【転落事故から見えてくるもの】
ベランダからの転落事故は、なぜ繰り返し起こるのでしょうか。過去の転落事故例から、改めて高層マンションの危険性や転落防止対策を考えてみましょう。
(転落事故その1)
平成22年3月26日午後4時45分頃、東京都八王子市の14階建てマンションの14階バルコニーから3歳男児が転落。全身打撲で間もなく死亡が確認された。男児は両親との3人暮らしで、当時は母親は仕事で不在、父親は買い物に出ていた。一人で室内にいた男児がベランダに置かれた荷物に乗っているうちに誤って手すり(高さ1.2メートル)を超え、約42メートル下に転落した。
(転落事故その2)
平成22年4月20日午後3時55分頃、千葉県印西市の14階建てマンションの12階バルコニーから4歳男児が転落。搬送先の病院で死亡が確認された。男児はこの日風邪で幼稚園をお休みしたが、母親が近くのコンビニストアに5分ほど外出したすきに事故は起きた。バルコニーには居間にあった子ども用のイス(高さ約50センチ)がおかれていたという。身長1メートルの男児がイスにのり、誤って手すりを乗り越えたとみられている。
【二つの事故の共通事項は?】
以上の二つの事故の共通事項を抜き出してみると
1 3~4歳の幼児(男児)
2 夕方の時間帯
3 親が子どもを一人で家に残して外出中に起きた事故
4 14階建てマンションの高層部(12Fと14F)の
ベランダから落下
5 ベランダに置いた「もの」に乗って転落
6 死亡事故
(注)下線部はこちら側で記載。
これらの共通事項を見れば、転落事故を防止する対策が見えてきます。
・まずは子どもを一人にしないこと。
・決して目を離さないこと。
たった5分の留守中にこのような悲惨な事故が起きてしまうことを、保護者は肝に銘じなければなりませんね。
次回では、マンションの手すりの基準を見てみましょう。
井上 恵子著
マンション設計に携わった経験を数多く持つ1級建築士が、住まいの性能を解説。性能評価申請に関わったマンションは20棟以上。設計事務所設立後は子育ての経験を生かし保育園の設計なども行う。その他に戸建て・マンション購入セミナー講師、新聞へのコラム掲載など。
(岡管連から)
先日のお知らせ(8月27日付)でもお伝えしましたように、8月23日の大阪市天王寺区での、14階から4歳男児の転落死亡事故も、同じような共通事項の要因で、起きたものでした。
高層マンションは人気がありますが、反面そのリスクがあるということも、マンションの購入者は、認識しておくべきでしょう!