「意図的滞納型」の現状
管理組合の管理に対する不満から、当分の間管理費等を払わないという人の場合は、不満の解消(実はこれが大変ですが)があれば、支払ってくれます。
今回は、競売や公売で競落した職業的というか困った競落専業者について検討していきます。
競落した人は、裁判所や役所で競売・公売記録をよく見て、滞納管理費等がいくらあるかをしっかり把握しています。
競落価格は、滞納分を考慮してはじき出されているから安いのです。
しかし、代表的な「意図的滞納型」の言い分は、「前所有者の分までなんで支払わなければいけないんだ。そんな話は聞いてない。前の滞納分まで支払えと組合が難癖をつけるから、今後一切管理費等は支払わない。」です。
しかも、一方では、ちゃっかりと競落物件について賃借人をインターネットで募集して、賃借人には、「管理組合に一切賃貸借契約を見せるな、賃貸人、賃借人の名前を明かすな。」と厳命して、管理組合が、競落者や居住者に名前を登録するようにどんなに言っても、全く無視です。
賃借人の子供に名字や学校名を尋ねても、「知らない人に言えない。」とまで言われてしまう有様です。
勿論、賃借人は用心して、表札などは出しませんし、駐車場や駐輪場の契約は締結しません。
したがって、管理組合は、賃貸債権の差し押さえもできません。
当事者の特定に時間がかかりあっという間に数年経過してしまいます。
この場合、管理組合が取れる手段としては、競売しかありません。競売申立てには、印紙郵券以外に、予納金が、だいたい60万円前後かかりますから、管理組合は、このような意図的滞納者から、踏んだり蹴ったりの被害を被ります。
(著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子