(抜粋より)
法学部生は普段、民法は勉強していますが、残念ながら、区分所有法にはあまりなじみがありません、。
民法の世界では、所有権は絶対的な性質を有しており、所有者の意思に反してその所有権が奪われることはないのが原則だと学びます。
したがって、同じ「所有」という言葉を使っているとはいえ、「区分所有者の権利が多数決によって奪われることがある」という区分所有法のルールは、法学部生にとって新鮮に感じられるようです。
だからこそ、ゼミ生たちも、《民法にはこんなルールはないのに、区分所有法にはなぜあるのか》《民法の世界と区分所有法の世界はどこが違っているのか》などを考えたのでしょう。
民法のゼミなのにあえて区分所有法の判決を取り上げる「ねらい」も、まさにこの点にあります。
民法の世界だけに閉じこもっていたのでは、民法のルールの特徴に気づきにくい。
区分所有法の独特の世界に触れて、ちょっと違う角度から民法の世界を眺めると、民法のルールの特徴が良く分かるようになる、というわけです。
今回は、ゼミ生たち区分所有法の世界から何を学ぶことになるのか、見守ることにしましょう。
(著)早稲田大学大学院法務研究科 教授 秋山 靖浩
(岡管連から)
マンションの場合、建物全体(共用部分)に関する意思決定は多数決という民主主義制度(共有持分割合による権利)の部分と、本来の絶対的所有権(区分所有権)が及ぶ専有部分(区切られた空間)があるというのが、マンションの置かれた状況である。
そのような状況の中で、マンションは複数の区分所有者が集まった建物であり、その建物を生活の場として使用するため、そこには当然、ルールと建物全体の維持管理が必要になってくる。
ところが、多くの区分所有者は、絶対的所有権(専有部分)には関心を示すが、自分の専有部分の一部でもある玄関を一歩出ると、建物全体(共用部分)にはあまり関心を示さないのが、マンション管理の実態ではなかろうか。
今後のマンションを展望すれば、5年から10年後には『マンションの二つの老い』が大きな課題としてクローズアップされてくると思われる。
なぜなら、『団塊の世代が後期高齢者』となり、それがマンションにも大きく影を落とすからである。