【品確法と瑕疵担保責任】
1 瑕疵担保責任の特例
品確法は、民法に定める瑕疵担保責任に関しての特別法(住宅に限る)である。民法に定める瑕疵
担保責任の内容は、次の通りです。
① 工事請負契約における請負人の瑕疵担保責任の存続期間は、木造建物又は地盤の場合には引渡し
から5年間、石造り、土造り、レンガ造り、コンクリート造り、金属造りその他これらに類する
構造の工作物の場合には、引き渡しから10年間。
② 売買契約における売主の瑕疵担保責任の存続期間は、瑕疵を知ったときから1年間。
③ ①、②のいずれの期間も当事者間の合意によって、短縮することができる。
④ 売主の瑕疵担保責任の内容は、損害賠償義務に限られ、瑕疵修補義務を負わない。
これに対して、品確法では、次のような特例を定めている。
① 住宅を新築する工事請負契約の場合(増築・改築は含まず)、『住宅のうち構造耐力上主要な
部分又は雨水の侵入を防止する部分として政令で定めるもの』(『構造耐力上主要な部分等』)の
瑕疵については、請負人は、引渡しから10年間、民法634条に定める瑕疵担保責任(瑕疵
修補義務、損害賠償義務)を負う(品確法94条1項)。
② 新築住宅(マンション)の売買契約の場合、売主は、構造耐力上主要な部分等の瑕疵について、
引渡しから10年間、損害賠償義務及び瑕疵修補義務を負う(品確法95条1項)。
③ ①及び②に反する特約で、注文主又は買主に不利なものは、無効とする(品確法94条2項、
95条2項)。
もっとも、新築住宅(マンション)の売買契約の場合でも、売主の瑕疵担保責任は、瑕疵を知った
ときから1年で消滅するという民法の規定は、そのまま適用される(②の引渡しから10年間という
存続期間と重複して適用される。)(品確法96条3項)。
2 『構造耐力上主要な部分等』とは
請負人又は売主が品確法によって10年間の瑕疵担保責任を負うのは、『住宅のうち構造耐力上
主要な部分又は雨水の侵入を防止する部分として政令で定めるもの』の瑕疵である。
『構造耐力上主要な部分』とは、『住宅の基礎、基礎杭、壁、柱、小屋組み、土台、斜め材
(筋かい、方づえ、火打ち材その他これらに類するものをいう。)、床版、屋根版又は横架材
(はり、けたその他これらに類するものをいう。)で、当該住宅の自重若しくは積載荷重、積雪、
風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の振動若しくは衝撃を支えるもの』をいう(品確法施行令
5条1項)。
『雨水の侵入を防止する部分』とは、『住宅の屋根若しくは外壁又はこれらの開口部に設ける戸、
枠その他の建具』及び『雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、当該住宅の屋根若しくは
外壁の内部又は屋内にある部分』をいう(品確法施行令5条2項)。
【管理組合へのアドバイス】
品確法が適用される住宅(マンション)でも、すべての瑕疵について瑕疵担保責任の期間が10年に
延びているわけではないことを、管理組合として認識しておく必要がある。構造耐力上主要な部分又は
雨水の侵入を防止する部分に当たらない箇所に生じた瑕疵については、瑕疵担保責任の存続期間を10
年未満と定めた契約も有効ですので、管理組合として、売買契約書等を再確認する必要がある。
管理組合としては、売買契約書等を再確認したうえで、瑕疵担保責任には存続期間があるので、建物
の不具合に気づいたら、速やかに、売主に瑕疵の内容を通知して、補修を請求すべきである。売主が直
ちに補修に応じない場合には、後日証拠となるように、配達証明付内容証明郵便で通知及び補修請求を
すべきである。
また、表面から見ただけでは分からない瑕疵もあるので、建築士に調査をしてもらい、早期に瑕疵の
有無を確認してください。特に、生命、身体及び財産に関わる建物としての『基本的な安全性が欠ける
瑕疵』については、管理組合として、早急な対応が求められる。
*「住宅建築トラブル相談ハンドブック」(新日本法規)より