昭和レトロ 60年で最先端/毎日新聞5・30

建て替え全住民合意/日本初民間分譲四谷コーポラス

 日本初の個人向け民間分譲マンションで、築60年を超える「四谷コーポラス」(東京都新宿区)が、建て替えることになった。老朽化と耐震性の不足が理由で、30日までに所有者全員の合意が得られた。住民からは惜しむ声もあるといい、建て替えを支援する業者は「色合いやデザインなどに、歴史的建物の名残をとどめたい」と話す。

 1956年10月に完成した四谷コーポラスは、鉄筋コンクリートの5階建て。全28戸の広さは約50~75平方メートルで、当時の大卒初任給20年分にあたる高級住宅であった。

 管理も先進的だった。マンションができたのは、管理組合の設置を定めた区分所有法の施工(63年)前だったが、当初から住民による管理組合が結成された。管理組合と所有者が結ぶ契約書では、管理費を毎月徴収することや、騒音で周囲に迷惑をかけることの禁止など、共同生活のルールが列挙された。建て替え計画を支援し、販売にも携わる旭化成不動産レジテンス(東京)によると、初期は管理人がクリーニングの取り次ぎや荷物の預かりもしていたという。担当者は「現在のコンジェルジュのような、時代を先取りしたサービスだった」と話す。

 建物は定期的に修繕されてきたが、近年は排水管の水漏れが目立ち、3年半前の耐震診断では「コンクリートの劣化が激しい」という結果が出た。補強にも多額の費用がかかるとわかり、建て替えへの賛同が広がった。建て替え後は6階建てになり、戸数も約50戸に増えるが、同じ広さの部屋に入りなおす場合、約2000万円の負担が必要になる。それでも大半が再入居を希望しているという。

 築50年超のマンションは全国に約4万戸あるが、10年後は約63万戸に急増する。管理組合の小林敏夫理事長(71)は「こまめな管理やメンテナンスが長持ちの理由かもしれない。住民同士が話し合いやすい環境も大切」とアドバイスする。旭化成の担当者は「法律もないマンション黎明期に、ルール作りに挑んだことを示す当時の管理規約など、貴重な資料は保存したい」と話す。

2017年6月25日 | カテゴリー 建替え