専門家の活用

マンションの健全化業務への取組

4 再生に向けた理事会の活躍

 (修繕工事に向けた準備と課題)

  10月の第3回臨時総会で、修繕積立金及び管理費併せて戸当たり月6,000円程度の値上げと、

 屋上防水工事、共用廊下等の修繕工事の実施、併せて金融機関からの借入れの承認を得ることができ

 ました。

  早速、金融機関に借入れを申し込みましたが、決算書がなく毎月の修繕積立金も少額で積立金残高

 も少ないとの理由で、融資は見送られました。

  そうしたところ、ある理事からの好意による一時金をお借りすることになり、喫緊の屋上防水の応急

 修理工事だけは実施できました。

  このように、共用部分の修繕は資金の問題で進んでいません。特に、機械式駐車場は老朽化が著しく

 修理もできない危険な状態にも拘わらず稼働していましたが、「安全第一」を考えて総会決議で閉鎖

 することとし、K組合の斡旋により近隣に代替え駐車場を借りることになりました。

  今後、機械式駐車場の対応に関する課題も残っております。

 (管理費等滞納者への対応)

  管理費等の長期滞納者が2名いて、調停、訴訟をも視野に督促状を数回送りましたが返答がなく

 困っていましたが、1名については他の債権者から競売に掛けられ、競落者から滞納金と遅延損害金

 を全額回収することができました。

  残りの1名は競売の様子を見ていたのか話し合いに応じ、返済計画書を提出して毎月の管理費等の

 他一定額を支払う合意をしました。

  このように、理事会の方々の一生懸命な姿を見て他の組合員の意識も高まってきたのか、昨年度の

 管理費等の未収金はなく、積立金残高も2年前の30万円程から昨年度決算で600万円程となり、

 財政の健全化に向かいつつあります。

  決算書も2期分を積み重ね修繕積立金収入も安定したので、修繕工事を進めるために再度、金融機関

 に借入れについて話し合っているところです。

                              (著)マンション管理士 山田 健二

(岡管連から)

 今回取り上げられた点として、以下の3点が挙げられるでしょう。

① 決算書がない

  組合員から管理費等を集金したが、決算書がなければ、その使途が全く明らかにならない。

  これで20年間やってこれた自体が問題で、組合員が全く無関心で、放置又は黙認していた「つけ」

 は、組合員全員がその責任と負担を負うことになる。

② 機械式駐車場の維持管理等

  機械式駐車場の交換時期の年数は15年~20年程度と言われ、その維持管理のためのメンテナンス

 ・点検等は3年~5年おきと言われ、そのランニングコストは、管理組合の運営に大きな影を落として

 います。

  また、その収入・支出の面で見ても、ここにも大きな隠れたリスクがあります。

  つまり、機械式駐車場収入は、一般的には管理費収入に組み込まれ、その維持管理費用は、修繕

 積立金から支出されるという不可思議な会計慣習(?)になっています。

③ 管理費等の滞納対策

  管理費等の滞納問題は、最終的には管理組合の問題であり、管理会社との委託契約においては、

 一定の努力規定が設けられているが、あくまでも管理費等の回収は、管理組合の責任と負担で行わ

 なければならない。

| 2016年9月13日 | カテゴリー 専門家の活用 

マンションの健全化業務への取組

3 理事会の立上げ

  そこで、A社任せではない自主的な管理運営を目指すには組合員の連携が必要と、その手始めとして

 理事会の立上げを提案しました。

  4月末頃組合員32名の1/5以上の発起人7名を集め、「役員選任」の総会を、分譲後18年目で

 初めて開き、ここで理事3名と監事1名が選定されました。

  この総会では、組合員の方にとって同じ屋根の下に住む者同士が一堂に会していろいろお話しする機会

 ができ、有意義だったと思われます。

4 再生に向けた理事会の活躍

 (管理運営の再整備)

  5月初旬に第1回の理事会を開き、理事長、副理事長、会計担当理事の役職を決め、最初の仕事として、

 新役員3名と私とでA社の社長と面談しました。

  そこで、通帳・印鑑、図面の返還、過去の決算書類、その他関係書類等を1か月以内に提出するよう

 求めました。

  その後、返還も回答もなく誠意が見られないので、6月上旬に第2回臨時総会を開き、管理委託契約解除

 を決議しました。

  この後、理事会は精力的に活動し、A社に対し契約不履行による管理委託契約解除を通知し、区分所有者

 ・居住者名簿の整備、管理員の採用、火災保険の加入、管理費等収納を扱う銀行の変更、収納代行会社との

 契約、設備会社との保守管理の再契約、会計事務の処理等のすべてを自分たちで行いました。

  理事会では「新たな管理会社へ委託」との意見も出ましたが、今までの反省から、当面は自主管理で頑張

 ろうということになりました。

                                (著)マンション管理士 山田 健二

(岡管連から)

