滞納管理費等問題

「意図的滞納型」への対策

1 区分所有者変更手続きをしっかりと履行すること

  管理規約には、区分所有者の変更について、大部分は、書面を提出する義務を、売却等で所有権を失った

 人、または、購入・競落・相続等で新たに所有権を取得した人の双方に課しています。

  ところが、かなりの管理組合で、この所有権の得喪時の書面が完備していません。

  特に、競売・公売時の新たな取得者を把握していない管理組合が多いのに驚きます。

  管理会社がついていても、気づかなかったという無責任な例もあります。

  競売・公売時には、必ず事前に裁判所等から対象の物件調査が入り、滞納管理費等を聴かれるはずです。

  その時、しっかりと、裁判所・行政の事件番号、連絡先を書き留め、名刺ももらい、理事会と管理会社の

 共通認識にしておくことが大切です。

  滞納額については、所定の「債権届出書」をきちんと提出しましょう。

  どうせ抵当権が優先で管理組合に配当されないからと、滞納管理費等はこれだけですと書いたメモみたい

 な物だけ出すのはいけません。

  所定の債権届出書をきっちり出しておけば、競売手続きが取り下げられない限り、時効中段の効力もあり

 ますから、債権届出書は大切なのです。当然に控えもとっておきます。

  そして、時々、事件がどの程度進行しているか担当部署に連絡して、競落期日を押さえておいて、当日競

 落できたら、競落人は会社か個人か、その商号や名前、住所、電話番号、担当者名を直ちに把握すること

 です。

  そして、こちらから競落人にすぐに連絡し、最新の管理規約、細則等一式、必要提出書類一式、前区分所

 有者の滞納管理費等総額の支払請求書、当月分からの管理費等内訳と振込先、引落し口座の設定関係書類を

 交付または送付し、直ちに『新区分所有者届』を提出してもらいます。

                         (著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子

| 2016年12月17日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

「意図的滞納型」の現状

 管理組合の管理に対する不満から、当分の間管理費等を払わないという人の場合は、不満の解消(実はこれが大変ですが)があれば、支払ってくれます。

 今回は、競売や公売で競落した職業的というか困った競落専業者について検討していきます。

 競落した人は、裁判所や役所で競売・公売記録をよく見て、滞納管理費等がいくらあるかをしっかり把握しています。

 競落価格は、滞納分を考慮してはじき出されているから安いのです。

 しかし、代表的な「意図的滞納型」の言い分は、「前所有者の分までなんで支払わなければいけないんだ。そんな話は聞いてない。前の滞納分まで支払えと組合が難癖をつけるから、今後一切管理費等は支払わない。」です。

 しかも、一方では、ちゃっかりと競落物件について賃借人をインターネットで募集して、賃借人には、「管理組合に一切賃貸借契約を見せるな、賃貸人、賃借人の名前を明かすな。」と厳命して、管理組合が、競落者や居住者に名前を登録するようにどんなに言っても、全く無視です。

 賃借人の子供に名字や学校名を尋ねても、「知らない人に言えない。」とまで言われてしまう有様です。

 勿論、賃借人は用心して、表札などは出しませんし、駐車場や駐輪場の契約は締結しません。

 したがって、管理組合は、賃貸債権の差し押さえもできません。

 当事者の特定に時間がかかりあっという間に数年経過してしまいます。

 この場合、管理組合が取れる手段としては、競売しかありません。競売申立てには、印紙郵券以外に、予納金が、だいたい60万円前後かかりますから、管理組合は、このような意図的滞納者から、踏んだり蹴ったりの被害を被ります。

