大規模修繕

【調査・診断の実施に際して】

 

 以下は、事前に管理組合側で取り組むべき事項となります。

1 調査・診断の必要性

 大規模修繕工事を成功に導く鍵の一つは、当然のことながら、大多数の区分所有者の間で工事の実施について賛成の合意形成がなされることです。賛同を得やすくするポイントは、なぜ工事に着手しなければならないかを、分かりやすく十分に説明できるかという点に尽きるでしょう。

 建物や設備の本格的な調査・診断を行う理由は、直接的には修繕の要否の判定ですが、間接的には「だから大規模修繕工事を行う必要があるのです」という提案理由を裏付ける根拠となる点にあるといえます。

2 どのように任せるか

 調査・診断の目的は、あくまでも大規模修繕工事が必要か否かを判断することにあるのですから、建物や設備の現状をつぶさに観察すると共に、過去の修繕履歴などを調べることも仕事の一つとなります。したがって、発注者の立場である管理組合としても、ただ任せきりにすれば済むというわけにはいきません。

 建物の図面や修繕記録などの資料を事前に整理しておくだけでも、調査者の手間をかなり省くことが出来ます。また、現にその建物に生活している居住者の目から見た建物や設備の不具合についての意見も、調査者が建物の弱点を探る際の大きな参考となります。

 そこで、あらかじめ発注者(管理組合)と調査者が調査の内容や方法についてよく打合せておくことが肝要で、その時点で居住者アンケートや各住戸への入室調査が必要かどうかの詰めを行います。

(注)下線部は、こちら側で記載。

| 2014年9月23日 | カテゴリー 大規模修繕 

【外壁改修工事の内容とポイント】

 

  外壁コンクリート躯体、仕上げ材の劣化部分の改修が主体となる。

1 コンクリート躯体改修

  劣化現象としては、ひび割れ、欠損、鉄筋腐食と露出現象が挙げられる。特に、

 ひび割れは一般的な劣化現象で、その原因はコンクリートの乾燥収縮、温度変化

 による膨張伸縮、地震時の応力集中等であるが、躯体不具合の改修法では、以下

 のような工法がある。

 ① ひび割れ

   フィラー処理(注1)、Uカット処理(注2)があるが、構造耐力上補強を要

  するものは、エポキシ樹脂注入工法で躯体との一体化を図る。

 ② コンクリートの欠損・鉄筋腐食と露出現象

   欠損は鉄筋発錆による押出し、地震時の変形等により発生する。特に鉄筋露出

  現象は、コンクリートの鉄筋に対するかぶり厚不足により発生するもの。劣化部

  分を除去しアルカリ付与剤を塗布浸透させた上で、ポリマーセメントモルタル等

  で修復する。

   (注1)ひび割れの中にフィラー(微弾性下地調整剤)を充填すること。

   (注2)ひび割れ部分をU字型にカットして、弾性シーリング材などを充填する

       こと。

2 タイル仕上げ改修

  劣化現象としては、タイルにひび割れ・浮き、剥がれ等がある。外壁がタイル

 仕上げのものは、現在、法律に定める『特殊建築物定期検査』で、新築時(又は

 改修時)より10年を経たものは、最初の調査の際に『全面打診』等が義務付け

 られている。タイルの浮き等は経年劣化によるものと、建設時の施工に問題があ

 るものがある。改修法は以下の内容である。

 ① 不具合・劣化箇所のタイルの張替え

   修繕方法としては、基本的には張替えが望まれるが、このためタイルは新たに

  釜焼きが必要となる。また、目地のモルタルの色調にも注意が必要。

 ② タイルのひび割れ

   下地コンクリート(又はモルタル)のひび割れに起因するものが多く、タイル

  は剥がし、コンクリート躯体のひび割れを補修後、タイル張替えとなる。

 ③ 張替え以外の工法

   一般的にはタイル浮き箇所の目地の交点を穿孔し、浮きの空隙にエポキシ樹脂

  を充填し、ステンレスピンを挿入するピン注入工法や、エポキシ樹脂を注入する

  アンカーピン注入工法等が採用される。

3 塗装仕上げ改修

  外壁に用いられる塗料(外壁塗料)は、コンクリート躯体の保護と、建物美観の

 保持の二つの役割がある。塗材の変化は、自然現象の影響による退色、汚れや剥が

 れ、れとして現れる。一般的に外壁の塗替えは、既存塗膜の上に新たな塗材を塗

 り重ねる工法で、この際に既存塗膜の付着強度が問題となる。一定の強度があれば

 重ね塗り、ない場合は脆弱塗膜を除去し塗替えとなる。外壁塗材の改修は、以下の

 手順で行われる。

 ① 汚れ、脆弱塗膜の除去

   一定圧力の高圧水洗浄機により壁面を洗浄、塗膜除去を行う。

 ② 下地調整剤+主材

   近年では既存塗膜の付着性、下地調整の省力化、仕上層(トップコート)の

  選択などから、『微弾性下地調整材』が下塗を兼ねた主材として採用するも

  のが多い。

 ③ 仕上げ塗料(トップコート)

