二つの老い

【発症前1万人追跡調査】

 安倍晋三首相は6日、東京都内で開かれた認知症に関する国際会議に出席し、新たな認知症対策の『国家戦略』を策定する方針を表明した。

 『我が国の施策を加速させ、厚生労働省だけでなく政府一丸となって、(認知症の人の)生活全体を支える』と述べた。

予防、治療に活用

 安倍首相は『認知症の人が安心して暮らせる社会をつくることは、世界共通の課題だ。最速で高齢化が進む我が国こそ、社会を挙げた取り組みのモデルを示さなければならない』と述べた。

 新たな戦略では、市民による「認知症サポーター」の養成目標を現行の600万人からさらに引き上げるほか、医療・介護の専門職による『初期集中支援チーム』を全市町村に配置することなどを盛り込む方向だ。同チームは現在のプラン(オレンジプラン)では『全国普及を検討』との表現にとどまっている。

(岡管連から)

 首相表明に関する山陽新聞の記事を2回シリーズでお伝えします。

 なお、『認知症対策とマンション管理』とは、一見何も関連性がないと思われがちですが、岡管連では、将来的には『大いに関係性がある』と考えています。それは、岡管連が取り上げています『二つの老い』に現れてきます。

 それに合わせて『認知症対策とマンション管理』に関するテーマで12月に入り、5回シリーズで連載いたします。

| 2014年11月27日 | カテゴリー 二つの老い 

 この度、NPO法人集合住宅維持管理機構が発行している『マンションドクターニュース』の創刊100号記念(2014・4)に寄せて、当該機構の主任専門委員である堤 金次氏が投稿していました。その一部を、ここに紹介いたします。

【最近思うこと】

 最近2件の孤独死に遭遇しました。孤独死は、コミュニティから疎外されたか、近隣交際を敬遠するのが日常になっている最近の風潮が生み出しているのではないかと思います。

 孤独死が発見されるのは、共用廊下等に異臭が発生してからであるようです。新聞等で話題になるのは、公共賃貸住宅の場合であって、分譲共同住宅での事例は全く無いようですが、内実は結構あるように思われます。

 孤独死があった住居の所有権は相続される事例は全くありえず、疎遠になっている遺族は売りに出すのがその殆どであろうと思われます。

 悲劇は、孤独死があった住戸の下階に、腐乱体液が流下してきて発覚した場合です。先日まで時々挨拶していた人が孤独死した後も下階に住み続けるのは、通常の神経の人には出来るものではなく、その場合、市場価格より大幅に値引きして売りに出さざるを得ません。事情を隠して売買した場合、後日、事情が発覚し、買い戻しを請求されることが予想されます。

 昨年10月の朝日新聞の記事で、分譲貸しの住戸で自殺があって、競売で入手した新所有者はその事情を隠して賃貸に出したのですが、事情を知った賃借入居者から、告知義務違反で提訴され、判決は原告の主張どおり慰謝料と賃借料の返還(104万円)を認めたというものでした(控訴の有無の事情は不明)。

 管理組合は財産管理の組織であり、コミュニティの問題は自治会の守備範囲と言われてきましたが、今後はコミュニティの問題も取り組む必要があるのではないかと痛感させられた事例でした。

 

【感 想】

 国土交通省から公表された『平成25年度マンション総合調査』からわかるように、マンションの世帯主の年齢では、60歳代以上の割合が5割を超していて、なおかつ永住意識も5割を超しています。

 そのような状況において遅かれ早かれ、『マンションの孤独死の問題』は、いずれ表面化してくるでしょう。マンションでの生活人口は日本の人口の約12%で、8人に1人はマンション住まいです。現在、マンション住民は約1,500万人ですが、今後、さらに増えることが予想されています。

 『マンションは一戸建てとは違う』という認識が非常に薄いのが実態であります。建物、設備、敷地等は、区分所有者全員の財産であり、かつ、それらを継続的に維持していかなけばなりません。また、法律上もそのようになっています。

 ところで、マンションもその居住者も高齢化の状況(二つの老い)が続いていきますと、将来的には、次のような問題が起きてきます。これらは、マンション全体、又は管理組合にとって、危機的な事態に陥っていく恐れがあります。

・高齢者夫婦、一人住まいの方:健康、福祉、医療など外部からの支援が必要

・役員のなり手の問題:管理組合運営上の支障

管理費等の滞納問題:年金生活、維持管理負担の値上げ

・区分所有権移転の問題:相続、売買、競売等が生じた場合

            管理費等の請求はどこに?

・住民の無関心:総会に出席しない、表札がない、階が違えば分らない

など、社会から見ると、マンションは閉鎖的な面があり、行政等も把握できていない。その中で、『孤独死・孤立死』が起きている。

 

| 2014年6月09日 | カテゴリー 二つの老い 

【二つの老い】

 高度経済成長期の住宅需要を支えた団地も、ある時期に一斉に移り住んできた住民が今では高齢化し、建物も老朽化してきている(『二つの老い』)。中でもマンションを含めた集合住宅の高齢化が深刻になっている。この現象は、『都会の限界集落』(注)とも呼ばれている。

(注) 限界集落とは、過疎化などで人口の50%以上が65歳以上の高齢者になって、冠婚葬祭など

   社会的共同生活の維持が困難になっている集落を指す。

【自治会】

 約30棟に3千世帯以上が暮らす都営団地「戸山ハイツ」は、戦後の復興住宅が1968年以降に集合住宅へと建て替えられたものである。その後、時は過ぎ、子供たちは独立したこともあり、自治会の活動は、停滞している状況である。

【孤独死】

 団地の中のある棟は、約50世帯のうち半数以上が70歳以上の世帯で、人口の半数以上が65歳以上という点では、まさに、限界集落の定義に当てはまる。

 そんな中、孤独死の不安は大きく、別の棟では、亡くなってから発見されている。行政との連携に加え、希望する世帯から予備に鍵を預かるなど団地の自助努力で、なんとか防ごうとしているが実情である。

【今後の取り組み】

 『長く続く町づくり』を目指して、今後、一層高齢化進むことを念頭に、行政、民間等を含めた、より長期的な視野で居住の在り方を見直す必要がある。

| 2014年4月21日 | カテゴリー 二つの老い