設計監理方式と責任(設計)施工方式
大規模修繕工事の発注方式には、設計監理方式と責任(設計)施工方式に大別されます。
設計監理方式は、建築士事務所などの専門家(コンサルタント)に調査診断、修繕設計、施工会社選定の支援、工事監理などを委託する方式です。
責任(設計)施工方式は、管理組合が特定の施工会社に設計から施工までを一括して依頼する方式です。
それぞれに一長一短がありますが、設計監理方式の場合は、第三者が介在することで施工会社を選定する判断において客観性を持たせることができるとされます。
責任(設計)施工方式であっても管理組合と施工会社の間で信頼関係が構築されていれば問題ありませんが、客観的な判断が十分にできないリスクがあることを否定することはできません。
どちらの方式を採用するかは、工事内容や規模にもよりますし、管理組合の考え方によっても異なると思われます。
複数の施工会社に見積もりを依頼する場合、工事範囲や内容、改修仕様や工法などをきちんと決定して共通の条件で見積りを依頼しないと、各社各様の見積りが提出されることとなり、見積内容の比較や妥当性を判断することは困難です。
大規模修繕工事を例にとると、最近は外壁などの補修や塗装・防水といった基本的な工事以外に、玄関ドアやサッシ、手摺金物といった大型の二次的部材の改修や、バリアフリー化やグレードアップといった工事を実施する事例も多くあります。
このように工事内容が多様化・複雑化する傾向にあり見積内容の妥当性を判断するには専門的な知見が求められますので、施工会社の選定に際してのコンサルタントによる支援は不可欠になると思われます。
(著)日本建築家協会メンテナンス部会員 奥澤 健一