管理者の善管注意義務責任について(1)/マン管通信2016・4より抜粋 - NPO法人岡山県マンション管理組合連合会

管理者の善管注意義務責任について(1)/マン管通信2016・4より抜粋

―会計担当理事の管理費着服行為に対する管理者の賠償責任―

事案の概要

・原告X:Aマンション管理組合法人 ・被告Y1:Aの理事長

・被告Y2:Aの会計監査役員    ・被告Y3:Aの副理事長

 横領の当事者である本件訴外B(会計担当理事)は、Aの預金口座から計1億1,528万円余りを着服し、横領し、他方、計7,792万円余りを一部返還していたことが認められます。

 Bの、このような長期、高額な着服行為が可能であった背景には、Bが印鑑と通帳の双方を所持し、会計業務の一切に加えて、出入金管理も一人で行っていたことや、Y2による会計監査の際には、虚偽の収支報告書とB自身で偽装した残高証明書を見せるだけで済んだ点等が挙げられます。

 Bは、犯行発覚後の平成21年に逮捕され、懲役3年の実刑判決を受けて、刑期を終え出所したので、Xは、Bに対して不法行為に基づく損害賠償を訴えたところ、東京地裁は、平成23年9月7日に、領得残元本額5.489万円余り及び平成21年5月8日時点の確定遅延損害金264万円余り並びに同領得残元本額に対する同月9日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を命ずる判決を下しました。

 しかしながら、Bには資産も返済能力もなかったため、Xは、Y1~3に対しても、各役員の職務執行上の善管注意義務違反を理由にその支払いを求めて、平成25年3月14日に民事調停を申し立てましたが、不調に終わったため、本件が調停されました。

                         (著)創価大学法科大学院教授・弁護士 花房 博文

2016年6月19日 | カテゴリー 法律のひろば