外壁工事の欠陥に関する最近の考え方
東京地判平成29年3月31日の判断は、外壁などに取り付けられた石材の落下に関するものですが、一般により多く見られる事故は、タイルの落下です。
タイルの落下事故は報道される案件だけでもかなりの件数に上りますし、人身事故に至ってしまったケースも珍しくありません。
多くの事故発生に伴って、訴訟に持ち込まれ、争われることも多くなってきました。
このような状況の中で、タイルの落下事故の責任に関する論文が公表されています(高嶋卓判事「外壁タイルの剥離と施工者の責任」判例タイムズ1438号49ページ。以下「高嶋論文」)。
高嶋論文は、裁判官によって著された文献であり、外壁タイルの工法や仕組み、外壁タイルの浮き・剥離の原因を検討した上で、施工技術の変化などの社会情勢を踏まえ、最判平成19年7月6日(注)の分析などを行っています。
外壁のタイルや石材などが落下することのないように保持することは、建物の安全性における基本的な要因です。
建築基準法上の定期検査においても、施工後または外壁の全面改修をしてから10年を経過したときに、全面打診の実施義務が課されるなどとされています。
外壁の安全性確保は、マンション管理における要諦の一つです。
管理組合において、十全の配慮をしなければなりません。
(注)最高裁判所平成19年7月6日判例から
「建物の建築に携わる設計者、施工者及び工事監理者(設計者等)は、契約関係にない居住者等に対する関係
でも、当該建物に建物 としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負ってお
り、・・・・以下略」