管理基礎講座

13 標準管理規約の改定に伴った管理規約の改定における留意点

(1)改正標準管理規約の内容を導入するには

   今回の標準管理規約の改正では、最近の管理組合が抱える課題に対処するための様々な措置が講じられ

  ました。しかし、標準管理規約は法令ではなく、各管理組合が管理規約を制定、改正する際の参考として

  示されているものです。したがって、今回の改正内容を実際に管理組合で導入するためには、各自の管理

  規約を改正しなければなりません。

(2)改正手続き

   管理規約の改正は、総会の特別多数決議(区分所有者および議決権数のそれぞれ4分の3以上の賛成)

  によります。また、建物の維持管理や管理組合運営の基本となる規約を改正するわけですから、改正内容

  は全ての区分所有者に分かるように、議案書の作成に配慮したり、必要に応じて説明会を改正することな

  ども検討すべきでしょう。規約の改正が有効かつ手続き的に瑕疵がないように、マンション管理士等の助

  言等を求めながら慎重に手続きを進めることが大切です。

   また、総会決議によって規約の改正がなされれば、その内容を全区分所有者に周知するとともに、改正

  後の管理規約の全文を各区分所有者に配布しておくことも大切です。

                           (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年3月15日 | カテゴリー 管理基礎講座 

11 駐車場の使用方法等

   略

12 書類の保管・情報の提供

(1)理事長が保管すべき書類の追加

   今回の改正では、「長期修繕計画書」、「設計図書」および「修繕等の履歴情報」が追加されたところ

  です(64条2項)。

(2)書面の交付または電磁的方法による情報提供

   今回の改正では、「書面の交付又は電磁的方法による情報提供」が新たに規定されました。これは、組

  合員または利害関係者から、提供を求める情報と情報提供の理由を付した請求書面等を提出等してもら

  い、理事長がその請求内容に基づく情報を記載した書面等を、請求者に交付するというものです。そして

  この場合の費用は、交付の相手方に負担させることができるとしています(64条3項)。この方法によ

  り提供することが想定される情報には、大規模修繕工事の実施状況や今後の予定、ペットの飼育制限等が

  考えられますが、その範囲については、個々のマンションにおいて、交付の相手方に求める費用等とあわ

  せ、細則で定めておくことが望ましいとされているところです(コメント64条関係⑤)。

                           (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年3月13日 | カテゴリー 管理基礎講座 

10 専有部分への立入り

(1)改正の概要

   今回の改正では、「理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分

  等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は

  専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる」との規定が追加されました

  (23条4項)。

(2)実際の留意点

   ただし、この立入権が認められる具体例として「災害時等における共用部分に係る緊急的な工事に伴い

  必要な場合」や、「専有部分における大規模な水漏れ等、そのまま放置すれば、他の専有部分や共用部分

  に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがある場合に限られる」とし、制限的に解釈すべ

  きことを注意喚起しています(コメント23条関係①)。

   また、このような規定が設けられたからといって、区分所有者が立入りを断固拒否した場合に理事長等

  が部屋の鍵をこわして強制的に立ち入ること等が認められたわけではありません。この規定は、区分所有

  者と連絡が取れずに立入りの拒否につき確認が取れない場合等であっても、理事長等の判断で合鍵等を手

  配して立ち入ることができ、後日その点につき違法性は問われない、という趣旨であると理解すべきでし

  ょう。

                           (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年3月11日 | カテゴリー 管理基礎講座 

9 修繕

(1)大規模修繕等にかかる情報の閲覧

   今回の改正では、理事長は、組合員または利害関係人の理由を付した書面または電磁的方法による閲覧

  請求があったときは、これらの書類を帳票類と同様に閲覧させなければならないとしました(64条2

  項)。

   また、書類の閲覧に代えて、「書面の交付または電磁的方法による情報提供」の方法を採ることも可能