                         (著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子

| 2016年12月15日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

「じり貧型」への対策

2 本人が、認知症または精神疾患のため対話ができない場合

  この頃多いのが、本人が一人暮らしで、しかも、認知症または精神疾患が疑われ、管理組合側と本人との

 コミュニケーションがとれない場合です。

  この場合、管理費滞納云々ではなく福祉的観点から、万一何かあったら困るからという理由で、地域包括

 センター、保健所、交番など、老人福祉や精神福祉の役所の機関に相談を持ちかけます。

  そして、居宅訪問に行ってもらっていくうちに、家族が来たり、全く身寄りがないことが分かり、現在の

 住戸から然るべき施設に入れてもらい、後見人などが選任されて、家族や後見人と話し合いができたりし

 て、事態が打開されることがあります。

3 本人は、働いているらしいがほとんど帰宅しないが不在で、連絡がつかない場合

  郵便物が貯まっていてポストから溢れているなら、住民票を取って見て、変化がないか確認します。

  連絡先が分かれば、そこに滞納管理費等支払の督促書を送るとか、本人の電話番号を聞き出して、何とか

 話合いで解決するよう努力してみることです。

  また、パイプスペースを開けてみて、ガス、水道、電気が止められていたなら長期間不在です。

  さらに、登記簿を見て、税金滞納により差押えされているとか、第三者から仮差押えや競売申立てがなさ

 れていないか確認しましょう。

                         (著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子

(岡管連から)

 長寿社会では、『認知症の問題』が社会に大きな影を落とすと言われています。

 特にマンションの場合、『認知症の問題』が自分自身の問題ではすまなく、管理組合の運営にとって、大きな支障をきたすと言われています。

| 2016年12月13日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

「じり貧型」への対応

1 本人が管理組合と対話できる場合

 ① 話合いによる臨機応変な滞納金徴収

   本人や家族が管理組合の請求や催告書、自宅訪問に対応してくれるならまだ脈がありますから、ここで

  管理組合は、先ず、本人の滞納の言い分に耳を傾けましょう。

   その時、高飛車に「管理費等は支払う義務があるから支払わないなら裁判にかける。」といった強硬な

  発言は禁物です。

   始めから他人に窮状や収入額を話さないのは当たり前で、ゆっくり世間話から始め、心を開いてもらわ

  ねばなりません。

   その話の中で、収入源か、年金なのか、仕送りなのか(誰からかも)、預貯金の切崩しもしているか、

  生活保護を受けているのか、アルバイトか、派遣社員か、勤務先はどこか、失業中か、営業している場所

  ・名称・店名は何か、家族構成はどうか、健康状態はどうか、別に住まいを持っているか、万一の場合に

  息子・娘等連絡できる人はいるか、その氏名や連絡先などの情報をできるだけ多く引き出して、その人の

  全体像の把握に努めます。

   何回か会って、じっくりその人と話ができたら、1歩前進です。

 ② 滞納予備軍の対策

   老齢になると、収入と支出がアンバランスなのに将来を予測し見極めがつかない人が多くなり、数年後

  は滞納者になることが見込まれる、いわゆる滞納予備軍が増えてきました。そうなる前に管理組合は手を

  打たなければなりません。

   この打開策は、当該者に今よりもっと狭い部屋に移転していただき、その方の毎月の支出額を減らし

  て、生活破綻者とならないようにすることです。

   この場合、一人で動けて、頭もそれ相当に働き、印鑑証明が取れること、住居移転に必要な諸費用捻出

  の余力があることが条件となります。

   そういうシミュレーションを実行するには、信頼関係が成り立ち、収入と支出、動かせるお金の有無と

  額の把握がある程度必要です。

   その上で、予備軍の方に、部屋の売却や賃貸を決意していただくのです。

   管理組合の役目は、共用部分の物理的管理だけという見解もありますが、面倒ですが総て滞納防止につ

  ながりますので、急がば回れです。

                         (著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子

(岡管連から)

 長寿社会では、夫婦二人の年金で十分に生活ができていても、どちらか一方が、大病に陥り長期入院、あるいは施設等に入所、また先立たれた場合、生活ができなくなることが指摘されています。

 これがいわゆる『老後破産』です。

 特に、高齢の区分所有者の場合、生活費に加えて、『管理費等』が別途、必要になってきて、『老後破産』にさらに拍車がかかることが指摘されています。

| 2016年12月11日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

なぜ滞納が起きるのか

1 最も多いのは、区分所有者が高齢となり、年金生活だけではやりくりが苦しくなり、その上、成人病や

 認知症にかかって入院費や治療費が嵩んでしまい、お金が足りなくなったとき、本人に痛みが一番少ない

 よう管理費等の支払を後回しにしてしまう「じり貧型」です。

  比較的若い人でも、失業したり、事業が上手くいかないなど、やむなく生活に最も響かない管理費等の

 支払を削り、生活しようとします。

2 対極的なのが、「意図的滞納型」です。

  これは、競売や公売による落札者が、最初から、賃貸で家賃を稼ぎ、管理組合から法的手続きにより

 追い出されるまで絶対に管理費等を支払わないと、当初から意図して滞納する場合です。

                        (著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子

(岡管連から)

