「じり貧型」への対応
1 本人が管理組合と対話できる場合
① 話合いによる臨機応変な滞納金徴収
本人や家族が管理組合の請求や催告書、自宅訪問に対応してくれるならまだ脈がありますから、ここで
管理組合は、先ず、本人の滞納の言い分に耳を傾けましょう。
その時、高飛車に「管理費等は支払う義務があるから支払わないなら裁判にかける。」といった強硬な
発言は禁物です。
始めから他人に窮状や収入額を話さないのは当たり前で、ゆっくり世間話から始め、心を開いてもらわ
ねばなりません。
その話の中で、収入源か、年金なのか、仕送りなのか(誰からかも)、預貯金の切崩しもしているか、
生活保護を受けているのか、アルバイトか、派遣社員か、勤務先はどこか、失業中か、営業している場所
・名称・店名は何か、家族構成はどうか、健康状態はどうか、別に住まいを持っているか、万一の場合に
息子・娘等連絡できる人はいるか、その氏名や連絡先などの情報をできるだけ多く引き出して、その人の
全体像の把握に努めます。
何回か会って、じっくりその人と話ができたら、1歩前進です。
② 滞納予備軍の対策
老齢になると、収入と支出がアンバランスなのに将来を予測し見極めがつかない人が多くなり、数年後
は滞納者になることが見込まれる、いわゆる滞納予備軍が増えてきました。そうなる前に管理組合は手を
打たなければなりません。
この打開策は、当該者に今よりもっと狭い部屋に移転していただき、その方の毎月の支出額を減らし
て、生活破綻者とならないようにすることです。
この場合、一人で動けて、頭もそれ相当に働き、印鑑証明が取れること、住居移転に必要な諸費用捻出
の余力があることが条件となります。
そういうシミュレーションを実行するには、信頼関係が成り立ち、収入と支出、動かせるお金の有無と
額の把握がある程度必要です。
その上で、予備軍の方に、部屋の売却や賃貸を決意していただくのです。
管理組合の役目は、共用部分の物理的管理だけという見解もありますが、面倒ですが総て滞納防止につ
ながりますので、急がば回れです。
(著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子
(岡管連から)
長寿社会では、夫婦二人の年金で十分に生活ができていても、どちらか一方が、大病に陥り長期入院、あるいは施設等に入所、また先立たれた場合、生活ができなくなることが指摘されています。
これがいわゆる『老後破産』です。
特に、高齢の区分所有者の場合、生活費に加えて、『管理費等』が別途、必要になってきて、『老後破産』にさらに拍車がかかることが指摘されています。