管理組合運営

働き方改革の影響

 いわゆる「働き方改革」の影響を理由に上げる会社もあった。労働時間の短縮で仕事量が変わらない中、労働時間を短縮するため人員増になるというものだ。改革に伴う「有給休暇所得制度のため、さらなる代行要員の配置で経費が増える」といった回答も寄せられている。働き方改革が与える影響は小さくなく、特に中小の管理会社では深刻な事態に陥りがちになっている。

今後のマンション管理組合の対応は

 昨今、区分所有者の高齢化や無関心、理事のなり手不足、管理不全・限界マンションなどの報道を目にすると、管理会社に、より負担がかかる現象が増えることが気がかりになります。

 アンケートの結果を見ると業務委託費値上げの要求は強くなってくると考えられます。

 管理の質を落とさず、快適なマンションライフを送るためには、適正な管理費の確保は必要です。時には管理費の値上げが必要になる事も想定されます。管理費等の引き上げには総会の決議が必要になりますが、実際には負担増を伴う提案は抵抗が多く理解を得るには苦労が多いと思います。管理会社から業務委託費の値上げ通告があった機会に管理費の値上げ提案をするのも一考と考えます。

 区分所有者は、自ら居住しているマンションの管理に無関心や他人事と考えずに、「終の棲家である自分の財産の管理」であることを認識すべきで、そのことを説得する努力が必要になるでしょう。

| 2020年7月07日 | カテゴリー 管理組合運営 

 マンション管理新聞が管理会社10万戸以上、1万戸以上10万戸未満、1万戸未満からそれぞれ10社計30社を抽出、管理委託状況のアンケートを実施した結果をまとめて発表した。(実施時期令和元年8~9月)

 調査項目は、管理委託費値上げの必要性、委託費の値上げの予定、委託費値上げの要因、契約辞退などの処置等。

9割が値上げ提案を実施と回答

 回答では30社全てが「管理委託費の値上げの必要性を感じている」と答え、うち9割が「値上げ提案を行っている」、7割以上に当たる22社が「契約辞退の措置を取ることがある」と回答した。

値上げの要因は人件費の上昇にほぼ集約

 自由回答の集計で、値上げの要因は「人件費の上昇」にほぼ集約できる。具体的回答で最も多かったのは「最低賃金の引き上げに伴う人件費の上昇」を30社中15社が回答した。

 最低賃金の上昇は「労働集約型産業」と呼ばれているマンション管理会社に大きな影を落としているのは否めない。

 また、単に「人件費の上昇・高騰」「管理員・清掃人の人件費高騰」を上げる会社もある。これらの回答理由には最低賃金の上昇に加え、人手不足解消策として時給単価を引き上げるケースが含まれると考えられる。「採用コストのアップ」「協力会社からの値上げ要請」等も同様の理由によるものであろう。

管理委託費の主な値上げ要因(30社自由回答)

①最低賃金引き上げに伴う人件費の上昇・・・・・・・・・15社(50%)

②人件費の上昇・高騰・・・・・・・・・・・・・・・・・10社(33.3%)

③協力会社からの値上げ要請・・・・・・・・・・・・・・・7社(23.3%)

④外注費の値上げ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4社(13.3%)

| 2020年7月05日 | カテゴリー 管理組合運営 

 全管連は分譲マンションにおける駐車場について、昨今、空き駐車場の増加による修繕積立金の減少や機械式駐車場の維持管理の適正化や負担増、また、区分所有者以外への貸し出しに伴う法人税の課税問題など、駐車場に関わる対応を目的に、「駐車場に関わる実態調査」を実施しました。

 中部管協が会員管理組合を対象に実施しました「実態調査」の結果を報告します。

【空き状況】

基本的に不足状態が続いている組合は67%。

空きが増えている組合は16%。

なお、分譲時から、共有施設として駐車場がないマンションが3組ある。

【空き駐車場の対策】

空き駐車場の対策については、8割の組合が無回答であり、特に対策を講じていない17%を含め、95%の組合が、具体的に対策は講じられていないのでは。

【駐車場の会計処理】

会計処理については、全額管理費会計に入れている組合が37%、全額修繕積立金会計に一旦は管理費会計に入れるが余剰分を修繕積立金会計に入れているを含め46%の組合が、修繕積立金の確保に努めている。