 岡管連では、マンションの「二つの老い」と「管理費等の滞納」は、「表裏一体の関係」だと考えています。

 老夫婦二人でのマンション生活が、一方が大病したり、あるいは先立たれたりした場合、生活ができなく恐れが出てきます。

 これが『老後破産』といわれるものです。

 また認知症などにより、金銭管理ができなくなったりする恐れがあります。

 加えてマンションの経年に伴って、役員のなり手がいなく、建物等の維持管理が難しくなってきています。

| 2016年12月09日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

【管理放棄につながる危険】

3 無責任になる恐れ

  次に問題なのは、管理組合の放棄につながりかねないことだ。

  理事会は滞納の回収はしなくてもよいから無責任になる。

  組合員も管理費を払わなくても支障はないと誤解してモラルハザードを招くことになる。

  実はシステムが保証しても組合員の管理費支払い義務は残っているのだが、その取立てでトラブルが

 発生する恐れもある。

  滞納対策に王道はない。日常的に理事会が組合員との接触をつとめ、きちんとした督促で滞納を予防、

 早期解決すること、長期の滞納には専門家の力も借りて、必要な法的対策もとることなどが基本である。

  そのことを正確におこなうこと管理組合の管理の質を向上させることにもつながる。

(岡管連から)

 滞納管理費等が長期化する恐れがある要因として、次の3点が挙げられます。

① 役員の任期が1年であることが多く、問題が先のばされている。

② 管理会社任せの管理組合が多い。

③ 組合員自体も管理に関し、あまり関心を持っていない。

| 2015年6月25日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

【管理放棄につながる危険】

2 費用負担が増える

  この点では、管理組合として実態を、冷静によく検討することが求められる。一番重要なのは、管理組合

 にとって費用負担が増えることである。

  管理費、修繕積立金各1万円、100戸のマンションならば、保証料が3.5%だとすれば、年間の保証

 料は84万円になる。

  実は管理組合の管理費等で回収不能となって債権を放棄する例はほとんどない。

  『管理費保証』の宣伝文句に『3か月以上の滞納のある管理組合は37%』などとあるが、これは1件で

 も該当例のある管理組合の比率であって、滞納総額でも1%以下という水準である。

  債権放棄の例はないわけではないが、年間に84万円も毎年続けて取り立てをあきらめるなどのケースは

 ない。

  これは、マンションの管理費の滞納分は、区分所有法で次の持ち主にも継承される規定があるので、回収

 不能になる確率がきわめて低いからである。

(岡管連から)

 管理費等の滞納問題は、区分所有者全員に及び管理組合の問題となります。滞納管理費等に関し無関心、放置等しておくと、それは以下の点などから、『管理不全マンション』などにつながってくる恐れがあります。

① 100戸程度のマンションの場合、修繕積立金が10年ほどで1億円程度積み立てられ、仮に前述の例で

 1%であっても滞納総額は、100万円程度になる。絶対額ではかなりの金額になる。

② 管理費等の滞納金銭債権の消滅時効は5年であり、5年を超えた部分は回収不能の可能性がある。

③ 管理費等の滞納があるマンションでは、計画修繕等に支障が出てくる。

④ 管理費等の滞納があるマンションでは、区分所有者間で不公平感が出てくる。

⑥ 上記の問題が継続的に常態化してくると、マンションそのものの資産価値が低下し、中古マンションとし

 て売却も難しくなり、賃貸化又は空室化に拍車をかける。

| 2015年6月23日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

【管理放棄につながる危険】

 マンションの管理、運営の基本の一つは、管理費と修繕積立金を確実に集め、日常の必要経費と将来の修繕に支障のないように備えることである。

 しかし、管理費などの滞納に悩む管理組合は多い。特に理事が1年で全員交代する管理組合、管理会社にすべてを任せて管理(『一括委託管理』)に関心の薄い管理組合では、有効な滞納対策もなく、苦慮している。

