傾いたマンション、応急対策を横浜市が施工業者指導へ
住友不動産が2003年(平成15年)に販売した横浜市西区の11階建てマンションで、建物を支える杭が規定に反して強固な地盤に到達しておらず、建物が傾いていることが分かった。
同社は『安全だと言い切れない』と判断し、住民に仮住居への転居を要請。補強や建て替えの検討を始めた。
問題になっているのは、6棟約260戸のマンションで、熊谷組が施工し、住友不動産が販売した。
住民で作る管理組合によると、販売して以降、複数回、6棟のうち2棟をつなぐ渡り廊下の『ずれ』があるとの指摘をしていたが、住友側が当社は『問題ない』としたため、住民側が1級建築士に依頼。古い地形を調べて設計図と照合したところ、杭が旧地形の地表(『支持層』)に届いていない可能性が浮かんだ。
この棟では、通路の手すりがずれるトラブルが多発。熊谷組は『東日本大震災が原因』としていたが、管理組合からの要請を受けた住友不動産がボーリング調査を実施。4月になって、約60戸が入る1棟の杭の長さが不足し、強固な地盤部分まで到達していない可能性が高いと判明した。
体感はできないが、この棟が部分的に沈下したり傾いたりしているという。
住友不動産は『売主の責任は痛感している。修繕や建て替え、買い取りなどあらゆる手段を検討する」と説明。熊谷組は『コメントできない』としている。
【法的問題点等の検証】
1 建築基準法施行令
マンションなど一定以上の規模の建築物を『杭』で支える場合、先端は『支持層』と呼ばれる強固な地盤まで打ち込んで固定するよう定めている。杭の長さが不足すると重みを支えられず、建物が傾いたり沈下したりする可能性があるほか、『地震に対する安全性が低下する恐れがある』という。
2 住宅の品質確保の促進等に関する法律
売主であるマンションの販売会社は、建物の基礎部分等の主要構造部については、建物引渡後、10年間の瑕疵担保責任を負う。
3 区分所有法
・建て替え決議(臨時総会等の開催)
・区分所有者等の5分の4以上の特別決議
・団地型棟建て替え決議(特別規定)
4 マンション管理適正化法
・管理会社との管理委託契約の解除
・管理組合への支援が必要(建て替え円滑化法等)
5 ローン問題
・新築入居であっても、築11年では大部分の区分所有者に、ローン残高の存在
6 生活の変化
・建物の建て替えに伴い住居の引越しが生じ、通勤、学校等の変更
・それに伴い、金銭及び金銭以外(手続等)の負担
7 ライフプランの変更
・既存マンションの買い取りの場合、オーバーローンに陥りやすい
・建て替え後のマンションを再取得する場合、再度ローン設定を行うことになる
・その場合、マンション再取得時の区分所有者の年齢は、旧マンション取得時の年齢よりも
13年から15年経過
8 責任の所在
・売主である販売会社
・工事を請け負った施工会社
・設計監理を請け負った設計事務所
9 管理組合の対応
・損害賠償請求
10 区分所有者の意思疎通
・管理組合の組合員(区分所有者)は、不特定多数の集まり
・その組合員が建て替えにより、建物から離散した場合の組合員の意思確認
など