【機械式駐車場】

機械式駐車場については、回答された70組合の内、4組合と僅少。

廃止したと回答された組合も1組合ある。

| 2019年9月09日 | カテゴリー 管理組合運営 

監事の職務

(2)業務監査

 c 総会決議違反・理事会決議違反の有無

   総会や理事会で決議された事項に違反して、理事長が職務執行をしていないかどうかも確認しなければ

  なりません。

   例えば、大規模修繕工事を実施する業者を総会決議において決定したにも関わらず、理事長が独断で

  他の業者に工事を発注していないか、理事会において管理費等請求訴訟のために委任する弁護士及び

  弁護士費用を決定したが、理事長が独断でその内容と異なる委任をしていないか等が挙げられます。

   また、総会や理事会で決定した内容を理事長が執行しているかどうかも、確認する必要があります。

 d 理事による不正の行為・著しい不当な事実の有無

   不正の行為とは、直接には法令、規約、使用細則等、決議及び規約違反には当たらないが、社会的に

  不当な行為を指し、著しく不当な事実とは、それを決定し行うことが妥当でない場合を指すと解され

  ます。

   具体的にどのような場合がこれに当たるかは、事案ごとに社会通念に照らして監事が判断することに

  なりますが、理事の利益相反取引につき、理事会の承認決議を経たものの、工事代金が著しく高額で、

  理事会が利益相反取引を行う理事の利益を図ろうとしていると疑われるような場合は、これに含まれる

  ものと解されます。

(著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子 弁護士 佐藤 元

| 2019年5月17日 | カテゴリー 管理組合運営 

監事の職務

(2)業務監査

 a 法令違反の有無

   監事は、管理組合の業務が区分所有法等の法令に違反していないかを確認しなければなりません。

   区分所有法違反の有無の具体例としては、共用部分の管理に関する総会決議事項につき総会の

   多数決決議を経ているのか否か(法18条1項本文。例:大規模修繕工事の実施)、共用部分の形状

   または効用の著しい変更につき3/4の特別多数決決議を経ているか否か(法17条1項。例:機械式

   駐車場の撤去)、規約の変更につき3/4の特別多数決決議を経ているか、総会決議の議題は

   あらかじめ招集通知により通知されているか(法37条1項)、理事長は規約や総会議事録を保管して

   いるか(法33条1項本文、法42条5項)等が挙げられます。また、区分所有法以外の法令違反の

   有無の具体例としては、刑法違反等などが挙げられます(例:理事による管理組合の預貯金の横領行為

   は業務上横領罪に当たる(刑法253条違反)。)。

 b 規約、使用細則等違反の有無

   規約、使用細則等に違反しているかどうかも確認しなければなりません。例えば、役員の員数は規約で

   定めたとおりになっているか(標準管理規約35条1項)、役員及び役職の選任の手続きは規約に

   則っているか(同条2項、3項)、役員による利益相反取引の場合の手続きが履践されているか

   (同37条の2)、総会の招集手続きは規約に則っているか(同43条)、総会に先立って予算案、

   決算案、議案などを理事会で決議し確定しているか(同54条1項)、管理費等の滞納に対する法的

   措置を行うにあたって理事会決議を経たか(同60条4項)等が挙げられます。

(著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子 弁護士 佐藤 元

| 2019年5月15日 | カテゴリー 管理組合運営 

監事の職務

監事の職務は管理組合の業務状況を監査することであり、会計監査と業務監査により行います(標準管理規約41条1項)。

(1)会計監査

   監事は、会計監査の結果を総会に報告しなければなりません(標準管理規約41条1項)。

   そのため、通常総会に先立って、収支決算報告書類により会計監査を行い(標準管理規約59条)、

   監査報告書を作成します。

   会計監査においては、適正かつ効率的に予算及び業務が執行されているか、管理組合の財産の現状は

   どのようになっているのかの2点の確認をポイントに、帳票類を含む会計書類全般をチェックすること

   になります。

   例えば、収支報告書を確認する際には、繰越金の処理が規約に従ってなされているか、予算で計上

   された項目ごとに対応して、その執行額が記入されているか等を確認します。

   また、監事自らが通帳等の原本を定期的に確認し、預金口座からの不正な引出しがないことや、

   会計帳簿の原本との整合性を確認することも重要です。

(著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子 弁護士 佐藤 元

| 2019年5月13日 | カテゴリー 管理組合運営 

標準管理規約における監事の権限

① 調査権限

  監事は、いつでも、理事等に対して業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることが

