マンションの民主主義(3)/朝日新聞朝刊15・12・10 - NPO法人岡山県マンション管理組合連合会

マンションの民主主義(3)/朝日新聞朝刊15・12・10

【「私たち」自覚を】

 背景にある問題は、日本における「私権の強さ」です。

 公益のために少しでも権利が侵害される事態になれば「お金を出して購入したのに」と激怒する一方で、大規模修繕や防災訓練への参加などコミュニティーを維持する「義務」には関心を示さない。

 そこには、社会に受け継がれてきた謙虚や助け合いの精神はありません。

 残念ながら、マンションを舞台に民主主義の負の側面が一部で顕在化しつつあります。

 乗り越えるためには、住民が『私』さえよければいい」という意識を改め、「『私たち』がよくなるにはどうすればいいのか」と自覚してもらう道筋を作ることが欠かせません。

 つまり、マンションは日本社会の縮図でもあるのです。

                                 不動産コンサルタント 牧野 知弘

(岡管連から)

 -マンションは社会の縮図―

 この3回シリーズの結論は、『マンションは社会の縮図そのもの』ということです。

 マンションそのものを構成している建物、設備、敷地などは区分所有者の共有物であり、その維持管理等は、区分所有者全員による意思決定であり、それは民主主義(デモクラシー)そのものです。

 ところが、その意思決定において多くは委任状によるものであり、ある管理組合では、役員プラスアルファだけしか総会に出席しなかったと。

 また、マンションに経年とともに忍び寄ってくる『二つの老い』という問題で、マンションが社会にとって『負の産物』になることを、だれも止めようとしない現実がある。

 つまり、区分所有者の高齢化等により、管理組合自身がマンションの維持管理や生活面のルールなどについて何も決められないことにある。

 その結果、何が起こるかというと、建物の劣化の進行、設備の老朽化・陳腐化、人間関係の希薄化などに対応できないという・・・・・

 これらは、今社会で取り上げられている『空き家問題』にも似ていて、このようなマンションを誰も引き受けようとしない、あるいはこの現実を察して意識の高い人は安く手放してでもマンションから脱出していくように。

 マンションを『終の棲家』としての意識が増している中で、築30年以上経過したマンションに残った人で管理組合の運営ができるだろうか、区分所有者の高齢化で本人自身が施設に入り所在が不明で『賃貸化・空室化』(人間関係の希薄化の助長化)し、あるいは死亡により相続人が分からない(個人の相続財産)など、総会の手続きができない、管理費等の請求ができない、役員のなり手がいないなど。

 つまり、『デモクラシー』を実践できないマンションは、『マンションのスラム化』を促進することに繋がっていく。

【一戸建ての住宅とマンションとの違い】

マンション一室は個々の住宅財産であるが

建物全体は個々の住宅財産の集合体である

2016年1月13日 | カテゴリー 管理基礎講座