【「不都合な真実」に直面したとき】
問題が発覚した端緒は、東洋ゴム工業に2012年夏に途中入社した、ある技術者の漠然とした瞬間だった。
兵庫県にある子会社で、マンションなどに使う免震ゴムの性能検査の仕事についた。先輩社員に教わりながらだったが、年明けに先輩が移動になり、一人で担うことになった。
不審に思ったのは検査数値だった。検査では、試験機から得た数値に、担当者が誤差を修正して最終的な数値を出す。先輩と同じ試験機を使い、同じ製品を測るなどしたが、先輩が出した数値と合わない。上司に相談し、先輩にも根拠を聞いたが、納得できる返事はなかった。
14年2月、彼の質問が子会社社長に伝わって調査が始まる。あとで分かったのだが、先輩は、国の認定基準に沿うように、根拠のない数字を入れていた。申請期限に間に合わせるため、結果を得たものとして申請書を作ったとみられる。その後、14年間も放置されていたという。
危機は「不都合な真実」を直視しないことから始まる。東洋ゴムだけではなく、東芝の不適切な会計処理も同様だ。結果、社会の信頼をいっそう失うことになった。
もう事態が起きた以前には戻れないのに、もしかしたら挽回できるかも知れないという誘惑についはまってしまう。問題が生じると、速やかに対応、公表する「危機管理」が問われる。でも人の心は、するり、そこをくぐり抜けてします。
*「波聞風問」より抜粋
(著)編集委員 多賀谷 克彦
(注)下線は、こちら側で記載
(岡管連から)
多くのマンションの場合、役員の任期が1年ということもあり、問題が先送りされる危険性があります。
問題によっては、それが管理組合にとって、法的に許されないという問題があります。
例えば、
・建物の維持管理の面では、瑕疵担保責任の問題で、民法上は1年までですが、居住用建物の場合、特別法の
品確法で原則2年、重要構造部分については10年まで
・管理費等の滞納では、5年で時効
このように問題を先延ばしすることで、管理組合にとって、取り返しのつかないことにもつながります。