マンション管理組合の理事長の権限より(1)/マン管通信2016・12 - NPO法人岡山県マンション管理組合連合会

マンション管理組合の理事長の権限より(1)/マン管通信2016・12

共用部分の「保存」と「管理」

1 「保存」および「管理」の意味

  一般に、「保存」とは共用部分等を維持すること(共用部分等の滅失・毀損を防止して現状の維持を図る

 こと。)であって、管理者の成し得る保存行為は、そのうち、緊急を要するか、または、比較的軽度の維持

 行為であると解されています。

  マンション管理組合の管理者である理事長は、共用部分の「保存」を行う権限があるため、管理者が締結

 する契約の内容が、共用部分の「保存」に該当するのであれば、管理者は、マンション管理組合の集会の決

 議を経ることなく、自らの権限で当該契約を締結することができることになります。

  これに対し、「管理」とは、共用部分の形状または効用を変えることをいい(これを「広義の管理」とい

 います。)、さらに、広義の管理は、①共用部分の形状または効用を確定的に変える「変更」と、②共用部

 分の形状または効用を変えるものの、これを確定的に変えるには至らない「狭義の管理」とに分かれます。

  ここで、「広義の管理」を、さらに、上記①の「変更」と②の「狭義の管理」に分けるのは、これらを行

 うためには、いずれについてもマンション管理組合の集会の決議が必要であることには変わりないものの、

 その決議要件が異なることによるものです。

  すなわち、共用部分の「変更」を行なうためには、マンション管理組合の集会において、区分所有者およ

 び議決権の各4分の3以上の多数による決議が必要であり、これに対し、共用部分の「狭義の管理」を行う

 ためには、マンション管理組合の集会において、区分所有者および議決権の各過半数による決議で足りるも

 のとされています。

  いずれにせよ、マンション管理組合の管理者である理事長は、共用部分の「保存」を行う権限があるのみ

 で「広義の管理」を行う権限はないため、管理者が締結する契約の内容が共用部分の「広義の管理」に該当

 するのであれば、管理者は、上述した決議要件に従ってマンション管理組合の集会の決議を経たうえで当該

 契約を締結しなければ、その契約はマンション管理組合に有効に帰属しないこととなります。

                           (著)みどり法律事務所 弁護士 厚井 乃武夫

2017年1月25日 | カテゴリー 法律のひろば