し、区分所有者等が守るべきことなどに関して、法律等では次のように規定されている。

・区分所有法6条1項

  区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者

 の共同の利益に反する行為をしてはならない

・マンション管理適正化法4条

 1 管理組合は、マンション管理適正化指針の定めるところに留意して、マンションを

  適正に管理するよう努めなければならない。

 2 マンションの区分所有者等は、マンションの管理に関し、管理組合の一員としての

  役割を適切に果たすよう努めなければならない

・マンションの管理の適正化に関する指針(抜粋)

 『マンションを購入しようとする者は、マンションの管理の重要性を十分認識し、売買

  契約だけでなく、管理規約、使用細則、管理委託契約、長期修繕計画等管理に関する

  事項に十分に留意する必要がある。

 このように分譲マンションが存在するうえで欠かせない建物・設備・敷地などは、区分所有者(購入者)全員の共有物であるのだが、その区分所有者にその認識が薄いため、マンションに関心がない人が多い。

 本来、区分所有者全員の共有物である分譲マンションの管理とは、その管理をするために全員が負担し、共同で管理(共同管理)を行った結果、その恩恵として全員に『共同の利益』をもたらすことが本来の目的である。

 ところが、まったくマンションの管理について『無関心』でいるとどうなるかというと、逆に『共同の不利益』をもたらすことになる。

 岡管連が取り上げている『二つの老い』がまさしくそれであろう。この問題はすぐには表れないが、10年以上経過すると顕著に表われてくる。この二つは、『居住者の高齢化』と、『建物の劣化、設備等の陳腐化・老朽化』の問題である。

 そのマンションの利用者である居住者自身が経年とともに、人間関係が希薄(化)になってくると、『マンション内のコミュニティができない』、『役員の成り手がいない』、『理事会の引継ぎがうまくいかない(任期1年を含む)』など、管理組合(理事会)の運営に支障をきたすだけではなく、ともに住んでいる人の医療・福祉の面などの生活面にも多大な影響を及ぼすことにもつながる。

| 2014年9月27日 | カテゴリー 管理基礎講座 

【国交省令で定める図書等】

 マンション管理適正化法第103条第1項の国土交通省令で定める図書は、次の各号に掲げるもので、工事が完了した時点の同項の建物及びその付属施設(駐車場、公園、緑地及び広場並びに電気設備及び機械設備を含む。)に係る図書とする。

 一 付近見取図

 二 配置図

 三 仕様書(仕上げ表を含む。)

 四 各階平面図

 五 二面以上の立面図

 六 断面図又は矩形図

 七 基礎伏図

 八 各階床伏図

 九 小屋伏図

 十 構造詳細図

 十一 構造計算書

 なお、そのほかとして、一般社団法人マンション管理業協会が交付されるのが望ましいとしている図書は、以下のとおりです。

1 設計図書関係書類

   数量調書、施工地積測量図

2 特定行政庁関係書類

   建築確認申請書(建物・昇降機)、建築確認通知書(建物・昇降機)、検査済証、

   給水設備申請書類等、排水設備申請書類等 他

3 消防関係書類

   防火対象物設置届、防災対象物使用開始届 他

4 機械設備施設竣工調査、取扱説明書

5 専有部分機器取扱説明書

6 専有・共用機器類完成図書

7 近隣電波障害対策工事関係書類(近隣協定書、覚書等)

8 売買契約書関係書類

   売買契約書、重要事項説明書、管理規約原本等(承諾書等(管理委託契約書類

   を含む。)を綴じたもの)、販売図面、パンフレット・チラシ、覚書、

   アフターサービス基準(瑕疵担保責任を含む。)、住宅性能評価基準 他

9 その他

   電気室借室契約書、電柱等土地使用契約書(電力会社、NTT)、

   大規模建築廃棄物保管場所届出書、建築協定書、備品リスト 他

 

| 2014年9月25日 | カテゴリー 管理基礎講座 

【責任のあいまいさ】

 問題は、最後に残った①の新築分譲マンション売買契約である。普通、その売買契約書等は、マンション購入者の金庫等に大事に保管され、特段の事情等がない限り、当該契約書等は、日の目を見ることはほとんどないはずである。

 ところが、ひとたびマンションに瑕疵があることが分かれば、当該契約書等の存在が重要になってくる。当該契約書等には、『瑕疵担保責任に関する保証措置』を記載しているものが少なくないのだ。また、この場合、『設計図書等』も必要になってくる。

 瑕疵担保責任の保証措置の期間であっても、販売会社等が倒産すれば、あるいは当該保証期間の期間が過ぎた場合であっても、特に、以前に取り上げた『建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵』が現実化するようであれば、裁判例からも、施工会社等にも不法行為責任が求められてくる。

 それが分譲マンションの場合、どうも現場では、『その責任があいまい』になっている傾向にある。

 

 ・販売会社:売主(デベロッパー等) ・不動産会社:仲介業 

 ・設計監理:1級建築事務所 ・施工会社:工事の請負 

 ・管理会社:マンションの管理(見守り等)・管理組合:設計図書等の管理

 ・組合員:区分所有者/買主(マンションオーナーの一人)