  管理組合の運営は自主・自立が基本であり、運営主体は組合員であり、管理会社ではありません。

 20年を経過した今、この機会を転機とし、各組合員がマンションへの関心を向けていただければ、管理の適正化に1歩ずつ近づくものではないでしょうか。

| 2016年9月11日 | カテゴリー 専門家の活用 

マンションの健全化業務への取組

1 無料相談会で雨漏りの相談

  平成26年3月末に、Kマンション(築20年、32戸)管理組合(以下「K組合」という。)の組合員

 が無料相談会に来て、「雨漏りがひどく、管理会社にお願いしても、何もしてくれない、どうすればよいの

 か」との相談がありました。

  相談会当日は規約等の資料の持参がありませんでしたので、後日資料を見て説明するために訪問すること

 としました。

  数日後、K組合に伺って、集まった7~8名の組合員から話を聞きました。

  販売会社との入居時の覚書で、理事長が選出されるまでは管理会社A社が管理者としていますが、理事長

 が選出されないまま現在に至っていて、入居開始以来、総会が一度も開催されていないとのことでした。

  さらに、決算書も見たことがなく預金残高がどうなっているかも分からない、預金通帳も組合の印鑑もA

 社に預け放し、管理委託契約書も分譲当初のままで更新されていない、理事会も組成されてなく全てA社に

 お任せの状態等で、管理組合が全く機能していない状態でした。

  A社や管理員に不平、不満がありながらも居住者同士の情報交換等もないので、どう対応したらよいか分

 からないとのことでした。

2 A社の概要の調査

  平成13年8月のマンション管理適正化法施行後もA社のようなことがあるのかと思いながら、先ず法務

 局に行き、履歴事項全部証明書を取得してA社の概要を調べ、その足で、国土交通省東北地方整備局のマン

 ションの担当部署に行き、マンション管理業者登録簿を閲覧しました。

  そこには役員の氏名、資本金の額、税引き前当期利益0円、当期純利益0円の記載だけでした。

  閲覧後、担当の方に相談してK組合での事実関係を伝え、今後の対応への協力をお願いしました。

                                (著)マンション管理士 山田 健二

(岡管連から)

 K管理組合の問題点等を、ここで指摘しておきます。

① 管理組合が組織されていないため、総会もできない。

② それゆえ、当然理事会も存在しない。

③ その結果、管理会社に任せっぱなしであった。

④ 築20年の間、そのような運営状態でありながら、組合員誰一人、気付かない、指摘しない、

  いかに無関心であったか。

⑤ その結果、管理会社が運営を主導していた。

⑥ 本来、管理組合が自主・自立であるべきであるところ、組合員から「管理会社にお願いしても、

  何もしてくれない」といい、管理組合が委託者であり、管理会社が受託者であるにもかかわらず、

  本末転倒な発言が出てくる。

⑦ そのつけは管理組合、すなわち組合員一人一人に負担がかかってくる。

⑧ 管理者(理事長)=管理会社は利害関係そのもので、まさしく利益相反取引に該当する。

⑨ この3月改正された標準管理規約に新たに第37条の2(利益相反取引の防止)が追加され

  それによると役員の利益相反取引の防止が図られている。

⑩ その関係から言えば、管理委託契約の更新手続きもこの20年間行われていない。

  など 以上

| 2016年9月09日 | カテゴリー 専門家の活用 

3 どのようなケースで、マンション管理士を活用したらよいでしょうか?