  とされています。そして、これらの書面は、優良なマンションの管理が行われていることによる市場での

  評価の高まりや、そのような評価を通じて管理の適正化が促されることが想定されることから、「書面交

  付の対象者に住戸の購入予定者を含めて規定することも考えられる」としているところです(コメント6

  4条関係⑥)。この取扱いを採用すれば、これからマンションの住戸を購入する者も、大規模修繕工事の

  実施状況や予定、修繕積立金の積立て状況などの情報を得ることができることになります。

(2)専有部分の承前の際の手続き

   今回の改正では、専有部分の修繕等を3つに分け、それぞれの手続きを整理し、理事長の承認を要する

  工事の具体例などについても示しているところです。

   なお、理事長の承認が求められるケースでは、理事長の承認または不承認は、理事会の決議により決定

  しなければなりません(17条3項、54条1項5号)が、この場合の理事会決議は理事の過半数の承諾

  があるときは、書面または電磁的方法によることができるとされています(53条2項)。

   また、理事長が承認をしたからといって、その承認により、修繕等の工事の結果共用部分や他の専有部

  分に生じた事後的な影響について、当該工事を発注した区分所有者の責任や負担が免除されるわけではあ

  りません。そこで、修繕工事の後にその工事により共用部分や他の専有部分に影響が生じた場合は、当該

  工事を発注した区分所有者の責任と負担により必要な措置をとらなければならないことが、確認的に規定

  されました(17条6項、コメント同条関係⑪)。

(3)防犯、防音、断熱等のために実施する窓枠等共用部分の修繕工事

   今回の改正では、まずは計画修繕としての実施を検討するという大原則は踏まえつつも、それができな

  い場合は、細則を定めることを前提とすることなく、区分所有者は専有部分の修繕と同様の手続きで実施

  ができるものとし(22条3項)、かつ、その承認申請の対象範囲や承認の可否の際に検討すべき事項等

  の考え方が、「別添2」として示されました。

                           (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年3月09日 | カテゴリー 管理基礎講座 

8 暴力団排除の措置

(4)敷地内での暴力行為や威嚇行為の禁止

   敷地内での暴力行為や威嚇行為については、これまでも共同利益背反行為として対応することが可能で

  あると解されていましたが、今回の改正ではその点を明らかにすべく、コメントで、これらの行為は共同

  生活の秩序を乱す行為(67条1項)や共同利益背反行為(区分所有法6条)等に該当するものとして、

  「法的措置をはじめとする必要な措置を講じることが可能であると考えられる」と明記されました。

(5)役員や総会での代理人資格の制限

   管理組合の円滑な運営を保持するため、今回の改正では、暴力団員または暴力団員でなくなった日から

  5年を経過しない者は役員とはなれない旨が規定されました。また、総会での組合員の「代理人の欠格事

  由として暴力団員等を規約に定めておくことも考えられる」としています。

(6)警察当局等との連携

   なお、以上の必要な措置の実行に当たっては、「暴力団関係者かどうかの判断や、訴訟等の措置を遂行

  する上での理事長等の身の安全の確保等のため、警察当局や暴力追放運動推進センターとの連携が重要で

  あり、必要に応じて協力を要請することが望ましい」とされています。

                           (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年2月13日 | カテゴリー 管理基礎講座 

8 暴力団排除の措置

(1)基本的な考え方

   マンション内に暴力団事務所が入っていたり、管理組合の運営等に暴力団が関与することは、他の区分

  所有者の平穏な生活が害されたり、マンションの適正な管理に悪影響を及ぼしかねません。

   そこで、今回の改正では暴力団の排除に関し、次のような取扱いが示されたところです。

(2)専有部分の用途の制限

   今回の改正では、暴力団事務所としての使用や暴力団員を反復して出入りさせる行為等があった場合に

  は直ちに規約違反行為と評価できるようにするため、専有部分の用途において、「暴力団事務所としての

  使用や、暴力団員を反復して出入りさせる等の行為について禁止する旨の規定を追加することも考えられ

  る」としています。

(3)取引の制限

  ①賃貸借の制限

   今回の改正では、区分所有者が第三者に専有部分を貸与する場合には、契約の相手方に暴力団員ではな

   いことなどを確約する誓約書を管理組合宛てに提出させるとともに、賃貸借契約に以下の定めをするこ

   とを、暴力団員への貸与を禁止する場合の規約の規定例として示しています。

   ア 契約の相手方が暴力団員ではないこと及び契約後において暴力団員にならないことを確約するこ

