事案の概要
東京都内に所在するAマンションでは、地下ピットに自動車を収納するタイプの機械式駐車場が設置されていた。
Aマンションの区分所有者であるXは、Aマンション管理組合との間で駐車場の地下ピットの賃貸借契約を締結し、使用していた。
この賃貸借契約には「天変地異その他の事由により滅失・毀損等の損害を生じても、管理組合は借主に損害賠償その他の責任を負わない」旨の規定があり、駐車場使用細則にも同様の定めがあった。
管理会社Yは、A管理組合との間で管理委託契約を締結し、マンション管理業務を行っていた。
管理委託契約における管理対象部分には駐車場も含まれていたが、台風や集中豪雨の災害による損害については、Y社は賠償責任を負わないという免責規定が置かれたいた。
平成22年9月に、大型台風が上陸し、Aマンションの駐車場地下ピットが浸水した。
「駐車場排水槽満水」の警報信号がY社の委託した警備会社に通報されたが、警備員がAマンションに到着したのは1時間5分後で、既に水が地面から10センチの高さにまで到達しており、地下ピットの車は完全に水没していた。
Xはやむなく車を廃車にした(Y社とA管理組合との間で遠隔管理業務契約を結んでおり、警報信号がY社の指定する警備会社に通報された場合、受信後直ちにYまたは警備会社のパトロール員がマンションに臨場して応急処置を行うことが定められている)。
このため、Xは、Y社を被告として、水没した車の時価相当額の賠償を求める裁判を起こした。
(著)近江法律事務所 弁護士 鳥居 玲子