5 相手との解決に向けた管理組合の合意形成
これで一件落着とはいかないのが、構成員が多数で多様な意見を持つ管理組合の特徴です(ちなみに、
役員の方は、自身に責任があるためか、解決に向けて相手方に必要以上の譲歩をする傾向にあります)。
すなわち、相手方と紛争解決のための合意をする前提として、総会決議が必要ですが、この種の事案で、
いきなり総会に諮っても、各区分所有者に議案の持つ意味を正確に理解してもらうことは期待できない
ので、総会に先行して区分所有者を対象とした説明会を開催します。
説明会では、まず、調査報告書を作成した建築士に調査結果の説明をしてもらい、次に、ゼネコンから
の謝罪(区分所有者に溜まった不満のガス抜きという意味合いが大きい。)と今後の対応の説明をしても
らいます。その後、ゼネコン担当者には退出してもらい、私が法律的な説明をしますが、その際、区分所
有者から「売買代金全額での買取りを要求する。」「1人当たり慰謝料として最低500万円は欲しい。」
などといった、過剰な要求が出されます。これを捌いていくのが私の大きな仕事で、相手方との合意が成
立しなければ、裁判をするしかないが、その場合には、買取りや高額な慰謝料などは認められることはな
く、かえって裁判を起こすのに費用がかかってデメリットが大きいことを説明し、納得してもらうのです。
(著)弁護士法人札幌・石川法律事務所 弁護士 石川 和弘