   塗材の色彩や光沢の度合いは、塗材の表層に施されるトップコートにより決

  めらるが、塗料を構成する樹脂成分により様々な種類のものがある。コスト

  バランスとの観点から検討する。

| 2014年9月19日 | カテゴリー 大規模修繕 

築29年 大胆改修で価値アップ

オートロック・ロビー設置・外観も一新

 マンションの登場から約60年を迎え、老朽化に直面する分譲マンションも、建物の性能を維持するには十数年ごとの大規模修繕が欠かせません。魅力を生み出し、価値を高める修繕で、長く住み続けることも可能である(終の棲家)。専門的知識が少ない住民をサポートしてくれる専門家団体(NPO法人 岡管連等)もあります。

 大阪市都島区にある築29年の分譲マンションは11階建てで、1年近くかけた大規模修繕の工事を2月に終えた。

 約80世帯が暮らし、多くは60、70代で、働き盛りでこのマンションを購入した。外来者が自由に出入りできる構造や、狭いエントランスは時代遅れになった。

 使い勝手がよく、高齢になっても安心して住み続けられる環境を、どう整えるか。マンションの長期修繕計画をもとに、管理組合は3年前に、修繕委員会を立ち上げた。

 オートロックの導入や給水方式の変更、外壁の色など、工事の実施項目について全戸にアンケートした。着工の準備に2年かけた。

 入口のオートロックは指紋認証付きで、一人暮らしの安否確認にも役立つよう、何日も出入りがない住戸があれば、セキュリティー会社が検知するシステムを入れた(高齢者等に配慮した見守り機能)。

 『時代に合わなくなった部分を見直し(再生化)、外観に魅力を持たせれば、建物の価値が上がり、長く住み続けられる(価値の創造化)』と、設計を担当した専門家は言う。

 また、『私らの世代は修繕して住み続け、建て替えるかどうかは次の世代に委ねたい』と、修繕委員長は言う。

 大規模修繕は外壁の塗装や防水工事などが優先されがちだが、必ずしも一律に必要とは限らないので、『劣化の度合いによっては部分的な補修で済む場合もある。管理会社任せにするのではなく、何が必要か見極めることが大切です』とも、専門家は言う。

 (注)括弧書き部分は、こちら側で付け加えた部分となっています。

 

感   想

二つの老いに配慮した改修工事

 第2回目の大規模修繕時期となると、マンションは築25年程度になり、マンション居住者への高齢化対応にも配慮した改修工事が必要になってきていることがうかがえる(二つの老いへの配慮)。

 マンションは居住者にとって、『住まいの部分』と『生活の部分』、との二つの側面があり、さらに、築年数が30年以上経過してくると、『住まいの部分』には建物・設備等の改修工事が、『生活の部分』には健康・福祉等に配慮した面が、表面化してくることが予想されるだろう。

| 2014年4月23日 | カテゴリー 大規模修繕 

 第183回通常国会において、建築物の耐震改修の促進に関する法律の一部を改正する法律が成立(公布:平成25年5月29日)し、平成25年11月25日より改正耐震改修促進法が施行された。

 その一部改正のうち、マンションに関して、新たに次の制度が創設された。

   【 区分所有建築物の耐震改修の必要性に係る認定制度の創設 】

 区分所有建築物(マンション等)の耐震改修の必要性に係る認定制度を創設し、当該認定を受けた区分所有建築物については、大規模な耐震改修を行おうとする場合、区分所有者の集会の決議要件の緩和(区分所有法の特例:3/4から1/2に)により、耐震改修を行うことができることとした。

| 2014年1月23日 | カテゴリー 大規模修繕 

岡管連のなど18団体で構成する全国マンション管理組合連合会の山本有三会長が新聞取材を受けたらしいよ?

うん!そうだよ。マンション再生をみんなで研究しているんだ! 紹介しよう!毎日新聞朝刊記事7月30日

| 2013年7月30日 | カテゴリー 大規模修繕 

大規模な地震がいつきてもおかしくない状況にありますね?そうなんだよ!国では関連法案の改正を視野に入れて、法制審議会を設けて審議してきたんだよ

震災マンション法の改正 4月8日閣議決定! 今国会で成立か? 南海・東南海、東海地震が同時発生、M9級の地震となれば、津波等で32万人余の犠牲が出ると政府が予測しています。
一方、首都直下型地震は4年以内に70%の確率で発生すると予測されるなど、大地震の切迫が懸念されています。そうした大規模な被災予測に対応して法務省は、区分所有建物の再建等に関する特別措置法、罹災都市借地借家臨時処理法の改正について、法制審議会に部会を設け、見直し作業を行いました。

部会(会長・山田誠一神戸大学教授)では、昨年9月からことし1月まで、9回にわたって審議が行われました。2月に、両法の要綱案が作成され、今国会に改正案が上程されました。4月8日には、閣議決定され、今国会での成立を目指しています。…

| 2013年4月26日 | カテゴリー 大規模修繕