行政、押し掛け支援
朽ちかけたマンションに手を差し伸べたのは、行政だった。
京都市北区にある築40年超の4階建てマンション。ひびが目立つ踊り場の床は抜け落ちそうで、住民も「スラムのよう」と目を背けてきた。それが2年前、初の大規模修繕工事にこぎつけた。「これで友達を呼べる」。住民に笑顔が戻った。
市は2005年度、築30年以上のマンション95件の管理や劣化状況を調査した。現地を訪ね、聞き取りや目視確認も行った。北区のマンションも「要支援」と判定された物件の一つだった。
市から要支援物件の経過観察を請け負っているNPO法人「マンションサポートネット」(同市)の堀井文子副理事長らが、北区のマンションを初めて訪れたのは約10年前だった。外壁は剥がれ、インターホンにも反応がない。数日通い、ようやく住民の一人と話せた。何度も訪ねるうちに、立て直しを望む住民の声が高まってきた。堀井さんが「まず管理組合を作りましょう」と呼びかけ、支援が始まった。
富士通総研経済研究所の米山秀隆主席研究員は「景観の価値を落とす建物があると困る京都市では、マンションの管理不全を防ぐ取り組みは地域も受け入れやすかったのでは」と分析する。
市の担当者は「個人宅は難しくても、町内会の活動にはどの自治体も支援する。マンションも共用部をうまく管理するための支援だと捉えている」と話す。しかし、同様な取り組みは広がっていない。市の取り組みを視察した名古屋市の担当者は「先進的だと感じたが、予算や私有財産に対する考え方から、同様の支援をするには課題が多い」と話す。
京都市の調査も簡単ではない。サポートネット理事の谷恒夫さん(54)は「住民を意のままに操りたい質の悪い管理会社や暴力団が絡むマンションには、調査さえ入れない」と話す。
管理士会の多田さんは今春、支援したマンションを1年ぶりに訪れた。住民からは「今は問題がないので、理事会は開いていない」と聞き、支援の難しさを感じたという。管理不全を防ぐには住民の意識向上が欠かせない。
先進自治体の取り組みは
♦現地調査で老朽化したマンションの管理実態を把握する
♦私有財産支援への懸念には「まちづくり支援と同じ」と考える
♦必要性を説明しやすい物件から、段階的に支援対象を広げていく
岡管連から
・役員が1年で交代するため、一つ問題をのどぼと過ぎれば次の役員は、意識が薄れて関心も薄れる傾向に
ある。
・行政は『民民の問題』にかかわらないところがある。
・マンションで生活するということはいずれ『マンションの二つの老い』という問題が現れる。
・特に、住民が長くマンションで生活すれば、『医療・健康・福祉の面』で、行政がかかわらざるを得ない
状況が現れてくる。
・マンション内に目を向ければ、このような状況に置かれているにもかかわらず、住民は『無関心・コミュ
ニティのなさ』がうかがえる。