【建て替え成功は200棟だけ】
アベノミクスで不動産市場は、都市部を中心に活況を呈している。だが、その一方で中古住宅の『空き家問題』は年々、深刻度合いを増している。
老朽化した一戸建ての空き家なら、まだ所有者の責任によって建て替えなどの決断もしやすいだろうが、問題は多くの住民が『区分所有』し、大規模修繕や建て替えに莫大な費用がかかるマンションだろう。
これまでマンションの建て替えが成功した事例は約200棟。多いと思われるかもしれないが、今全国にマンションは600万戸近くが存在するといわれており、1棟50戸平均とすると12万棟。そのうちの僅か200棟だけしか建て替えられていない。
建て替えられない理由の大半は、やはり住民の費用負担だという。
マンション1戸あたりの建設費は、資材費の高騰などもあり約2,300万円に達している。極端に言えば、住民の1戸でも2,300万円を出せなければ建て替え話は、10年以上も延びてしまうという。
周囲に容積が余っているマンションは、建て替え戸数を増やすなどして建設費を捻出することは可能だが、空いたスペースを見つける方が難しい都市部ではそれもままならない。
マンションによっては、住民が負担する管理費や修繕積立金の滞納額が大きく、管理業者が建て替えを嫌がっているところもあるとのこと。マンションは共存体なので、きっちり管理していないと機能しない。それができなければ、老朽化しても建て替えられず、『資産価値がほとんどなくなって空き家が増えていく』という最悪の状況に陥りかねない。
しかし、コスト負担ばかりを住民に押し付け、いい加減な管理体制でマンションの将来図を描けない管理業者も責任は重いだろう。
大手デベロッパーも『空き家問題』には危機感を抱いていると思う。でも、彼らは彼らでマンション用地の仕入部隊や販売部隊を持ち、遊ばせておくわけにはいかない。とにかく自転車操業でマンションを建てて、苦戦してでも売るという作業を繰り返している。
日本のマンションの歴史は、200年以上も区分所有の文化が根付くフランスとは違い、初めてマンションブームが起きた1960年代から50余年しか経っていない。だから、50年後、100年後にどうしたらいいのかのノウハウも持っていないし、法律もまだまだ整備されていない。
あちこちに空き家が増えすぎて『幽霊マンション』が乱立すると、その地域を含め 『スラム化』になることに危惧する。