1 『管理費保証』とは

  そこを狙って、最近、滞納対策として『管理費保証』をうたうシステムが新たに登場、滞納回避のため

 の予防策だと宣伝している。

  このシステムとは、毎月一定額の保証料(管理費等の3.5%程度)を払えば、滞納分をシステムが

 代わって管理組合に支払う。

  したがって、滞納分の集金はシステムが担当するから、管理組合は滞納に対する督促などの業務から

 解放されるというものである。

  このシステムは、賃貸住宅では以前から行われていた『家賃保証会社』のやり方をマンションに取り

 入れたもので、家賃に代わって管理費等を保証するというものである。

  しかし、これには実は重大な落とし穴がある。滞納対策への有効な手段どころか、問題点も多く、

 管理組合運営の一層の障害になりかねない危険を含んでいる。

                               (注)カッコ書きは、こちら側で記載。

(岡管連から)

 この『管理費保証』は家賃保証とは違い、区分所有者全員に及ぶものです。

 毎月の保証料が3.5%とすると、当初から、滞納分を想定してシステム会社に支払うということは、100戸のマンションの場合、実質的に3.5戸分の管理費等が管理組合に入ってこないのと同じです。

 特に、『一括委託管理契約』を管理会社と締結している管理組合の場合、1戸~3戸の滞納管理費等があっても管理組合として、黙認又は放置していて、何も対応を取らないことにも繋がります。

 外から見れば、いわば『管理不全マンション』ということになるでしょう。

 それから、滞納の割合が5%以上になってくると、システム会社も採算が合わなくなってくるので、保証料を上げるか、契約を打ち切るかになってくるでしょう。

 その場合、管理組合として、本来のマンションの維持管理に支障をきたすことになるでしょう。

| 2015年6月21日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

【管理経費不払いによる59条競売】

―山下・渡辺法律事務所 弁護士渡辺 晋―

 管理経費不払いへの対応は、管理組合業務における重要な課題です。管理経費を払わない区分所有者の資産状況が著しく悪化しているときは管理組合の財政に及ぼす影響は重大ですし、また、不誠実な区分所有者が確信的に不払いを続けるときには、管理組合の財政的基礎が害されるだけではなく、多くの煩雑な管理組合業務が必要となります。一部の区分所有者の不払いを放置するならば、マンション全体のモラルを低下させることにもなりかねません。

 区分所有者がほかの区分所有者の共同生活の基盤を脅かしている場合、区分所有法(以下、法)には、これに対する対抗手段として、競売請求という制度が準備されています(法59条1項、以下、59条競売)。管理経費を支払わない区分所有者について、59条競売が利用されることもあります。

 ただ、59条競売は、裁判所の助力を受けて、強制的に区分所有者を排除してしまう強力な制度です。多額で長期の不払いに対して効果的である反面、要件が厳格であって、軽々に利用できるものではありません。

 管理経費の不払いに対してこの請求を肯定した東京地裁平成24年9月5日判決は、具体的に無剰余{買受可能価額が、差押債権者の債権に優先する債権(優先債権)と執行費用のうち共益費用であるもの(手続費用)の見込額の合計額に満たないことをいう。}となる見込みが高いかどうかを検討したうえで、滞納期間3年以上、滞納額100万円超、今後滞納額が累積していく見込みであるという事実関係のもとでは、不払いがマンションの管理費・修繕積立金の予算額合計からみるとわずかの割合を占めるに過ぎないとしても、59条競売請求を認めました。今後、59条競売請求が認められるかどうかを検討する際に、参考になる判断ということができます。

(岡管連から)

 管理費等の徴収については、管理組合(理事会)が毎月確認し、把握しておくべきです。特に会計担当理事は、その結果について理事会に報告し、役員がその情報を共有し、管理費等の未納がある場合には、速やかな対応が求められます。

 その対応として、管理規約、細則等のルールに基づいた手続きが欠かせません。理事会としても今一度、管理規約等を見直すことをお勧めします。

 なお、管理費等の滞納の係る請求は、最高裁判所において5年で時効の判決が出されました。

| 2014年12月21日 | カテゴリー 滞納管理費等問題 

 前回の管理費等の滞納者(債務者)に対し、区分所有法では先取特権を有し、その特定承継人の責任が明記されている。また、国土交通者がひな型として示している標準管理規約では、包括承継人にも滞納管理費等を請求できると明記されている。

 

【区分所有法】

第7条(先取特権)

1 区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。

2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。

3 略

第8条(特定承継人の責任)

 前条第1項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。

 

【標準管理規約】

第26条(承継人に対する債権の行使)

 管理組合が管理費等について有する債権は、区分所有者の包括承継人及び特定承継人に対しても行うことができる。

| 2014年5月17日 | カテゴリー 滞納管理費等問題