     と。

   イ 契約の相手方が暴力団員であることが判明した場合には、賃貸人たる区分所有者は催告なく契約を

     解除できること。

   ウ 区分所有者がイの解約権を行使しないときは、管理組合は、区分所有者に代理して解約権を行使す

     ることができること。

  ②賃貸借契約の解除等

  ③売買の制限

・・・・・次回につづく

                           (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年2月11日 | カテゴリー 管理基礎講座 

7 管理費等の滞納者に対し取り得る措置

(1)滞納管理費等回収の手続き

   管理費の滞納は、管理組合の円滑な運営を阻害し、マンションの適正な管理の維持と資産価値の保持に

  多大な影響を及ぼす恐れがあり、適切な滞納管理費等の回収は、管理組合として積極的に取り組む必要が

  あります。

   そこで、今回の改正では、管理組合が管理費等の滞納者に対してとり得る各種の措置について段階的に

  まとめたフローチャートおよびその解説が、別添3として提示されたところです。

(2)回収に要する費用

   また、今回の改正では、滞納管理費等の徴収に係る費用等についても、次のような考え方が示されまし

  た。

  ①遅延利息について

   管理費等の債務の履行が遅れれば、遅延利息が発生します。これまでは、滞納の場合の遅延利息がどの

  程度まで許容されるかについての明確な記載はありませんでした。今回の改正では、管理費等の意義に加

  え、その滞納はマンションの資産価値や居住環境に影響し得ること、手間や時間コストなどの回収コスト

  が膨大となり得ること等から、「利息制限法や消費者契約法等における遅延損害金利率よりも高く設定す

  ることも考えられる」としています。

  ②違約金としての弁護士費用・督促徴収費用について

   滞納管理費等の回収のためには一定のコストがかかります。これまでも違約金としての弁護士費用並び

  に督促および徴収の諸費用は、滞納管理費等に加算して組合員に請求できる旨が規定されていました。今

  回の改正で、これらについては「請求しないことについて合理的事情がある場合を除き、請求すべきも

  の」との考え方が示されたところです。

                           (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年2月09日 | カテゴリー 管理基礎講座 

6 コミュニティ形成活動について

(1)基本的な考え方

   これまではコミュニティ形成活動を管理組合の業務と位置付け、当該業務に要する費用も管理費の支出

  項目として認めていました。しかし、この「コミュニティ形成活動」が具体的に何を示すのか必ずしも明

  らかではなく、任意加入の組織である自治会・町内会活動との関係などからトラブルが生じることもあり

  ました。

   そこで、今回の標準管理規約の改正と併せて改正された「マンションの管理の適正化に関する指針」の

  中で、「コミュニティ形成は、日常的なトラブル防止や防災減災、防犯などの観点から重要なものであり

  」、管理組合はコミュニティ形成に積極的に取り組むことが望ましいとしたうえで、改正標準管理規約で

  その活動につき次のように整理されました。

(2)管理組合の業務として許容されるコミュニティ活動

   今回の改正では、これまでコミュニティ活動としてとらえられていた業務のうち、「例えば、マンショ

  ンやその周辺における美化や清掃、景観形成、防災・防犯活動、生活ルールの調整等で、その経費に見合

  ったマンションの資産価値の向上がもたらされる活動」は、区分所有法3条の管理組合の目的である「建

  物並びにその敷地及び附属施設の管理」の範囲内で行われる限り、管理組合が行うことは可能であるとの

  考え方が示されました。

(3)管理費の使途

   これまでは、「地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用」は管理費か

  ら支出さることができるとされていました。

   しかし、今回の改正で管理組合が行うコミュニティ活動の範囲が限定されたことに伴い、管理費の使途

  を定めた規定から当該項目が削除され、代わりに上記(2)に掲げた業務に要する費用についてのみ、

  「その他第32条に定める業務に要する費用」として管理費から拠出できるものと整理されました。

(4)自治会等と管理組合との連携

   ただし、加入者がおおむね重なるなかで、1つのマンションで自治会費等と管理費等とを全く別々に徴

  収することは非効率であり、居住者にとって多大な手間となることがあります。そこで、両者を適切に峻

  別し、代行徴収にかかる負担の整理が行われるのであれば、自治会費等の徴収を管理組合が代行すること

  は差し支えないとの考え方が示されたところです。

