【国税不服審判所の裁決と国税庁Q&Aの公表】
マンションの共用部分(屋上)の一部を携帯電話基地局等の設置のため携帯電話会社に賃貸して得た収入について、税務当局が、このマンションの管理組合は法人税法第2条第8号に規定する人格のない社団等(『人格なき社団等』)に該当し、当該収入はマンション管理組合の収益事業による収入であるとして、法人税及び無申告加算税を課したことに対し、管理組合側が、この収入はマンションの各区分所有者の不動産収入であって管理組合の収入ではないなどとして、その全部の取消しを求めた審査請求に対し、国税不服審判所は、平成25年10月15日にこの税務当局の処分は適法であるという裁決を下した。
管理組合側の主張について審判所は、「法人税法上、マンション管理組合は人格なき社団等に該当するため、その構成員から独立した収益の帰属主体として扱われること、賃貸収入が組合員である区分所有者に配分されることもなく、一貫して管理組合の会計に繰り入れられていることから、この賃貸収入は管理組合に帰属する収益である」とした。
さらに、法人税法上の不動産貸付業とは、不動産を他の者に利用させ対価を得る事業のことをいい、建物の屋上や壁面等不動産の一部を他の者に使用させて対価を得る行為もこれに含まれます。
このケースで管理組合の行ったマンションの共用部分の賃貸は、営利目的で、建物の一画である塔屋の一部を、区分所有者以外の第三者に賃貸し、継続的に電気通信事業に関する基地局等の設備設置のために使用させて、対価を得るものであると認められるので、不動産貸付業に該当する判断です。
したがって、税務当局の行った法人税及び無申告加算税の課税は適法であるという結論となった。
この裁決を受けて、国税庁のホームページの質疑応答事例に『マンション管理組合が携帯電話基地局の設置場所を貸し付けた場合の収益事業判定』という項目が追加された。
これは、同様のケースで税務申告をしていない管理組合に対し税務申告及び納税が必要であることを周知して、自主的な申告・納税を促すものと考えられます。
(著)小川公認会計士事務所 公認会計士 小川 聡