  マンションでは老朽化対策等が重要です。老朽化が進むマンションでは建替え又は改修の検討、また、

 耐震に問題があるマンションでは耐震対策工事の検討など避けては通れない問題がありますが、居住者

 だけで合意形成をしたくてもなかなか前に進んでいけないような難しいケースもあります。

  このようなときには、マンション管理士など専門家による支援がより必要となってきます。

  築30年以上のマンションは現在約162万戸、それが10年後には約316万戸、さらに20年後

 には約506万戸になります。

  また、マンションの中で多数の区分所有者等に係わるトラブルが発生したときは管理組合としての対応

 が必要となりますが、問題が複雑化し居住者だけでは解決が難しい場合も決して少なくはありません。

  管理費・修繕積立金等の滞納金への対応、管理規約等の違反行為への対応、大規模災害への対応、空き

 家対策、駐車場対策、さらに、高層マンションや大規模マンション特有の課題に加え、近年では民泊対策や

 増加する外国人区分所有者への対応などマンションの管理・運営に関する課題は多種多様となっています。

  これらの課題に対し、マンション管理士からの助言等により、管理組合が専門的な知見を得て、課題解決

 に結びつくことが期待されます。

  さらに、3月に改正された「マンション標準管理規約」(国土交通省公表)では、選択肢として、マン

 ション管理士等の外部専門家が、管理組合の役員に就任する場合の規定例等が示され、これまでの相談・

 助言・指導等からさらに進んで、直接管理組合の運営に携わることも想定されています。

  このように、マンションの高経年化、居住者の高齢化が進行する中で、マンション管理士の果たす役割は

 ますます重要となっています。

【外部専門家が管理組合の運営に携わる際の基本的3パターン】

  (標準管理規約コメント別添1より抜粋)

 ① 理事・監事外部専門家型又は理事長外部専門家型

  (従来通り理事会を設け、外部専門家を役員として選任するパターン)

 ② 外部管理者理事会監督型

  (外部専門家を管理者として選任し、理事会は監督的立場となるパターン)

 ③ 外部管理者総会監督型

  (外部専門家を管理者として選任し、理事会を設けず、監事や総会で監視するパターン)

(岡管連から)

 外部専門家が管理組合の運営に携わるパターンの問題点等は、以下の通りです。

①のパターン

 外部専門家が外部監事として携わるのがベターであろう。その場合、理事会及び総会等には必ず出席し、

外部第三者的な立場で、アドバイス等を職務として携わるのが良いと思われる。外部専門家の役目の一つ

として、理事会機能の活性化への支援等も考えられる

②のパターン

 外部専門家が管理者すなわち理事長として総括的な職務と責任を伴うが、その場合、理事会が機能して

いなければ、理事長の裁量で物事の判断が決定され、また管理者自身の資質も問われ、利害関係者として

利益相反取引等を行われることも考えられる。それから、「管理への無関心化」が助長される恐れもあ

るだろう。ただこのパターンでは、理事会で意思決定される限りにおいては、理事長以外の理事・監事

にも一定の責任があると思われる。

③のパターン

 外部専門家を管理者(理事長)としてすべてを一任し、かつ理事会機能はなく、管理者が管理組合の

財産等を管理し、決済するという大きなリスクを含んでいる。また、ただでさえ監事や総会の機能が十分

でないところに、基本的には一年に一回の総会でその監視機能が発揮できるのか、疑問である。さらに

このパターンは、②のパターンよりもより一層「管理への無関心化」が進むだろう。

| 2016年9月07日 | カテゴリー 専門家の活用 

1 マンション管理士とは?

   マンション管理士は、平成13年8月に施行された「マンションの管理の適正化の推進に関する法律

  (以下、「マンション管理適正化法」といいます。)に基づく国家資格です。

   マンションの管理を適切に行っていくためには、管理組合の運営、建物等の維持または修繕等に関す

  る専門的知識が必要となります。

   しかしながら、管理組合の構成員であるマンションの区分所有者は、これらの専門的知識を十分に有

  していないことが多いため、マンションの区分所有者等に対し、適切なアドバイスを行うことのできる

  専門家が必要とされていました。

   このため、平成12年12月8日にマンション管理適正化法が公布され、同法に基づく国家資格とし

  て「マンション管理士」制度が新たに創設されました。

   マンション管理適正化法の定めでは、マンション管理士が、マンション管理士の名称を用いて助言・

  指導等の業務を行うためには。試験に合格し、マンション管理士の登録を受けなければならないとされ

  ています。

2 マンション管理士の具体的な業務はなんですか?

   マンションの管理を適切に行っていくには、

 (1)管理規約や使用細則等の建物等の管理または使用に関する区分所有者相互間のルールの策定および

    改定

 (2)長期修繕計画の策定および見直し

 (3)多数の区分所有者間のトラブルへの対処等

  が必要になりますが、マンション管理士は、管理組合の管理者や管理組合法人の理事またはマンションの

  区分所有者等からの相談に応じて、管理規約、使用細則、長期修繕計画等の素案の作成、区分所有者間の

  トラブル解決に向けての予備的交渉等を行います。

   これらの業務を行うことにより、マンション管理士が管理組合の運営を様々な形で支援することが期待

  されています。

   そのほか、大規模修繕工事の計画・実施、居住者の義務違反、管理費の滞納等へのアドバイスにもあた

  ります。

| 2016年9月05日 | カテゴリー 専門家の活用