利益相反取引の防止
1 問題点
特別の利害関係を有する理事は、理事会の決議に加わることができるでしょうか。
2 参考判例(東京地判平成22年3月4日:ウェストロー・ジャパン)
① 事案の概要
理事Yが利害関係者であるにもかかわらず理事会決議に参加したことから、区分所有法51条違反
によって決議無効になるかが争われました。
② 判決内容
区分所有法51条は、理事会における理事の議決権行使を制限する規定ではなく、他に利害関係を
有する理事が議決に加わった理事会決議の効力を否定する法律上の根拠は存在しないとして、本理事会
決議を有効としました。
3 管理組合の対応
役員は、マンションの資産価値の保全に努めなければならず、管理組合の利益を犠牲にして自己または
第三者の利益を図ることがあってはなりません。
とりわけ、外部の専門家の役員就任を可能とする選択肢を設けたこと(改正標準規約35条)に伴い、
このような恐れのある取引に対する規制の必要性が高くなっています。
そこで、改正標準規約37条の2は、役員が利益相反取引(直接取引または間接取引)を行おうとする
場合には、理事会で当該取引につき重要な事実を開示し、承認を受けなければならないと定めました
(同37条の2関係コメント)。
同様の趣旨から、理事会の決議に特別の利害関係を有する理事は、その議決に加わることができない旨を
規定すると共に(改正標準規約53条3項)、管理組合と理事長の利益が相反する事項については、監事
または理事長以外の理事が管理組合を代表する旨を規定しました(改正標準規約38条6項)。
これまでは、上記参考判例のように、利害関係を有する理事が理事会決議に参加することについては必ず
しも否定されませんでしたが、改正標準規約と同様の規定を置く管理組合においては、否定されることにな
りますのでご注意ください。
(著)湯川・佐原法律事務所 弁護士 佐原 專二