2 役員に関する改定
(3)利益相反取引の防止
外部専門家を役員とすることが可能とされたことに伴い、管理組合の利益を犠牲にして自己や第三者の
利益を図るような恐れのある取引に対する規制の必要性が高くなったことから、今回の改正では役員の利
益相反行為の防止に係る規定が設けられました。具体的には次のとおりです。
① 理事会の決議
役員が自己または第三者のために管理組合と取引をしようとするときや、管理組合が役員以外の者と
の間で管理組合と当該役員との利益が相反する取引をしようとするときは、理事会において当該取引に
つき重要な事実を開示し、理事会の承認を受けなければならないとされました。また、その決議には、
特別の利害関係を有する理事は加わることができません。
② 理事長が利益相反行為に該当する場合の理事長権限
理事長は管理組合を代表しますが、理事長と管理組合との間の利害が相反する事項に関しては、理事
長の代表権は制限され、監事または理事長以外の理事が管理組合を代表することとなります。
(4)監事の権限の明確化
これまでも監事は、管理組合の業務の執行や財産の状況を監査し、その結果を総会に報告すべき義務を
負うものとされていました。しかし、その具体的内容や、監査の実効性を担保する調査権限等については
何も定めがありませんでした。そこで、今回の改正では、次のような規定を設けて監事の職務権限の明確
化等を図っています。
① 監事の職務内容
監事の業務には「理事が総会に提出しようとする議案を調査」することが含まれ、かつ「その調査の
結果、法令又は規約に反し、又は著しく不当な事項があると認められるとき」にはその事項も総会の報
告事項であるとする考え方が示されました。
② 監事の調査権限
監事の報告請求権、調査権として、いつでも理事や管理組合の職員に対して業務の報告を求め、ある
いは業務や財産の状況を調査することができる旨が明記されました。
③ 理事会への出席および報告義務、理事会の招集請求等
これまで監事は、理事会への出席は任意とされていましたが、監事の監督機能の強化のため、監事は
「理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない」とされました。
そして、理事が不正の行為をしたりその恐れがあると認めるときや、法令、規約、使用細則等、総会
・理事会の決議に違反する事実や著しく不当な事実があると認めるときは、「遅滞なく、その旨を理事
会に報告しなければならない」とされました。
さらに、理事会の招集請求権とともに、請求のあった日から5日以内に理事長が理事会の招集通知を
発しないときの監事自らの理事会招集権も規定されたところです。
(著)佐藤貴美法律事務所 弁護士 佐藤 貴美