 

 このようなマンションで生活するうえで、建物・敷地などの共用部分等において、『その責任のあいまいさ』に加えて、そこで住んでいる居住者はどうであろうか。

 分譲マンションの新築入居時に、突然に、不特定の50戸程度の世帯が集合し、マンション住民となり、ひとつの『ミニ自治体(管理組合)』を作るのだが、そこにはすぐに『コミュニティ』が作れないのが実態であろう。

                     以上で、このシリーズは終わる。

| 2014年8月25日 | カテゴリー 管理基礎講座 

【売買契約時の書類】

 ところで、新築分譲マンションの購入予定者が契約する場合どうであろうか。購入予定者が主に行う契約等は、以下のとおりである。

 

 ① 新築分譲マンション売買契約(登記委任等を含む。)

 ② 管理規約等への同意

 ③ 管理委託契約への同意

 ④ ローン契約(担保設定登記委任等を含む。)

 

 マンションを購入する場合、これら①から④に関する書類が作成されるのが、一般的である。

 ①は、主に売買契約時の所有権移転に伴う履行問題ですが、②から④は、主にマンション売買後に関する履行問題となってくる。

 まず、②から④を見ていこう。

 ②及び③については、区分所有法上、マンション購入者(オーナー)が複数集まれば団体(管理組合)を構成することになるのだが、新築分譲マンションの場合、入居時において管理組合の設立総会が開催されない場合が多いので、総会の同意に代わるものとして書面総会とし、マンション購入予定者が全員署名・押印すれば成立する。

 ②の管理規約等は、マンション購入予定者等が本来、一定のルールとして守るべき遵守義務があるのだが、ほとんど目を通していないのが実態であろう。

 ③の管理委託契約は、管理組合と管理会社とのマンション管理についての委任契約であるが、マンション購入予定者は、マンション管理に関心が薄いので、管理会社に任せっきりであり、また契約の内容についてあまり知らないのが実態であろう。

 ④のローン契約は、金融機関との金銭消費貸借に関する履行問題で、契約期間まで毎月一定額の支払い義務があると同時に、新築分譲マンションはその担保として、抵当権が設定されているのが一般的である。

 ①の売買契約については、次回に続く。

| 2014年8月23日 | カテゴリー 管理基礎講座 

【青田売り・青田買いの結果】

 新築分譲マンションを購入しようとする場合、よく見受けられるのが、テレビのCMや新聞のチラシ等で工事着手前あるいは工事着手後に販売会社(売主)等がPR活動を行い、あらかじめ販売会社等が当該モデルルームの展示場を作り、そこに購入希望者を集い案内し、説明、勧誘、事前申し込み、及び契約等を行うことがよくある。

 さらに場合によっては、新築分譲マンションの部屋の位置・間取り等によっては、抽選あるいは先着順である。

これがいわゆる『マンションの青田売り、青田買い』と言われるゆえんである。

 戸建ての新築住宅の場合、各ハウスメーカー合同の展示場を作り、そこに各ハウスメーカーの新築住宅が展示されているので、その場で建物自体を確認でき、他社と比較検討等ができることが多い。

 新築分譲マンションでよく説明等に使われるのが、販売会社等が作成したまだ建物の形のない状態でのパンフレットやチラシなどであるが、それらの写真等は、マンション内部のモデル写真や建物が完成した場合のマンション全体風景のバーチャルな写真であろう。

 このようにまだ建物の形のない状況の中で、不特定多数の購入希望者がまるで競うように、通販やネットなどで物を買うような感覚で、人生一度限りの大きな買い物の契約等をするのであろうか。

 岡山のマンション1棟の平均販売戸数は50戸程度であるが、マンション全体では150人程度の人々が同じ屋根の下で、ある時期から共同生活を送ることになるのである。つまり、この人たちがマンション居住者となるのだが、言葉を換えれば同時に、 『運命共同体』になるともいえるだろう。

                   次回は、『売買契約時の書類』についてです。

| 2014年8月21日 | カテゴリー 管理基礎講座 

 機械式駐車場のピット式の場合、集中豪雨などの際に地下のピットへの浸水に注意しなければならない。

 自動車の浸水被害にあった事例は、枚挙にいとまがない。

 地下のピットに設置された排水ポンプの容量を超える雨水が流入すると、その駐車ピットは水で満たされてします。

 また、排水ポンプが正常に機能しなかった場合にも、同様の事態となる。

 管理組合としては、排水ポンプをきちんと点検しておくことも重要ですし、排水管、排水溝などについてもゴミ、枯れ葉などにより、雨水の流れが悪いかなど、確認しておくことも欠かせない。

 なお、集中豪雨の際の自動車浸水事故は通常、管理組合が加入しているマンション保険(施設賠償責任保険を含む。)では補償されないので、注意する必要がある。唯一有効なのは、自動車所有者が加入する車両保険です。

 機械式駐車場本体の通常保守は、機械式駐車設備メーカーや専門業者が行うが、排水ポンプの点検は、マンションの設備点検の範囲内で実施することとなる。

| 2014年7月31日 | カテゴリー 管理基礎講座