3 どのようなケースで、マンション管理士を活用したらよいでしょうか?
マンションでは老朽化対策等が重要です。老朽化が進むマンションでは建替え又は改修の検討、また、
耐震に問題があるマンションでは耐震対策工事の検討など避けては通れない問題がありますが、居住者
だけで合意形成をしたくてもなかなか前に進んでいけないような難しいケースもあります。
このようなときには、マンション管理士など専門家による支援がより必要となってきます。
築30年以上のマンションは現在約162万戸、それが10年後には約316万戸、さらに20年後
には約506万戸になります。
また、マンションの中で多数の区分所有者等に係わるトラブルが発生したときは管理組合としての対応
が必要となりますが、問題が複雑化し居住者だけでは解決が難しい場合も決して少なくはありません。
管理費・修繕積立金等の滞納金への対応、管理規約等の違反行為への対応、大規模災害への対応、空き
家対策、駐車場対策、さらに、高層マンションや大規模マンション特有の課題に加え、近年では民泊対策や
増加する外国人区分所有者への対応などマンションの管理・運営に関する課題は多種多様となっています。
これらの課題に対し、マンション管理士からの助言等により、管理組合が専門的な知見を得て、課題解決
に結びつくことが期待されます。
さらに、3月に改正された「マンション標準管理規約」(国土交通省公表)では、選択肢として、マン
ション管理士等の外部専門家が、管理組合の役員に就任する場合の規定例等が示され、これまでの相談・
助言・指導等からさらに進んで、直接管理組合の運営に携わることも想定されています。
このように、マンションの高経年化、居住者の高齢化が進行する中で、マンション管理士の果たす役割は
ますます重要となっています。
【外部専門家が管理組合の運営に携わる際の基本的3パターン】
(標準管理規約コメント別添1より抜粋)
① 理事・監事外部専門家型又は理事長外部専門家型
(従来通り理事会を設け、外部専門家を役員として選任するパターン)
② 外部管理者理事会監督型
(外部専門家を管理者として選任し、理事会は監督的立場となるパターン)
③ 外部管理者総会監督型
(外部専門家を管理者として選任し、理事会を設けず、監事や総会で監視するパターン)
(岡管連から)
外部専門家が管理組合の運営に携わるパターンの問題点等は、以下の通りです。
①のパターン
外部専門家が外部監事として携わるのがベターであろう。その場合、理事会及び総会等には必ず出席し、
外部第三者的な立場で、アドバイス等を職務として携わるのが良いと思われる。外部専門家の役目の一つ
として、理事会機能の活性化への支援等も考えられる。
②のパターン
外部専門家が管理者すなわち理事長として総括的な職務と責任を伴うが、その場合、理事会が機能して
いなければ、理事長の裁量で物事の判断が決定され、また管理者自身の資質も問われ、利害関係者として
の利益相反取引等を行われることも考えられる。それから、「管理への無関心化」が助長される恐れもあ
るだろう。ただこのパターンでは、理事会で意思決定される限りにおいては、理事長以外の理事・監事
にも一定の責任があると思われる。
③のパターン
外部専門家を管理者(理事長)としてすべてを一任し、かつ理事会機能はなく、管理者が管理組合の
財産等を管理し、決済するという大きなリスクを含んでいる。また、ただでさえ監事や総会の機能が十分
でないところに、基本的には一年に一回の総会でその監視機能が発揮できるのか、疑問である。さらに
このパターンは、②のパターンよりもより一層「管理への無関心化」が進むだろう。