―会計担当理事の管理費着服行為に対する管理者の責任―
本件裁判の主要な争点
①B(会計担当理事)の着服横領額等
②Bの着服横領についての被告らの善管注意義務違反の有無
③弁済充当と消滅時効の成否
④被告等を減免すべき事由の存否
以下、誌面の都合上④の裁判所の判断を要約解説してみることにします。
被告らの責任を減免すべき事由の存否
本件では、被告らは長年に亘り、自主管理の役員として務めてきましたので、不法行為者の責任を負うにしても減免考慮すべき事由がないかが、検討されています。
①自主管理によることから多様な業務に関わらざるを得ない本件自治会(管理組合)の役員業務を、Y1(理事長)及びY2(会計監査役員)は、別に仕事に就きながら夜間や休日に時間の都合を付けて、分担してきている、
②出席しやすい日曜日夕方に開催されている総会にもかかわらず、役員以外の本人の出席が著しく少ない状況が改善されず、大多数の自治会員(組合員)は本件自治会(管理組合)の管理運営について役員に任せるままであったと考えられる、
③Bは、偽造した本件預金口座の残高証明書をY2に提示し、また、Y1に対しても会計について説明しており、同被告らは一定のチェックはしていたものであることの事情が存在する点を考慮して、
「理事長を含めた役員の選任・監督については各自治会員(各組合員)の会計を含めた本件自治会(管理組合)の管理運営への関心が高くなく、役員に任せるままであったことも、Bによる横領行為が継続して行われた原因の一つであると言わざるを得ない」と言及し、
「以上の諸事情によると、Bの横領行為による損害を理事長であったY1及び会計監査役員であったY2にのみに負担させることはできないというべきであって、損害の衡平な分担の見地から、過失相殺の法理を類推し、Y1及びY2の責任を9割減ずるのが相当である。
そうすると、消滅時効に係る部分を除いたY1及びY2が負う損害賠償額(9割を減じた額)は、元本の額464万円余り、平成21年5月8日時点の確定遅延損害金21万円余り(減ずる9割につき円未満切捨て)となる。」と判示しました。
(著)創価大学法科大学院教授・弁護士 花房 博文
(注)下線は、こちら側で記載。
岡管連から
管理費等の着服行為は、たびたび繰り返されてきています。このような着服、横領は、管理組合運営が自主管理方式に限らず、委託管理方式でも毎年のように起こっています。
今回の事案は、ここでは掲載していませんでしたが、このような事案に至ったのは、「理事長:約12年」、「副理事長:約13年」、「会計監査役員:約12年」という長期間にわたる役員が就任していた事実、及び他の組合員が無関心であり、長期継続役員に任せっぱなしであったこと、また長期継続役員間でマンネリ化したことにあったと思われます。