【管理経費不払いによる59条競売】
―山下・渡辺法律事務所 弁護士渡辺 晋―
管理経費不払いへの対応は、管理組合業務における重要な課題です。管理経費を払わない区分所有者の資産状況が著しく悪化しているときは管理組合の財政に及ぼす影響は重大ですし、また、不誠実な区分所有者が確信的に不払いを続けるときには、管理組合の財政的基礎が害されるだけではなく、多くの煩雑な管理組合業務が必要となります。一部の区分所有者の不払いを放置するならば、マンション全体のモラルを低下させることにもなりかねません。
区分所有者がほかの区分所有者の共同生活の基盤を脅かしている場合、区分所有法(以下、法)には、これに対する対抗手段として、競売請求という制度が準備されています(法59条1項、以下、59条競売)。管理経費を支払わない区分所有者について、59条競売が利用されることもあります。
ただ、59条競売は、裁判所の助力を受けて、強制的に区分所有者を排除してしまう強力な制度です。多額で長期の不払いに対して効果的である反面、要件が厳格であって、軽々に利用できるものではありません。
管理経費の不払いに対してこの請求を肯定した東京地裁平成24年9月5日判決は、具体的に無剰余{買受可能価額が、差押債権者の債権に優先する債権(優先債権)と執行費用のうち共益費用であるもの(手続費用)の見込額の合計額に満たないことをいう。}となる見込みが高いかどうかを検討したうえで、滞納期間3年以上、滞納額100万円超、今後滞納額が累積していく見込みであるという事実関係のもとでは、不払いがマンションの管理費・修繕積立金の予算額合計からみるとわずかの割合を占めるに過ぎないとしても、59条競売請求を認めました。今後、59条競売請求が認められるかどうかを検討する際に、参考になる判断ということができます。
(岡管連から)
管理費等の徴収については、管理組合(理事会)が毎月確認し、把握しておくべきです。特に会計担当理事は、その結果について理事会に報告し、役員がその情報を共有し、管理費等の未納がある場合には、速やかな対応が求められます。
その対応として、管理規約、細則等のルールに基づいた手続きが欠かせません。理事会としても今一度、管理規約等を見直すことをお勧めします。
なお、管理費等の滞納の係る請求は、最高裁判所において5年で時効の判決が出されました。