東京地裁の判断
(1)Y社は、A管理組合との間で遠隔管理業務契約を締結し、警報信号を受信した場合には、警備業法で
設定された時間(東京都区内では25分)内にパトロール員を派遣し、必要と認める措置を執ることを
約し、Aマンションの入居者に対しては、このような24時間の監視により異常事態に備えていると
説明して安心感を与えていたのであるから、Aマンション入居者との関係でも、緊急出動義務を負って
いたというべきで、故意・過失により義務に違反して入居者に損害を発生させた場合には、不法行為
責任を負う。
(2)ところが、Y社の履行補助者である警備会社の警備員は、上記契約に違反して1時間5分後にようやく
Aマンションに到着した。当日は豪雨で、他のマンションからも警報信号が出ていたとはいえ、過去6年
間には、もっとひどい豪雨のときもあった。それでも6年間水没が生じなかったのは、Y社が土嚢を積む
等の対応をしていたからであった。本件の豪雨に際しても、もっと早く現場に到着し、土嚢を積む等の
対策をしていれば、事故は防げたと考えられる。しかも、Y社が管理している他の350棟のマンション
ではここ10年間冠水事故が発生していないのだから、唯一平成16年に冠水被害のあったAマンション
を優先して対応すべきであった。なすべき対応をしなかったY社にはXに対する不法行為責任が認めら
れる。
(3)遠遠隔管理業務契約上の免責規定では、不可抗力の場合にY社は賠償責任を免れると定められている
が、本件は不可抗力によって発生したものではない。また駐車場賃貸借契約や管理委託契約における
免責規定は本件とは無関係である。したがってY社は免責されない。
(4)もっとも、Xも、以前に冠水事故に遭い、警備会社の到着が遅れることもあると経験済みだったのだ
から、大雨の恐れがあるという天気予報を受けて、出勤前に自動車を移動させる等の対策をとるべきで
あった。したがって、1割の過失相殺をすることが相当である。
(著)近江法律事務所 弁護士 鳥居 玲子
岡管連から
駅前等都市中心部のマンションでは当該敷地が十分に取れないため、機械式駐車場が増加傾向にあるが、機械式駐車場の場合、 次の七つのリスクを指摘しておきたい。
一 維持管理に相当な費用が掛かる。
二 駐車場収入は管理費に組入れるところが多い。
三 大がかりな改修をする場合、修繕積立金から支出。
四 子供の事故が発生している。
五 住民が高齢化してくると車に乗れなくなる。
六 地下ピットの場合、大雨で水没の可能性がある。
七 耐用年数は15年~20年程度。