平成27年のマンション関連判例を概観する(8)/マン管通信2016・7

総会決議無効確認請求事件:福岡地裁小倉支部平成28年1月18日

 本件は、区分所有者X(原告)が、本件マンション管理組合Y(被告)が、平成22年の総会で、修繕積立金の一部を取り崩して返金するために可決した「居住年数に応じて修繕費取り崩しの一部を特例として返金する」決議の有効性を争い、無効が確定した(福岡地裁小倉支判平成25年2月15日)後、Yが再び、平成26年の総会で、前記決議に基づき実施された返金を追認する決議を行ったため、同決議の無効確認を求めた事案です。

 争点は、専有部分の大小を同一に捉え、月額返金基準額を、昭和62年3月から平成22年4月の期間に居住した年数(相続承継のみ居住期間を加算できる)に乗じた配分基準の有効性と、無効な決議を追認する決議の法的意味に関するものでした。

コメント

 本判決では、同配分基準は、法30条3項に反して、区分所有者間の利害の衡平を著しく害し、居住期間の長い区分所有者に対して負担以上に配分・返金を受けさせる結果となる。

 また、平成26年決議は、無効な平成22年決議等を改めて追認したものに過ぎず、「取り崩し修繕積立金を居住査定期間に応じて配分・返金することは、区分所有者間の利害の公平を著しく害する不合理な結果をもたらす平成26年決議は、全体として無効であることに帰する。」として、本判決は、単に配分方法が公平でないとの判断ですが、配分・返金を目的とする決議全体を無効扱いされている点は重要です。

 私的自治の原則のもとで修繕積立金の安易な取り崩し・配分・返金は、当該マンションの、後の維持管理を大変危険な状態に至らしかねない問題ですので、権利能力なき社団たる管理組合が存続する限りは、予めその清算方法が規約等に定められる等の特段の事情のない限り、団体が総有的に保有する資産として取り扱われる(最判平成15年4月11日)性質のものですから団体財産の一部清算的処分として捉えるならば、その旨の規約変更においても、その趣旨が十分に配慮された合理性が求められる客観的事由が必要かと思われます。

                         (著)創価大学法科大学院教授・弁護士 花房 博文

(岡管連から)

 修繕積立金等の清算については、標準管理規約では、建物等が存在しなくなり、マンション管理組合自体の法的根拠を失った場合、清算手続きができるようになっています。

 上記以外の事由で、修繕積立金の一部を取り崩し、その取り崩し額を組合員には返金することはできない。

2016年8月29日 | カテゴリー 法律のひろば