1 駐車場使用料の会計区分
国土交通省の「マンション管理標準指針」によれば、標準的な対応として管理組合の経理を管理費
会計と修繕積立金会計に区分経理することが必要とされていて、共用部分等の使用料でもある『駐車
場使用料』については、標準管理規約及び同コメントでは、以下のとおり示されている。
・標準管理規約第29条(使用料)
駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料(以下「使用料」という。)は、それら
の管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。
・同コメント第29条関係
機械式駐車場を有する場合は、その維持及び修繕に多額の費用を要することから、管理費及び修
繕積立金とは区分して経理することもできる。
特に、機械式駐車場の場合、コメントにあるようにその維持管理に多額の費用を有することが多
く、駐車場使用料会計を管理費会計及び修繕積立金会計とは区分しておく必要が出てきます。それ
は、以下のとおりです。
国土交通省のマンション総合調査によれば、駐車場使用料をすべて管理費会計に繰り入れている管
理組合が約7割ほどあり、駐車場使用料の独立会計を行っている管理組合が少ないのが実態です。
このことは駐車場使用料を管理費会計に組み入れないと、管理組合の運営ができないことを示して
いる。ところが、多くの管理組合では、機械式駐車場を維持管理するための負担先を、修繕積立金会
計から支出しているのがほとんどです。
このような管理組合では、本来の建物・設備等の修繕計画とその裏付けとなる修繕積立金とのバラ
ンスが崩れてくることとなる。また、このことは将来において機械式駐車場を、使用する者と使用し
ない者との間で、不公平感が出てくる恐れがある。
以上のことから、機械式駐車場のある管理組合では、駐車場使用料の会計について今後、見直すこ
とが必要になってきている。
2 機械式駐車場の維持管理等
(1)法定点検の有無
マンションの機械式駐車場は、エレベーター設備と異なり定期的な点検が法的に義務付けられ
ておらず、管理組合を対象にしたアンケートによると、年間点検回数の最も多いのが年6回、次
いで年4回と12回となっている。特に、タワー式の場合、ほとんどが12回である。
定期点検項目には、消耗品費、人件費、緊急対応費、経費などがある。費用の基準として、パ
レット単位で決められているところが多い。
(2)保全計画とメンテナンス
駐車装置の機械部分の減価償却資産としての耐用年数は、15年と定められているが、適切な
保守(定期点検)と保全(部品交換)を実施することにより、さらに長期間にわたって使用する
ことが可能になる。
機械式駐車場装置の経年劣化により各パーツの交換を定期的に行うが、10年を過ぎさらに、
減価償却15年を超えると、各機械装置の老朽化が進み、大型部品の修理が必要となる。その場
合、機械装置の入れ替え工事(リニューアル)と比較検討しての対応が求められてくる。
また、鉄部の塗装工事(一般的には6~8年に1回程度)を定期的に行う必要がある。特に、
雨や雪等の影響で、パレット等へのサビが多く発生するところもあり、その場合には、塗装工事
の頻度が高くなる。
(3)機械式駐車場の改修工事
駐車装置の機械部分の減価償却資産としての耐用援数は15年と定められているが、一般的に
は駐車装置は20年~25年程度で取替え、立体式の昇降装置は10年程度、安全装置は5年程
度で修繕・取替え、排水ポンプは10年程度で取り換える場合が多い。
以上、『機械式立体駐車場ガイドライン』をメインにして5回にわたり、管理組合及び区分所有者等
向けの情報を発信してまいりました。この機会をきっかけとして各マンションで、機械式駐車場を安全
に使うための正しい使い方、またその維持管理に関する関心を示していただければ、幸いであります。