施工会社の選定手順
1 見積要項書・設計図書・参考見積内訳書の準備
見積りの作成に当たり各種の条件がバラバラでは、見積り内容の比較や妥当性について判断することは
困難です。
そこで、工事の概要、見積りを行うのに必要となる諸条件(工事期間、作業時間、支払い方法、契約や
保証条件など)を明記した「見積要項書」、工事範囲や工事仕様を記載した工事仕様書および改修計画図面
といった「設計図書」、見積書の内訳明細に項目や仕様・参考数量を記載し、単価や金額欄は空白とした
「参考見積内訳書」(見積項目一覧表、金抜き見積書などともいいます。)を作成します。
これらは主に設計監理を委託されたコンサルタントが理事会や専門委員会と協議しながら工事の方針を踏
まえて立案し、専門委員会の承認を得て最終的には理事会がとりまとめます。
2 施工会社の募集
マンションの規模や工事の内容を勘案し、建設業の許可、会社の所在地、資本金、財務状況、工事実績
件数などに一定の条件を定め、見積り参加の資格条件とします。
建物概要、工事概要、工事期間、その他諸条件を示し、見積合わせに参加をする施工会社を募集します。
募集方法には、業界紙やWEBサービスなどを利用した公募、インターネットでの検索、近隣や他のマン
ション管理組合からの情報収集、組合員からの推薦やコンサルタントからの情報提供といった方法があり
ます。
新築時の元施工会社、過去の修繕工事などで実績や関係のある施工会社、日常管理を委託している管理
会社なども候補となる場合もあります。
なお、安価な報酬で業務を受託してバックマージンや談合を仕組むような悪質なコンサルタントもいる
とされますので、コンサルタントに過度に依存せず、管理組合自らが主体的に取り組むことが大切です。
3 見積り依頼と見積りの受領
応募のあった施工会社から必要書類を取り寄せて、会社概要(建設業登録や技術者数)、財務状況、工事
実績などについて審査し、見積りを依頼する会社を5~10社に絞り込みます。
業界紙などで公募をすると数十社から公募が寄せられることも少なくありません。
どのように絞り込んだのかを明確に説明できるよう、客観的評価基準を定めて理事会あるいは専門委員会
の場で公平に審査する必要があります。
次に、書類審査により絞り込んだ施工会社に「見積要項書」「設計図書」「参考見積内訳書」などの説明
や配布をして見積りの提示を依頼します。
見積期間中は施工会社それぞれが現地を確認し、工事仕様や設計内容に対する質疑応答したうえで見積書
の提出を受けます。
見積書の提出に当たっては、見積りの内訳明細に加えて、工程表や施工体制表、必要に応じて技術的な
提案なども求める場合もあります。
(著)日本建築家協会メンテナンス部会員 奥澤 健一