  できる(標準管理規約41条2項)。

② 報告義務

  監事は、理事が不正の行為をし、もしくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、または法令、

  規約、使用細則等、総会の決議もしくは理事会の決議に違反する事実もしくは著しく不当な事実

  (不正行為、法令違反等)があると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない

  (標準管理規約41条5項)。

③ 理事会に関する監事の権限

  監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない

  (標準管理規約41条4項)。

  また、監事は、理事に不正行為、法令違反等があり、必要があると認めるときは、理事長に対し、

  理事会の招集を請求することができ(標準管理規約41条6)、一定期間内に招集されない場合は、

  自ら招集することができる(同条7項)。

④ 臨時総会招集件

  監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を

  招集することができる(標準管理規約41条3項)。

⓹ 理事長の利益相反取引に関する監事の代表権

  管理組合と理事長との利益が相反する事項については、理事長に代わり、監事又は理事長以外の

  理事が代表権を行使しなければならない(標準管理規約38条6項)。理事長自身や理事長が代表者を

  務める会社が管理組合と契約をする場合は、管理組合と理事長との利益が相反するので、監事又は

  理事長以外の理事が管理組合の代表者として当該契約を締結します。

(著)横浜マリン法律事務所 弁護士 石川 惠美子 弁護士 佐藤 元

| 2019年5月11日 | カテゴリー 管理組合運営 

資産価値を守る管理 安さと質は両立せず

管理会社からは、「住民の無関心も問題だ」という声も多い。実際、撤退した案件の中には、住民自身が原因となったものもある。中堅の応募が集まったマンションでは、特殊な空調設備を修理すべく、住不建物は管理組合に対して管理費の値上げを再三依頼していた。

ところが、当の管理組合は理事会が開けないほど自分たちの住むマンションに無関心。ついぞ空調設備は修理されなかった。

神奈川県内のあるマンションは、管理費の安い独立系へと管理会社を変更した。ところが管理の質が下がって住民の不満がたまった結果、管理費の高い業者へ再度変更する羽目になった。管理組合からリプリース(変更)に関する相談を受ける彩の国マンション管理センターの代表理事は、「管理費の安さが満足のいく結果を生むとは限らない」と指摘する。

人手不足は業界共通の問題だけに、現状は気を吐く中堅管理会社も勢いがいつまでも続く保証はない。管理会社による物件の選別が加速すれば、住民側も住まいの管理について無関心ではいられまい。

マンション管理業協会の理事長は、「住民にとって管理会社は、言われたことは何でもやる『サーバント(使用人)』だった。今後は、管理の質が物件価格に反映される制度設計が必要だ」と訴える。

限界に達した使用人は、主人に対していよいよ反論を翻した。「安くてよい管理」が限界に達する中、資産価値を維持すべく、管理会社も住民も多少の痛みは覚悟する必要がある。

| 2019年4月11日 | カテゴリー 管理組合運営 

時給を上げても管理人が集まらない

住不建物が今、住民からの批判を覚悟でマンション選別に踏み切った背景には、マンション管理業界が直面する深刻な人手不足問題がある。

問題は管理人や清掃員の数が追い付かないこと。数年前まで都内中心部で1000円以下だった管理人の時給は、今や1200~1300円まで上昇。それでも以前ほどは集まらない。

マンション管理業界が転機を迎えたのは、大手企業が相次いで定年を延長、再雇用を打ち出してからだ。管理人も清掃員も定年後の第2の仕事という側面があった。だが、こうした定年延長の結果、そもそも雇用市場に人材が流入しない。

管理会社も手をこまねいていたわけではない。定年延長や時短など、考えられる手は打ってきた。

ただ、こうした定年延長はあくまで対処療法に過ぎない。渦中にある住不建物の幹部は、「人材難は今後も好転しない。問題の根が深くならないうちに抜本的な対策を打たないと、いずれは日常の管理業務に大きな支障が出る」と断言する。そのための背策が戦線の整理というわけだ。

| 2019年4月09日 | カテゴリー 管理組合運営 

管理マンションの約1割から撤退へ

住不建物の管理するマンションのうち約1割を対象に管理組合へ解約の意向を伝え、粛々と撤退手続きを進めている。

撤退対象の多くは、地方や収支が赤字の管理物件だ。

都心のど真ん中にあるマンションで同社から解約を通告された物件もある。

住不建物は昨年、広がりすぎた戦線を縮小すると同時に、効率的に仕事を回していくために徹底した採算重視へと大きく舵を切ったのだ。

今回の方針転換で様相が変わった。

採算が合わなければもう受託しないというのだ。

まして管理委託業務で累積赤字が積み上がり、多少の値上げでは赤字を解消できない物件に関しては、容赦なく撤退する方針だ。

| 2019年4月07日 | カテゴリー 管理組合運営