承諾に代わる判決請求事件:東京地判平成27年3月26日
本件は、昭和51年に築造され、築後30年以上を経過した本件マンションのマンション管理組合(原告)が、その区分所有者である被告に対して、管理規約に基づき、老朽化した共用部分の排水管等の更新工事および人体に危険性の高いアスベストの除去工事にために、必要な範囲で、被告の専有部分に立ち入り使用する権限を有することの確認、並びに同工事の妨害禁止、違約金としての弁護士費用18万7,500円等を請求したところ、原告の請求が全部認容されました。
コメント
本件での被告の主張は、本件各工事は、共用部分の工事のためとはいえ天井の一部を取り壊し撤去することを内容とするもので、専有部分の所有権に関わるものであり、その所有者の承諾を必要とすると争いましたが、既に本件マンションでの排水管の漏水事故が生じている点や、各住戸キッチン天井裏の石膏ボードに吹き付けられた人体被害が生じるアスベストの除去工事は、共用部分の保守・修繕のために必要な工事であり、被告の立入り拒否に対して、原告が被告所有の専有部分に立ち入るための被告の承諾に代わる判決が認められましたので、立入拒絶妨害行為については、必要な範囲内で強制立入しても違法ではないことになります。
また、弁護士費用については実費相当額が認められ、同請求にのみ仮執行宣言が付されていますので、強制執行が可能です。
(著)創価大学法科大学院教授・弁護士 花房 博文
(岡管連から)
マンションに住むということを理解していないと、このようなトラブルを起こすことになります。
つまり、マンションは共同住宅、共同所有・共同管理が原則であるため、区分所有権は、一定の制限を課されています。
マンションは、一戸建てとは違うという認識を持つ必要があります。
マンション所有者に権利・義務及び負担があることを、マンション契約前に知らされていないのが、実態です。