「雇われ理事長」活用
「各戸の玄関扉が古いので交換してみてはどうです。国の補助金が出ますよ」。福岡市中央区の広陵に建つ小規模マンション。2月にあった管理組合の理事会で、安部靖弘理事長(70)が提案した。だが阿部さんは住人ではない。住民の要望で派遣された「雇われ理事長」だ。
住民間のルールを決め、積立金を集めて共同生活を維持する管理組合。しかし、高齢化で役員のなり手不足が著しい。マンションの老朽化で修繕の必要性が増す中、手法巡って住民が対立し、組合が機能不全に陥る事例が目立ち始めた。専門家は「住民と建物の『二つの老い』が管理不全マンションの急増を招く」と警告する。
阿部さんが所属するNPO法人「福岡マンション管理組合連合会(福管連)」はこうした(外部専門家の活用)国の取り組みを先取りし、独自に専門家を派遣してきた。34のマンション管理組合に役員を出している。
福管連が派遣する理事長は金銭や通帳・印鑑を管理しない。総会の白紙委任状は住民の副理事長が行使する。福管連の月例報告会で管理内容のチェックも受ける。福管連の畑島義昭理事長は「提案するが、リーダーシップは取らない」と強調する。
福管連の役員派遣を終えたのは4割弱。自ら管理することから遠ざかったままのマンションも多いようだ。そんな中、福岡市南区にある地区40年超の大規模マンション(約100戸)は、2年で派遣を終えた。「雇われ理事長」のそばで管理のノウハウを学んだ元副理事長の女性は、こうアドバイスする。「派遣期間は区切った方がいい。マンションという財産は自分たちで守るという意識を忘れないことが大切。何かあれば、また相談すればいい」。
外部の専門家を管理組合の運営に生かすには
♦住民自ら管理するのが本来の形だという意識を忘れない
♦派遣期間中に運営方法を学び、なり手の養成も進める
♦派遣期間中にはめどを設け、以後はその都度相談する