                           (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年2月07日 | カテゴリー 管理基礎講座 

5 災害発生時の応急的な修繕に係る意思決定ルール

  本来管理組合の意思決定は、総会決議でなされます。

  しかし、災害等が発生したときには、組合員や役員の所在が不明となったり、会議に参集することが困難

 となったりして、通常の意思決定システムが機能しないケースが想定されます。

  そこで今回の改正では、災害等が発生し応急的な修繕工事の実施が必要となった場合の意思決定システム

 として、次のような対応が規定されました。

 ① 原則は理事会の承認

   今回の改正で、災害等により総会の開催が困難である場合には、給水・排水、電気、ガス、通信といっ

  たライフライン等の応急的な更新等の応急的な修繕工事等を、理事会の決議で実施することができるとし

  ました。そして、当該工事を実施するために必要な資金の借入れや、修繕積立金の取崩しに関しても理事

  会決議で行うことができるとしているところです。

 ② 理事長による対応(①ができないとき)

   しかし、役員が集まれないなどで理事会の開催すら困難な場合には、保存行為を超える応急的な修繕行

  為の実施までを理事長単独で判断し実施できるとし、その費用の限度額を規約で定めておくという考え方

  が示されています。

 ③ 区分所有者による対応(①・②ができないとき)

   さらに、災害等の場合には、理事長も対応できない場合も考えておかなければなりません。

   区分所有法では、「保存行為」については各区分所有者がそれぞれ実施することができる旨規定されて

  いますが、各区分所有者が独自の判断で保存行為ができるとすると、保存行為の範囲が不明確であること

  と相まって、過剰な対応により他の区分所有者の意向に反してしまい、後日の紛争となりかねません。

  応急的な修繕工事であればなおさらその危険が高まります。

   そこで、今回の改正では、「あらかじめ定められた方法により選任された」区分所有者等の判断によ

  り、保存行為や応急的な修繕行為を実施できる旨を規約で定めておくという考え方も示されました。

                           (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年1月21日 | カテゴリー 管理基礎講座 

4 総会について

(1)議決権割合

   今回の改正では、高層階と低層階での眺望等の違いにより住戸の価値に大きな差が出る場合も想定し

  て、新築物件につき、総会の議決権(および分譲契約等によって定まる敷地等の持分割合)を、専有部

  分の階数(眺望、日照等)、方角(日照等)等を考慮した「価値の違いに基づく価値割合を基礎として、

  議決権の割合を定めることも考えられる」とされました。なお、これは「新築時」の価値の相違に基づ

  くものであって、事後的な変化(例えば、前方に建物が建築されたことによる眺望の変化等)による議

  決権割合の見直しは、「原則として行わない」とされていることにも注意が必要です。

(2)委任状・代理による議決権行使

   総会が管理組合の最高の意思決定機関であることからすれば、組合員本人が自ら出席して、議場での

  説明や議論を踏まえて議案の賛否を直接表示することが本来の姿です。やむを得ずに出席できない場合

  には議決権行使書を優先的に考慮し、それもかなわないときに代理人による議決権行使を検討するとい

  う考え方はこれまでと変わりありません。

   そのうえで、今回の改正ではこれまで定めがなかった代理人の範囲について、代理人は、区分所有者

  としての組合員の意思が総会に適切に反映されるよう、区分所有者の立場から見て利害関係が一致する

  と考えられる者に限定されることが望ましいとし、代理人の資格を次の者に限定する旨の規定が新たに

  設けられました。

  ① 代理人により議決権を行使しようとする組合員の配偶者(婚姻届けを提出していないが事実上婚姻

   関係と同様の事情にある者を含む。)、または一親等の親族(親・子)

  ② 代理人により議決権を行使しようとする組合員の住戸に同居する親族

  ③ 他の組合員

  ④ 代理人により議決権を行使しようとする組合員の法定代理人(成年後見人、財産管理人、区分所有

   者が未成年の場合の親等)

   また、これらに加えて暴力団排除の観点から、「代理人の欠格事由として暴力団員等を規約に定めて

  おくことが考えられる」としています。

                          (著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美

| 2017年1月19日 | カテゴリー 管理基礎講座 

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